瀬能杏子と国本一樹の電話 僕の心の中の殺人 1.73話
杏子「国本君、私、瀬能です。こんばんは。」
国本「ええっと?瀬能さん?」
杏子「中学校の時、生徒会長を務めていました、瀬能杏子です。覚えていませんか?一度、同じクラスになった事もあったと思いますが。」
国本「あ!ああ。ああ、思い出した。あ、瀬能さん。瀬能さんね。」
杏子「突然、お電話、申し訳ありません。国本君の連絡先を知らなかったので、昔の連絡網から電話しています。」
国本「あ、それはいいんだけど。それで俺になんか用?・・・まぁ、瀬能さんから連絡をもらうような事は思いつかないんだけど。」
杏子「ええ。実は、先日、安田さんと話になりまして。」
国本「安田?・・・安田則子?」
杏子「そうです。安田さんです。ザーメン安田。」
国本「・・・はははは。あ、安田さん、言われてたね?そんなあだ名。」
杏子「それで安田さんと電話してまして、国本君の話になったんです。国本君、織部君のご命日に手を合わせに行っていると聞いたので、本当かな?と。」
国本「ああ。ああ、そうだけど。それが何で?」
杏子「いやぁ出来る事じゃないじゃないですか。驚いてしまって。友達想いなんだなって。」
国本「ま、友達だったからな。」
杏子「あの、私、誘われていませんけど?」
国本「え?」
杏子「ですから、私、一度も国本君から誘われていませんけど。私、この学年の生徒会長ですよ?何故、誘われたことがないのか疑問で疑問で。」
国本「いやいやいやいやいやいやいや。瀬能さん、巡と友達じゃないじゃん?」
杏子「安田さんは誘ったんですよね?」
国本「あ、ああああ。あああ。ほら、一応、巡、安田の事が好きだったから。ま、迷惑なのは承知の上だったんだけどさ、ま、ええ、そうだな。」
杏子「あの二人、付き合ってなかったんでしょ?」
国本「付き合うも何も何にもないよ、関係ないよ。巡が好きだったから。・・・え、安田、怒ってたの?」
杏子「怒ってはいませんでしたけど、ザーメン安田は誘われたのに何故、私は誘われていないのかと。」
国本「・・・行く?」
杏子「え?いいんですか?・・・はい、行きます。お線香、あげたいので。」
国本「あのさ、聞いていい?・・・瀬能さん、巡の事、好きだったの?そんな話、聞いた事なかったよ?」
杏子「好きでも何でもないです。誤解無きよう。織部君の事件の事は大変、胸を痛めています。・・・生徒会長として、同級生を悼みたいと思っているだけです。」
国本「ああ、随分、殊勝なんだね。瀬能さんは。」
杏子「当たり前じゃないですか。国本君が当時から誘ってくれていたら、こんな事にはなっていなかったんですよ?」
国本「・・・?おかしくない?」
杏子「おかしくないですよ?・・・お花はどういうのがいいとかありますか?」
国本「あ、そうだねぇ?一緒に行くか?」
杏子「織部君の自宅集合でいいんじゃないんですか?」
国本「いや、そうじゃなくてさ、あいつんち、引っ越しちゃってさ。・・・巡の親みてると、いたたまれなくてさぁ。」
杏子「・・・それは、どこのお宅でも一緒じゃないですか?お子さんを亡くされたら誰でも塞ぎこんでしまうと思いますよ?」
国本「うん。そうだよな。そうなんだよ。・・・花はあいつんちの近くで買った方がいいと思うから、駅で集合して、それから一緒に買おう。あと、かしこまった格好で来なくていいから。巡の親、そういうの嫌うから。」
杏子「・・・はぁ。わかりました。聞いておいて良かったです。では、駅で待ち合わせしましょう。」
国本「あ、瀬能さん、いくら服装は何でもよくても、ギャルみたいなカッコでは来るなよ?」
杏子「ああ、いきますよ?私、ギャルなんで。」
国本「うそつけ!」




