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04.邂逅

「わ、わかった。だからその……レベッカを離してやってくれ」

「?」

何を離すというんだ?


「あんだめ!」

「あっ」

俺は耳元で聞こえた艶のある声に、無意識に女騎士を抱えるようにしていたことに気付く。


そして手には柔らかな……


「ああん!だめだったら!」

また勝手に手が動いたようで、急いで手を放し距離をとる。


真っ赤な顔の女騎士にグッときた。

初めてのおっぱ……


モミモミ童貞を捨てた俺は、そのまま地べたに土下座した。


「い、いや。悪気はなかったのだと思っているが、意外と悪気があったのかな?」

「滅相もない!」

バッと顔を上げて返答する。無意識だったのだ。悲しい童貞の(さが)なのだ!


「なら、まあ。なあ?」

「そ、そうね。なんなら責任を取って私を貰ってくれる気はないか聞きたい気すらするわ……」

真っ赤な顔の女騎士を見て、俺はゆっくりと立ち上がり右手を出した。


「まずはお友達から」

その手はパシンと叩かれた。


そして自己紹介。


「俺は修行中の田舎者でクロダセイジ。クロダでもセイジでも呼んでくれ!」

明るく元気にはきはきと!俺は異世界デビューするために頑張った。


ついでに、「田舎者なのでこの世界の事は分らない」とも言っておいた。


そしてこの五人はAランク冒険者で『王都の疾風』というパーティだそうで、王都では結構有名らしい。


今回は意を決してこの最難関のダンジョンに挑み、1週間かけてこの階層迄降りてきたそうだが、かなり苦戦してもう帰還しようとしたところを6体のオーガに囲まれたそうだ。

すでに3体は倒し後少しというところで2人が魔力切れで危険を感じていたと。


途中でかかったバフについても気付いていたようだ。

俺の援護だったのだろうとまた感謝された。


あの赤髪で柔らかな体の持ち主は女騎士、ではなく戦士のレベッカ・ジュベール。さっきのは事故なので胸元を隠さないでほしい。

先ほど最初に話しかけてきたのがパーティのリーダーである戦士のローランド・フロマン。ごついおじさんだ。

黒髪美少女でエルフだという魔術師がカトリーヌ・コレット。

100才越えの合法r……いや何も言うまい……

清楚系金髪美女で神官のローザ・ドラノエ。丁寧な挨拶にこっちが照れてしまう。

黒髪で背が低い男の子はフェラン・ヴァレット。これでも成人しているのだそうだ。子ども扱いしたらめっちゃ切れてた。


「しかしクロダくんは強いな。俺達と比べ物にならんぐらい強い……実はSランクの冒険者だろう?」

「まさか。というより冒険者登録もしていないんだけどね」

また5人に驚かれた。


「おっと、言いたいことは山ほどあるが、長話もしていられない」

そう言って帰還の準備をする。


帰還は各階層の階段内で使えるマジックアイテムがあると言うので、余分にあるそれを分けてもらった。


素材と交換するか?と控えめに50階層ぐらいで狩ったハイグリフォン(闇)の羽を出すと、5人が絶叫していた。


「た、ただのグリフォンじゃねーじゃねーか!こんなのいったいどの階層で出たんだよ!」

そう聞かれたので素直に……


「50階層ぐらいから、かな?」

また5人の動きが止まった。


「50階層ってお前、ここは最下層が30階層ぐらいじゃないのか?」

「いや、最下層は77階層かな?」

今回は沈黙が長いな……


長い沈黙の後、ローランドさんが「お前はよく冗談を言ったりする奴なんだな」と言いながら苦笑いしていた。


本当は多少誤魔化した方が良いかもしれないが、どうしても自慢したい気持ちが出てきてしまう。

77階層は信じてはいないようだが、俺が強いことは十分に理解してくれているようだ。


帰還の際、5人はそれぞれが腰に付けている魔法のバッグのような物からマジックアイテムを出していたが、俺が空間から素材を出しているのを見て、また頭を押さえて唸っていた。


「空間魔法……」

魔術師のカトリーヌが口を開けたまま固まっている。


どうやら俺は強くなりすぎてしまったようだな。そう思っているのだが、やはり俺と同じ異世界人であり勇者でもある龍弥がどこまで強くなるかは未知数だ。その事を思うと油断はできない。

あいつは俺が生きていることを知れば絶対に絡んでこようとするはずだ。絶対に、100%確実に、何がおきても負けない自信を手に入れなければ、龍弥との接触は避けなければならない。


そう思いながら初めての地上へと転移した。


太陽が眩しいぜ!



◆◇◆◇◆



総合・王国専用掲示板★2978


2667: ただの御貴族様

あれから勇者どう?


2668: 城勤め文官

ヤバい。


2669: ただの名無し

詳しく!


2670: 城勤め文官

まったく訓練場こないらしいけど、一番最近見たのは3日前。

もういっぱしの剣士。

団長も全く歯が立たないレベルでドヤ顔はうざい。


あと侍女はもちろん姫も食われたとのうわさ。姫泣いてたって聞いた。


2671: ただの商人

まあ召喚した陛下の責任で。


2672: ただの名無し

不敬罪で逮捕!


2673: ただの名無し

ここって完全匿名だろ?


2674: ただの御貴族様

国家権力なめんな?


2675: ただの貴族婦人

実際わからんらしいよ?


2676: ただの名無し

神様の謎システムだし。


2677: ただの名無し

まあ根幹部分は元々はダンジョン産の謎システムだしな。

今は書き込み機も安くなりました。


2678: ただの御貴族様

俺、中古だけど金貨5枚でゲット!これで一流貴族の仲間入り。


2679: ただの商人

底辺乙。


2680: 城勤め文官

城の書き込み機使える俺勝組。


2681: ただの名無し

ブラック文官様ちーっす。


2682: 城勤め文官

そんなブラックじぇねーわ!ねーよね?


2683: ただの名無し

ブラック無糖は置いといて、ダンジョンって言えば疾風が牢獄に潜るって言って出発したってホント?


2684: ただの名無し

俺もそう聞いた。どうやら未知の領域を目指すってさ。


2685: ただの貴族婦人

今最高到達何階層なんですか?


2686: ただの名無し

8階層。

20階層は目指したいって言ってたらしい。


2687: ただの商人

まあ、無理でしょ?

Sランクの竜の翼が8階層でブラックアイとかに囲まれて逃げかえってきてメンタル崩壊して引退したって話だし


2688: ただの御貴族様

今のSランク、金獅子の咆哮ならもっと行けるんじゃね?


2689: ただの名無し

無理だろ?

あの人たち儲からないことやらないし。

伊達に金獅子名乗ってないな。

お金大好きそう。


2690: ただの名無し

そりゃ護衛任務だけで一生安泰。危険な冒険したがらないしな。


まあ良い帰還報告を待ってたらいいんじゃね?


2691: ただの御貴族様

そだねー



◆◇◆◇◆



俺は5人に連れられ初めての冒険者ギルドへ到着した。


ダンジョン自体は僻地に存在するのだが、目の前の転移門を通れば王都のギルドへと転送されるという。

少し緊張しながら一緒にくぐると無事同じ場所へ転移できた。一人だけだとあの城の中の転移門に飛ばされる危険性も考えてしまった。まあそうなったらそうなったで大暴れしてやれば良いかなとも思ったが……


転移する前にデーモンズアーマー(混沌)を解除する。解除するとその下には15階層あたりで木箱から出てきた旅人の服(黒)に着替えていた。この程度なら目立たないだろう。


多少の情報収集をした後はこのパーティとは別れ勇者について情報収集だ。

そう思っていたが転移扉を通って出た先の広場で、沢山の冒険者に囲まれてしまった。


どうやら皆が牢獄の結果を聞きたくて集まってきたのだろう。


ローランドさんが「10階層で戻った」と聞き、大盛り上がりとなった。そして当然の様に同行している俺にも視線が……


「紹介しておこう!こいつには死にかけたところを助けられた。俺たちよりずっと強いから喧嘩を吹っ掛けないように!」

その言葉を聞いて当然ながら怪しむ視線が……

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