冒険者、ミミックを狩る
ガチャガチャと音を発てながら鎧姿の大男が横を通りすぎる。
羨ましいな、と思いながら自分の目当ての場所に向かっていく。
「次の方どうぞ~」
スタスタと呼ばれた受付へ歩いていく。
「本日は買い取りですか? それとも、情報提供ですか? 」
「買い取りで……」
「はい、分かりました。少々お待ち下さい」
そう言うと受付の女性が下を向いて水晶に語り掛ける。
「では、持ち込んだ物をカウンターに置いてください」
ガタゴトと今日採ってきた素材を置く。
「これで全てですか? 」
「はい」
やり取りを終えると受付の女性が水晶を持ち上げて素材に翳す。
「グリーンゴブリンの牙と耳が二組、サラマンダーの尻尾が二本、浮き雲羊の羊毛が5個」
「すみません、出し忘れてました」
待っているのが暇で袋に手を突っ込んで荷物の整理をしていたら出し忘れを見つけた。
「はい、大丈夫ですよ、そこに置いてください」
俺は、黒く光る牙をカウンターに置く。
「凄いですね ! 黒龍の激牙が一本。合計で二万五千ポイントです」
「ありがとうございます」
受付の女性の声のトーンが一切変わらないお世辞を流しつつポイントをカードに入れた。
受付でのやり取りを終え、またダンジョンに潜るかと考えていると、ギルドに併設された酒場から気になる話が聞こえた。
「知ってるか? 最近第5階層でミミックが発見されたって話」
「ああ、俺も聞いた、何でも金ミミックだったって言ってたぜ」
「マジか! 狩れたら一生遊んで暮らせるじゃんか 」
「ま、俺らには関係無い話だけどな~」
そう言うと、彼らはその話を切り上げ別の話題に夢中になった。
お宝話を聞いてしまった……これは今すぐに第5階層に行かなければ!
思い付きのままにギルドを飛び出すと、そのままリフトに乗り第5階層を目指す。
しばらくガチガチと歯車が回る音が聞こえ、ガチャン! と言う音と共にリフトが止まる。
リフトを降り、腰に差した剣を抜く。
ゆっくりと周りを警戒しながら鞄の地図を出し、現在地と地図が合っているかを確認する。
ダンジョンでは頻繁に起こる転移系のトラップが発動したかどうかの確認だ。
「階層に変化無し、現在地は第5階層であってるな」
トラップ確認も終え、地図を鞄にしまっていると目の前をソロリソロリと歩いて行く影が見えた。
驚かせ無いようにゆっくりと影の方向を見るとそこには、金色のミミックがいた。
「え……? 」
あまりの事に俺は思考停止してしまい、呆然とミミックを見ていた。
「…………」
ミミック側も、見られている事に気付いたのかそっとこちらを見てくる。
先に思考が戻ったのは俺だった。
思い切りミミック目掛けて走り、渾身の蹴りをかました。
ドゴッ!! と言う音と共に壁へ激突したミミックはピクピクと動き、ゆっくりとこちらを見て何故こんなことを……と言いたげな表情で消えていった。
何とも言えない感情でミミックが消えた場所を見つめていると、成人男性が入れそうな箱が落ちてきた。
「倒したのか? 」
あまりに呆気なく終わったため少し拍子抜けしたが、勝ったのなら戦利品の確認時間だ。
罠の類いの確認と周囲に目撃者が居ないか確認してから宝箱を開ける。
「これは……」
そこには、どれだけ使っても減らなさそうな金貨とミミックの素材が入っていた。
そうそうに目的が片付いた俺は、ホクホク顔で元来た道を引き返し行きの時に乗ったのとは逆のリフトに乗った。