『違和感』
残酷系苦手ならやめた方が身のためですよ、ほんとに
──20○○年○月◇日 日本・公道──16歳
8:30PM
風が冷たいが冬はやはり良い。春か秋は騒がしく。夏も人がガヤガヤと騒がしい。冬はやはり気楽で良い。
「そんなどうでもいい事はこれくらいにして」
飯食って寝るか。
「あれ?冷凍してたけどな」
あ、昨日食ったわ。
めんどくせぇ。
外に出る、黒のコートが少し靡いた
「えーっとコンビニ何処だっけ」
地図を見る、分からん。
「外って情報量多いな」
あ、信号もう青だ。
「急いで⋯⋯!?」
轢かれたわ、最悪。
痛って〜帰るか?その前に救急車か。
バタン
「だっ大丈夫ですか、きゅ!救急車を早く!」
「まだ死なないで、頼む、頼むよぉ」
「頑張って、救急車が来るから」
「意識はあるぞ!」
「ぁ、ってぇ」
「脈が!」
やばい、死にそうだ。
死ぬのか、ふーん。死ぬ事に価値は求めてないけどさ。悔いはない、と思う。強いて言うならもう少し、いやもっと楽しい人生を送りたかったなぁ。
思えば退屈な人生だった。
両親とはもう会えないし彼女もいない、これといって友人もいない。
せめて、何か変えられたら、世界を…この手で…
『目が覚めましたか?』
「…ああ」
初めて見る場所だ…ただ白い、そう思わされる。
恐らく俺は地球ではない星にいるのだろう、記憶の限りでは世界中どこにもこんな珍しい、それも観光スポットになっていそうな場所は無かったのだから。
強いて言うならどこかの国の機密機関だろう。
尤も、そんな場所に一般人を連れてくる阿呆が行政機関にいるとか到底思えないが。
そもそも気絶していたと仮定して、拉致するなら当時の健康状態から考えて医療設備が整っているような交通手段、尚且つ目立たない手段でなければならない。仮にそれが可能として、今俺は五体満足の状態だ。これは明らかにおかしい。
つまり行政機関の力が働かない、尚且つ現代の文明とは到底思えない技術を持った何かによって拉致されたのだ。
『どうかされましたか?』
「いや…なんでも、それより要件を話して下さい」
『話が早くて助かります。実は…』
どうやら自称女神シーレット曰く『世界を救って欲しい』そうだ。
正直に言うと面倒だ。
そもそも俺がその世界を救う義理などないし、どうせなら逆に滅ぼした方が楽しそうだ。
だがまあ、ここは恐らく「わかりました!」って言った方が好印象だろう。やっぱ無理とかだったらそう言えばいい。
ちなみに具体的にどう救って欲しいのかと言うと、魔王やら皇帝やら邪神やら叛乱やらetc…やけに注文が多い。
だからメンドイし俺はあーだこーだ言われた事はやりたく無くなるのだ。
「わかりました!僕が世界を救ってみせます!」
『おぉ!流石選ばれし勇者!どうか世界を救って下さい!』
この会話で1つ分かった事がある、それは略称Sは心までは読めないらしい。これは推測だが、神にも担当や専門分野があるのではなかろうか。
そして何か1つ能力を貸して貰えるらしい。
そう、貸すだ。
この時点でいつか返してもらうというのは確定だ。
恐らく保険か何かか監視を含めたものだろう。
どうしたものか…
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「決めました!この【爆裂】というのを」
『【爆裂】ですか…大変面申し訳ないのですが、扱いに難があるかと』
「そうですね……分かりました、ではこの【話術】というのを」
『そんなものでよろしいでしょうか?それで良ければ今すぐに』
「いや、ちょっと待って下さい」
『なんでしょうか?』
「この能力は貸してもらうのではなく、貰い受ける事は出来ないでしょうか?」
『……なぜですか?』
「もし、地球に帰れるなら【話術】の効果に含まれる、言語理解を地球でも使用したいからです」
監視をする理由は恐らく強大な力を与えた勇者が脅威になりうるため動向を確認したいからだろう。
ちなみに先程言った事は勿論ほぼ嘘だ。
なぜ【話術】なのかは後に分かる事だろう。
『…わかりました、スキル【話術】は正式に貴方へ譲渡されます』
「ありがとうございます」
能力表は簡素なもので、脳内で確認出来る。
正しく【話術】が譲渡されていた。と、思う。もしかしたら他の手段で、軽い監視程度は付けるかもしれない。
『では、ある程度の身分は保証しますので転生の儀を始めます』
「わかりました」
不安だが…恐らく1度死んだ身だ。先程転生と言っていたからまあ死んだのだろう。
『お気をつけて…転送を行います』
最後に転生ではなく『転送』と言ったのが気がかりだった。
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始まりから不穏な空気が……ここからどうなるかは作者もまだ分かりません(この時点でまだ次話書いてない)