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5.

「待てよ……、星っていうくらいだから、星の本とかに書いてあるかも」

 わずかな手がかりを求めて、自然科学のコーナーへ向かう。一番分厚くて大きな図鑑を手に取り、机の上に広げてみる。しばらくすると、律が近くに寄ってきた。

「花音、それに北斗七星の説明ってある?」

「北斗七星?」

 よくわからなかったが、花音は言われたままページをめくり、律が指定した箇所で手をとめた。ひしゃく型に並ぶ星のアップと、詳細な説明が小さな字で印字されている。律がその中の一文に人差し指を置いた。

「ここ。――北斗七星、別名、しそうの星。四、三、と書いてしそうと読む」

「四、三……? それが、四年三組ってこと?」

 こくりと律が頷いた。

「へええ! 北斗七星に別名なんてあったんだ! すごーい、律! そんなのよく知ってたねえ!」

「……前、ちょっと聞いたことがあって……。それと、ひしゃくを形作る四つの星から数えていくと、北斗七星の最後の星はこれ――、アルカイド」

「アルカイド……」

 花音はううむとうなった。

「それってあれだよね。よく植物に含まれている毒で……」

「それはアルカロイド」

 間髪入れず律に突っ込まれて、花音は口をつぐんだ。だがすぐにまた開く。

「でもそれがなんなの? あの星をあたしにくれるってこと? 意味分かんないしキモいんだけど」

「……僕に言われても」

 律がちょっと首を傾ける。表情は変わらないのだが、ひょっとしたら困っているのかもしれない。

「……あ、じゃあ、その星のあるところ、行ってみる?」

 何か思いついたのか、花音の返事も聞かずに歩き出した。

(まだ昼なのに、星?)

 花音は呆気にとられたが、急いで本を片づけ、律の後を追った。

 図書室を出てすぐの階段を降り、一階の廊下を進む。他の生徒に見つからないかとびくびくする花音に対して、律は落ち着いたものだった。

「大丈夫。今は授業中だから」

 律の言うとおり、廊下に人の姿はない。花音は安心する傍ら、授業中なのに堂々と単独行動をしている律の存在を不思議に思う。

(律くん――律でいいか。一体何者なんだろう。そういえばこの白衣からして、変だよねえ?)

 律の後ろを歩いているのをいいことに、穴があくほどその背中を見つめていた花音は、「ここ」と言って急に立ち止まった彼にぶつかりそうになった。

 さも当然であるかのように中に入った律に続き、十分に距離を取ってから、花音も室内に足を踏み入れる。

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