表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花にひとひら、迷い虫  作者: 鍵の番人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/40

33.

 重厚な鉄扉を開けると、冷たい風が一気に廊下に吹き込んでくる。

 花音は一度大きく身震いして、おそるおそる足を踏み入れた。

「花音は、運がいいよね。名前のわりに」

「え?」

「こんなに天気がいいのは久しぶり。それに、まだ月が上がってないから、上も下も、きれいに見える」

 空は快晴。日の落ちた直後。

 赤から紫、そして藍色へと移り変わっていく空が、また顔を変えて、星を一つ一つ生み出していく。

 花音は、息をするのも忘れて刻々と変わる空模様を見届けた。

 下界に目を転じれば、森の向こうに広がる街には、人工的な色とりどりの光が満ちていた。

 家々の灯りがあたたかく感じるのはなぜだろう。花音のような家も、律のような家も、あの中には含まれているに違いないのに。

「……すごく……きれいだね」

「うん……」

 律も同じように見とれたまま頷く。

 秋の初めとはいえ、標高の高さのせいで風が冷たい。花音が身を震わすと、同時に律も身をすくめたので、顔を見合わせて笑った。

 ふいに、花音の胸がぎゅっと締め付けられた。

 こんなに綺麗な空の下で律と二人で笑い合える今という瞬間が、かけがえのないものに思えた。

 夜のとばりがあっという間に降りて、空に見える星々も、町中の光も、圧倒的な量となる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ