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花にひとひら、迷い虫  作者: 鍵の番人


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27/40

27.

 顔を上げるも時すでに遅し。花音は数人の女子生徒達にとり囲まれていた。

 見知らぬ人ばかり、と思ったが、正面の少女には見覚えがある。音楽家の演奏を聴いた後、教室前の廊下で律にからんできた生徒のはずだ。

 とすると、こうなった状況は推して知るべし、ということだろう。

「あんた、律くんのなんなの?」

 開口一番、敵意むき出しの言葉が飛んできた。

「なんか今日、ずっと一緒にうろうろしてない? 何組の誰よ? 律くんとどういう関係なの?」

「うちらの誰もあんたのこと知らないんだけど。名前、名乗りなさいよ」

 口々に詰問され、花音は対応に困る。はっきりと答えられるのは名前だけだ。けれど、それだけでは彼女たちは納得しないだろう。

「ちょっと、黙ってないでなんとか言ったら!?」

「無視してんじゃないわよ!」

「ああ、ごめんなさい!」

 花音は慌てて返事をした。とにかく何か答えなければ、さらに彼女たちをいらだたせてしまう。

「えっと、あたしは天宮(あまみや)花音っていって……、律……くんとは、別になんの関係もないんだけど、事情があって、今日だけ案内してもらってて……」

「は? 意味わかんないんだけど」

 花音のしどろもどろな説明では、やはり理解してもらえなかった。わかってはいるのだが、これが事実なのだから、他に説明のしようもない。正面にいるポニーテールの生徒が目をつり上げて詰め寄ってくる。

「関係ないなら、なんで律くんが一緒なのよ!」

「だ、だからそれは、偶然会って……、ほ、ほら、律くんてやさしいでしょ? あたしもなんだかわからないけど、自分からやってくれるって……」

「……律くんが、自分から?」

 真ん中の子が、怪訝な顔をして周囲の人たちと視線を交わす。

「あんた、何言ってんの?」

「え?」

「律くんは誰とも関わんないわよ。複雑な家庭環境ってやつで、人間が嫌いなんだから。あんたが無理矢理つきあわせてるだけでしょ。無神経な女ね!」

 どん、と胸を突き飛ばされて、花音の中に小さく火種が灯った。

「……あたしは、ほんとのことしか言ってないよ。律は優しいから、あたしが困ってたのを見過ごせなかったんだと思う。あなたたちこそ、言ってることが無神経なんじゃない?」

「なっ……、なによ、えらそうに!」

「ね、ねえ、瑠璃(るり)!」

 隣の子が慌ててカッとなった女子生徒を肘でつついた。「こいつ、誰も知らないなんて、やっぱりおかしいよ。先生んとこ連れて行かない?」

(えっ!?)

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