22.
「あ。そうそう、暗号! たぶん暗号だと思うけど。椅子の裏に、マジックで『旅の中継地点』って書いてあったよ」
記入する場所として椅子の裏を選んだのは、少しは気を遣ったということだろうか。マジックで書いてあることからして、五十歩百歩の気もするが。
「旅の中継地点……」
「でもそんなの、どこからどこに行くかによっても違うじゃん。普通に考えるんじゃないんだよね、きっと。この学校でってなると、さっき律が言ってたことが関係あるのかな?」
アサギマダラの集まる学園の中庭。
律は、アサギマダラは渡りをする蝶だと言っていた。「渡り」を「旅」だと考えれば、場所は自ずと明らかになる。
「……や、違うと思う」
だが、意外なことに、律が異を唱えた。硬い表情をして、首を横に振っている。
「え? でもさ――」
「だって、あそこはずっと僕が管理してた。変なものなんて、どこにもなかった」
「でも……、だったら、律はどこか当てがあるの?」
「それは……今から考える」
「ふうん?」
なんだか律らしくない。様子をうかがっていると、彼はなにやら動揺しているようだった。もしかしたら、花音が言ったことはそう的外れではないのではないか。花音は律の手をぎゅっと握った。
「え、ちょ……?」
「まあ、ともかく行ってみよう! ここの探索は終わったんだし、次、次!」
「花音……!?」