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20.

「えっと、それで、何だっけ? 音楽室の暗号の答え」

「たぶん、フランツ・リストのことだと思う。ピアノ演奏家の」

 聞き覚えがある名前なので音楽の授業で習ったのだろうが、名前以外の情報がさっぱり思い出せない。

「とりあえず、有名な人なら肖像画とかあるよね? それか楽譜……とか?」

 花音は壁にかかった肖像画、律は楽譜や楽器の置かれた棚の方と、手分けして調べていく。

「それにしても、なんだね。ほんとあたし、律がいなきゃ一つも暗号解ける気がしないや。あいつも、あたしがそんな頭がいいとでも思ってたのかな?」

「……別に、頭がいいわけじゃないよ」

 律は声のトーンをわずかに落とした。

「ただその話を、聞いたことがあったってだけ。ただそれが、たまたまなのか、そうでないのか――」

「え?」

 聞き返すと、律がまっすぐ花音を見つめて言った。

「あのさ、花音のお父さん、僕の知ってる人かもしれない」

「えっ――」

 壁掛けの絵を見ようと背伸びをしていた花音は、驚いてよろけそうになる。

「僕に、色々教えてくれた人。花畑で、蝶を見せてくれた人。だじゃれが好きで、北斗七星の別名を教えてくれて、それに――……」

「ま、待って待って、律!」

 慌てて律の言葉を遮る。

「それって、あれでしょ? 変な名前のアメリカ人! 言っておくけど、あたしの親はれっきとした日本人だったから! 律の言ってる人とは全然違うよ!」

「……や、でも、外見は日本人に見えたし――」

「外見だけでしょ!? もう、そんな偶然あるわけないじゃん! それに、もしそうだとして、律に暗号のヒント教えることになんの意味があるの?」

「それは……わからないけど」

「でしょう!?」

 花音は大きく息をついて、胸をなで下ろした。

「あー、びっくりした。うちの父親は、さっきも言ったけど、ほんとーにろくでなしだから! 自己中で、一方的で、思い込みが激しくて! 一緒にしちゃったら失礼だと思うよ」

「……そう、だね」

 花音の剣幕に気圧されたのか、律はそれ以上追求せず、暗号の答え探しに戻った。花音も興奮して熱くなった顔を手で仰ぎつつ、肖像画を一つ一つ眺めていく。

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