表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/40

2.

 六星花ろくせいか学園。

 街の中心地から離れた森の高台にある私立高校だ。

 常軌を逸した金持ちが創設した学校で、風変わりなカリキュラムが組まれており、生徒達も変わり者が多いと聞く。

 目の前の少年も、そのうちの一人なのだろう。

 彼は、視線を上から下まで移動させて、花音の全身を観察した。

「最近、ストーカー被害の相談が多いっていうけど、まさか――」

「ス、ストーカー!? ちょ、ちょっと待って! あたしは、天宮(あまみや)花音っていって、ちゃんとした高校生で……!」

「……ちゃんとした?」

 うさんくさげな声を正面から浴びせられ、花音は顔を引きつらせた。

 少年の無表情からは何も読み取れない。しかし、不審に思われていることだけはばっちり伝わってくる。適当な言い訳で見逃してもらえるような雰囲気ではなく、花音は事情を話してわかってもらえる可能性にかけることにした。

「あのね、ちょっと込み入った話になるんだけど、聞いてくれる? 実はあたし、一週間後に日本を発つことになってるの!」

 不信感を力まかせに押し切る勢いで説明する。

「だけど、いきなり、随分前に離婚した父親から連絡があってね。この学校に何か隠したらしいんだ。それをあたしにくれるって。最初はそんなの、無視しようと思ったんだけど、いざ日本を離れるとなると、放っておくのも寝覚めが悪いかなって考えるようになって。だから、確認だけでもしておきたいの。こっそり入ったのは悪かったけど、あたしはここの生徒じゃないし……」

 花音だって最初から忍び込もうと考えていたわけではない。見学の申請を出そうにも、学校関係者か入学希望の中学生しか学園側では受け付けていなかったのだ。仕方なく、フリマサイトで制服を一式そろえ、登校する生徒に混じって忍び込んだのである。

 無言で見つめてくる少年の結論を、気をもみながら待つ。やがて、彼はゆっくりと口を開いた。

「……なんで、この学園に?」

「ええと、それは、わかんないんだ。でも、そういえば高校受験の時、やたらこの学校勧められた気がする。なんか不自然だったから、あいつの差し金だったのかも」

「…………」 

 花音は父親のことを思い出して舌打ちをした。それを見た少年は、数回、瞬きをしただけで、あとは何の反応もしない。信じてくれたのかは判らないが、即連行されなかったことに希望を抱いた花音は、ここぞとばかりにたたみかけた。

「お願い! 別に悪いことしようとしてるわけじゃないの! 用事が済んだらすぐに出ていくから、見逃して!」

「……不法侵入が、すでに犯罪……」

「それはまあそれとして!」

 平身低頭して拝み倒すと、花音の読み通り彼は折れた。

「……本当に、悪いことはしない?」

「うん、迷惑はかけないから!」

「用事が終わったら、帰る?」

「うん、それはもうおとなしく!」

「……わかった。通報するのはやめる」

「! やったー! ありがとう!」

 目を輝かせて飛び上がり、勢いのまま彼の手を握って上下に振った。それから意気揚々と図書室の出口へ向かうと、なぜか彼が後ろからついてきた。

「……あの?」

 怪訝に思って首をかしげた花音に、少年は簡潔に答えた。

「通報はしない。けど、あんたが本当に悪いことしないか、監視する」

「ええ~っ!?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 私は、この物語凄く面白いと思います! これから、どうなってくのかスゴく楽しみです(*/∀\*) [一言] 三話も、投稿してほしいです!
2023/05/02 17:45 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ