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花にひとひら、迷い虫  作者: 鍵の番人


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17/40

17.

 傘の上にハートマークが描かれたもの、傘の間に線が入ったり入らなかったりするものもあり、どうやらいろんなバージョンがあるらしい。画面に「正しい相合い傘の描き方」を表示してつぶやいた。

「ふうん。こんなのがあるんだ。ね、律も見てみなよ! 面白いよ」

「僕、ケータイ持ってないから」

 なんでもないことのように言われて、花音とバイトの青年は目を丸くした。

「ええ!? ほんとに!? 持ってないの!?」

「おお! すげえ、天然記念物なみだなおい!」

「……」

 律はじろりとにらんだだけで、すぐに食事を再開した。しかし、花音はさらに食い下がる。

「え、じゃあ、どうやって連絡取り合うの!? 友達とか、家とかさ!」

「別に、とりたい人いないから」

 律のあっさりした答えは、それ以上の追求をためらわせる効果があった。青年が居心地悪そうに視線をさまよわせ、花音はがっかりしてスマホの画面に視線を落とす。

 今日ここを離れてからも、律とは繋がっていられると思っていた。連絡先を交換する機会をうかがっていたのに、その手段がなかったとは。

「……花音?」

 突然静かになった花音に、律が声をかけた。花音は焦って話を戻す。

「あ、あーっと、絵の話だったね! えっと、これが別れ傘っていうと、虫と縁を切りたいってことかな? でも、なんかこれ、矢印にも見えるよね。や、矢印にしては変かー、あはは!」

「……矢印?」

 少し傾いた傘の先を見つめた律は、いきなりご飯を食べるスピードを上げた。

「え? 律? 急がなくていいよ? あたしがご飯食べるの速いだけで――」

「――ごちそうさま。花音、行くよ」

「えっ? ええ、えーっ?」

 早送りのような動きで食器を棚に戻すと、呆気にとられる青年を尻目に、花音はひっぱられるようにして食堂を後にした。

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