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1.

その出逢いは、運命だったのかもしれない。


空の色も、空気の匂いも、昨日とさして変わらない今日に舞い降りたひとひらの出逢い。


けれどそれは、神や仏によるものではなく――……。



「あんた、誰?」

 突然降ってきたぶっきらぼうな声に、花音(かのん)は顔を上げた。

 

人気のない図書室の中には、ようやく暖かな光が窓から差し込んできたところだ。

 棚と柱の隙間に挟まるようにして隠れていた花音の前に、いつの間にか、天使かリスを思わせるつぶらな瞳を眠そうに細めた少年が立っていた。

 色素の薄いふわふわの猫っ毛、小柄な体型に、手の甲まで覆い隠すほどの大きな白衣を羽織っている。

 花音は、他の誰かが発した言葉なのかと思い、周囲を見回した。

「うちの生徒じゃないでしょ。授業中に何してるの?」

 言葉も口の形も合っていた。可愛い顔に不釣り合いな口調は、この少年のものに間違いない。

 花音は急いで口内のパンを飲み込むと、スカートのほこりを払って立ち上がった。

「あはは。やだなあ。ちょっとお腹すいてサボってただけでしょ。それなのにそんな言い方、ひどくない?」

 笑ってごまかそうとしたが、彼の表情はぴくりとも動かなかった。花音をじっと見つめた後、小さく息をついてきびすを返した。

「……そう。なら、職員室に通報して来る」

「わーっ、待って、待ってください!」

 ためらいなく歩き出す彼の背中に、花音は慌てて追いすがった。

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