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ツインソウル

I'll Always Love You

作者: もぃもぃ









「雨、やまへんなぁ」



 ナァ、と鳴く声。



「きみ、いつも雨のときに来はるなぁ」



 ンナァ、とまた鳴く声。



「……やっぱり、きみ、おるなん?」




 ンナァァと三度鳴いて、その白猫はじっとわたしをみた。ここ三ヶ月くらいの、おかしな現象。

 雨の日に、わたしのところに現れる白猫。

 弟のおるみたいに賢そうで綺麗なネコ。このネコちゃんは、織にとてもよく似ている。

 ちょうど一年と三ヶ月前に亡くなった、わたしの弟、織に。








【I'll Always Love You】






 

【一】


「さてオル、行きましょか。受付の人がそろそろ呼びに来はるやろうし」



 ンナ、と返事をした白猫は、階段をスタスタとスムーズに降りた。フェンスのある通路まで来て立ち止まり、スタンドのシートから立ち上がったわたしをふり返った。

 わたしは今日描いたクロッキーをもう一度確認した。走る、ボールを拾う、ボールを投げる。野球のユニフォームを着た男の子たちの動き。一瞬の動作を、何度も何度も描く。


 身体の左右を均等にわける正中線を引いて、頭・腰・膝・足のアタリをざっくりとる。腰と膝と足は左右それぞれの骨格を点で捉え、それぞれを繋ぐように横軸として線を引いていく。頭、肩から腕、腰から足と、全体を素早く描いていく。時間は短い。制限時間内に、単調な線で、モデルの特徴をとらえて描く。

 たとえばボールを上から投げる動作なら、胸を真横に開いてからボールを投げ、身体は正面を向く。脚は前後に大きく開いて、右脚に体重をかけるとき、右膝が上がって左膝が下がる。骨格をとらえる横軸は、水平じゃなくて傾く。振りかぶっている状態の重心は、右脚から左脚に移動する腰のあたりを意識して目でとらえる。伸びる筋肉の外側は線を強く、構えた左腕は弱く、メリハリをつけて。




“理緒ちゃん、また野球場来てるんか。こんな雨の日ぃまで。仕方ないひとやなあ”



 とっくに誰もいなくなったグラウンドから、大人びたことを言う弟のそう笑う声がした。きっとすごく真剣に心配してくれているんだろう。わたしが降りてくるのを待っている白猫のスッと佇む姿が、弟の声みたいだった。



「お目目、黒豆みたいやな」



 初めてオルに会ったときにそう思ってから、オルの目は何回見てもつやつやの黒豆みたいだった。織がそれを聞いたとしたら、“あいかわらず理緒ちゃんのセンスは変や”と不思議な顔をするだろう。



「あっ、しまった。このままやと濡らしてしまう」



 閉じて脇に抱えたスケッチブックに、パラパラと雨の滴がかかった。慌ててビニール袋を取り出し、リュックサックへ戻す。



“理緒ちゃん、それ大事なスケッチブックやろ? こんな雨の中そのまま抱えてたら濡れてしまうやん。いくら俺の傘使わはるいうても、さすがに守ってあげれへんわ” 



「せやなぁ、織の言うとおりやわ」



 中学校の昇降口で、呆れていた織を思い出す。正確には、そのときわたしが持っていたのはスケッチブックじゃなくて教科書だったけど。

 もうわたしよりも背が高くなって、織の肩の位置がわたしの目のあたりになっていた頃だ。雨の日は昇降口で待ち合わせして、ひとつの傘で一緒に帰ったこともあった。わたしも織も、お互いをとても好きだった。織はいつもわたしに優しかった。その優しさに、今は直接触れることができなくなってしまった。でも、ときどきこうしてわたしに降りてきてくれる。記憶のなかの織が、透きとおった心を差し出してくれる。

 わたしには少し大きい傘の持ち手をギュッと握った。白猫のもとまで降りたわたしは、



「……なあ、オル?」


ネコは首を傾げて、「ンナ?」


「織は怒ってへんかなぁ? 織の傘、勝手に使うてしもうて」



「ンナァァ」



「そんな返事、怒ってるんか怒ってないんか、どっちかわかれへんわ」




“理緒ちゃん、いまさら?”



 織が吹き出している。きっと織なら笑ってくれる。そんなことはわかってるのに。

 織の痕跡をみつけたくて、織の名残をさがしたくて、いつまでもこんなことをしている。野球場に通って、わたしはいつまで……。




「――――――あの、」



 オルがピンと耳を立てたのと、その声がかかったのは同時だった。



「もう今日は野球場閉めますって、受付の人が」



 ユニフォームを着た高校生が立っていた。







 朝比奈くん、と声に出そうとして慌てて飲みこんだ。向こうはわたしに素性が知られてないと思ってる。……素性って。

 だってこのひと、学校ですれ違うときにいつもすごく気まずげにわたしを見て、すぐに目を逸らすわりに、織の月命日に必ず家の玄関先にこっそり菊の花を置いていく。もう一年くらい。

 ちょうどわたしが高校二年生になったすぐの頃、お母さんが朝比奈くんがお花を置いてるところに遭遇して、家に上がってもらおうとしたら、「失礼しますっ!!」とものすごい勢いでお辞儀をしてすごくきれいなフォームでむちゃくちゃ速く走り去ってしまった。

 わたしは二階の部屋の窓から、呆気にとられてそれを眺めていた。自分から名乗ったという彼の、肩からかけていたカバンに学校名と部活名と名前が印字されていて、お母さんがその名前の漢字をたまたま目にしていた。“あの子、理緒とおんなじ学校やったんやねぇ。野球部で、朝比奈 チカっていわはるみたいやわ。睦と書いて、チカ”


(チカ)くん……”

 織と同じで、名前の漢字が一文字なのが印象に残った。



 朝比奈くんは、まだ野球場(ここ)に残ってはったんか。

 大会の地区予選かなにかの練習を、ここから徒歩5分のところにあるうちの高校の野球部員たちが一時間ほど前までしていた。朝からごく弱い雨が降ったりやんだりだったので、練習に支障があるほどの地面の状態ではなかったらしい。わたしは彼らが引き上げたあとも、球場がまだ閉まらないのをいいことに、織の傘を差しながらスタンドに居座ってひたすらクロッキーを描いていた。モデルがいなくなったから、頭にある残像を頼りにだ。

 10分ほど前から雨がまた降りだしたというのに、朝比奈くんは傘も差さないでそこにいる。受付のひとの代わりに退出時間を告げに来たらしい彼は、とても心もとなげな様子だった。でも瞳は真っ直ぐにわたしを向いている。亡くなるまえの織よりも背が高くて、目は小さめだけど鼻がすっきり通っている。顎がちょっと丸いのが、まだ少し少年っぽい。白いユニフォームもスパイクもまだ真新しかった。



「………………」



 どうしたんだろう。オルは朝比奈くんを見たまままったく動かなくなってしまったし、ちょっと居心地がよくない雰囲気……。なにかを言うべきプレッシャーを感じる。




「あの……、濡れてるよ?」


「――――っオレっ!!」



 ……完全に会話がかぶってしまった。

 雨がパタパタパタパタ、朝比奈くんの頭と肩にかかっている。野球帽のツバがそれを、ポン、ポンと弾く。斎南(さいなん)高校の「斎」という漢字が、黒地に臙脂(えんじ)で刺繍され、字の縁は白糸で囲ってある。なんであの色の組み合わせにしたんやろ、遠くから目立たんと思わへん? と織が()()()()そうにしていた。織が一度も被ることがなかった帽子だ。

 


「……オレ、あなたのこと知ってます。今まで何も言わなくてすみませんでした。オレの名前は、朝比奈睦です。…………篠山は、ヒナって呼んでました。アイツ、ネコとかヒヨコとかかわいい動物が好きやったから、オレのこともヒナって呼んでいいかって、初めに会ったときに訊いてきて、それで、理緒さんのことは理緒ちゃんって、それもすげぇ大事そうに嬉しそうに呼んでて……、だから……」



 最初は胸をしっかり張って両手の拳を握りしめながら話していた朝比奈くんは、だんだんうつむいていって、しまいには帽子のツバの前面がしっかりこちらにさらされてしまうまでになった。




「……睦くん」



 朝比奈くんは、ガバッと顔をあげた。

 ツバに弾かれた雨粒が、ポンと向こう側へはねた。



「わたしのほうこそ、知らんふりしててごめんなさい。菊のお花をいつもありがとう。きみが持って来てくれてはるって知ってました」



 朝比奈くんは、言葉につまったみたいだった。帽子のツバを乱暴に下げて、ギュッと唇を噛んでいた。







【二】


 オレが持ちます、と頑固に言い張るので、仕方なく彼に傘を差してもらった。朝比奈くんは、この時期なのに傘を忘れたみたいで、駅まで入れていってほしいと頼んできた。ちなみに、球場の更衣室でユニフォームから制服に着替えている。待つぶんには、わたしはぜんぜん気にしないよと言ったのによっぽど急いだのか、制服がだいぶグチャグチャだった。

 駅まで7、8分の距離をゆっくり歩いた。オルはわたし達の先に立って、時々こっちをふり返る。ネコは雨の日には出歩かないと思っていたんだけど、オルは平気らしい。雨の日に場所も時間も気まぐれに現れたり、変なネコだ。



「――――このネコって、()うてはるんですか?」



 朝比奈くんが恐々と訊いてきた。



「ううん。三ヶ月くらいまえに突然ひょっこり家のまえにおったんよ。それが、不思議で……」


「不思議?」


「……うん。雨の日にしか現れへんの。だから今までを合わせても、20回くらいかなぁ……。どこに現れるかは決まってなくて、でも来たらわたしのあとを着いてくるの。それと、初めてこの子を見たのって、命日で」


「……命日って、」


「うん、織の」


「…………そうですか……」



 沈黙が落ちた。朝比奈くんは痛みをこらえるみたいに目をキュッと細めた。彼は、少し先にある水たまりを鋭く見つめる。雨粒を鈍くはね返して、水たまりは揺れる。

 別に言うつもりなんてなかった。朝比奈くんは知らなくていいことだ。傷ついてほしいわけでもない。朝比奈くんは、織の姉であるわたしのことを知っている。でもわたしは知らないふりを続けてきた。お葬式の日、お寺のお堂の階段のまえで学ラン姿で途方に暮れたように立っていた彼は、でも泣いていなかった。



「あの、オレ――――」


「ね、斎南(うち)の野球部って強いんですか?」



 朝比奈くんが口を開こうとして、わざと遮った。朝比奈くんは一瞬キョトンとした。帽子をかぶっているほうが大人っぽいな、と勝手な感想を抱く。野球をやっている男の子らしい、というのも変だけど野球少年らしい坊主頭だ。少年という言葉には似合わないくらい図体はデカいけど。


「えっ? あっ――――……」


「甲子園に行ったとは聞いたことないけど、今日も練習してやないですか。なにか大会があるんかなって」


「……いや、そんなんじゃないです。たんに再来週、他校との試合ってだけで。斎南(うち)は弱すぎてそんなん無理です」


「そっか……」


「はい……」



 また気まずい沈黙が訪れそうになったとき、走ってきた車が水たまりを跳ねた。それをオルが避けようと、朝比奈くんの足元へトンッと軽く飛んだ。「うわっ」と彼は驚いて、わたしのほうに一歩身体を寄せた拍子に、わたしの左肩と彼の右腕がぶつかった。弾力がある筋肉に押し返されて、わたしは不覚にもよろめいてしまった。



「あっ……、すみません!」



 朝比奈くんは顔を赤くして、とっさにわたしの腕をがしっと掴んで引いた。



「……う、ううん。ありがとう。それより、朝比奈くんはネコが苦手なんですか?」



 秒速……? と疑うくらいのスピードで朝比奈くんは腕を離してくれた。この一年、クロッキーをしているから彼らの腕や筋肉は観察していたけど、こんなに間近で触れる機会なんてなかった。――――走る。ボールを拾う。脚を大きく開く。手にもって、身体を反らす。胸は真横に開いて、重心は膝を落とした左脚。腕が伸びる。体重は右脚に移動する。腕を大きく振る。上半身は前に倒れる。重心は左脚に移る、その動き……。

 


「ネコというより、動物全般が苦手です……。小さいときに、動物園でライオンに吠えられてから無理になりました……」



 ハッとして、視線を彼に戻した。ぼんやりしてしまっていたけど、朝比奈くんは顔を赤くしたままだった。わたしは内心慌てて取り繕った。



「そんなに怖かった?」


「初めての動物園やったんですけど、トラウマになりました」



 げっそり、という表情で彼はつぶやいてから、いきなり声のトーンが低くなった。



「――――篠山さんは、やっぱり動物は好きなんですか?」



「え、動物? 好きやけど……?」



 どうしたんだろう、というか、やっぱりってなんのことだろう。首を傾げていると、鳴いたオルがわたしを見あげた。もうすぐ駅の改札口だった。



「あ、オル。今日もやっぱり電車には乗らへんよね? わたしは今日塾があるから、帰りは少し遅くなるよ。また家で会えるかな?」



 ネコが人間の言葉を理解するのかは知らないけど、わたしはオルにいつも話しかけてしまう。オルは、またナァ、と小さく鳴いた。白い毛並みと、黒豆みたいにツヤツヤした目。とても知的な感じがするネコだった。




「……………オルって、このネコのことですか?」


「……あ、うん。そう。命日に現れて、織みたいやったから……」



 朝比奈くんがそう訊いた。元気がないを通り越して、暗い表情だった。オルが不思議そうに、朝比奈くんを下から覗き込んだ。 



 ――――オル。と、わたしはつぶやいた。

 雨の日に亡くなった織は、高校に入ってからおかしな行動に出た姉を心配して、ネコになってこの世に戻ってきてくれたのかもしれない、なんて。ありそうにもなかった。でも織は、雨の日にいなくなって、雨になるとオルは現れる。


 オルは、織なの……?

 オルは、次の雨の日にはわたしのところに来てくれる?

 次に来てくれたとして、その次は? いつまで? いつまでオルは、わたしに会いに来てくれる――――?




“明日にしたら? 雨も降ってきてもう暗いし”


“いや、クラスのやつにどうしても返さな。明日小テストやのに、その子の教科書持って帰ってきてしもうてん”


“そうなん。高校合格したのに、大変やなぁ。外寒いし、気ぃつけてな”


“真面目な子ぉなんやわ。ありがとう。すぐ帰るわ”





「理、緒さん」


「え…………?」



 ふ、と回想から引き戻された。いま、朝比奈くん、わたしを呼んだのだろうか……? 

 朝比奈くんはあまりにも強い目で、真剣にわたしを見つめていた。なぜか急に息苦しくなって、心臓がドキドキしてきた。




「いつまで、野球場に……。いや、このままずっと、絵を描かはるつもりですか」


「えっ…………」



 何を言われたのかわからなかった。 

 彼は勢いよくわたしへ語った。とても苦しそうに。彼は織が亡くなったと聞いたときからずっと後悔していたと。わたしのことを気にして、わたしにずっと謝りたくて、ずっとわたしを見ていたこと。彼は謝った。

 心臓がドキドキしているのが、もっと速くなってきた。雨もさっきよりバタバタと激しくなって、わたし達の傘の下にも吹き込んできた。朝比奈くんの傘をもつ手が少しふるえている。左腕に雨がかかって、彼の手の甲に雫が落ちていた。彼は途方に暮れたみたいだった。



「朝比奈くん……?」




 彼のその顔を知ってる。朝比奈くんがなにを告げようとしているのか、知っている。織が亡くなってからのほぼ一年間、毎月欠かさず菊の花を持って来てくれた。お母さんが朝比奈くんの名前を知った日、彼がお辞儀をして顔をあげた瞬間、彼とわたしは窓越しに目が合った。彼がお花を持って来てくれる理由なんて、ひとつしかないと思っていた。朝比奈くんは泣きたいような顔をしていた。後悔、懺悔、苦しみ…………、怒り。




“理緒ちゃん、クラスの子でおもろいひといてはるねん。そいつ動物めっちゃ苦手みたいなんや。学校で飼ってるウサギに餌やんのに半泣きやったわ。かわいそうやったから、飼育委員代わってあげた”

 

“動物苦手やのに、そのひとわざわざ飼育委員に立候補しはったん?”


“うん。なんか、苦手を克服したい理由ができたらしいわ”


“……? 好きな子でもできたとか? 好きな子が動物好きやったとか?”


“えぇっ!? 理緒ちゃん、なんで知ってんの!?”


“は? なにが?”





「理緒さん、“織”を描いてはるんと違うんですか。篠山がユニフォームを着て、野球をやってるスケッチをずっと、描いてるんじゃないんですか……?」





 ――――――織。




 “慕わしい”という感情を、この世界の好きなもの全部編みこんで表したような名前だと、いまはじめて思った。

 織は高校生になったら野球部に入るつもりだと言っていた。クラスの子に誘われたのだと。坊主頭になるよ? とわたしはからかった。織は照れたみたいに笑ってた。



“そうそう、それなぁ……。坊主頭なぁ。でもそれくらいしか接点ないしなあ……”


“接点? なんの話?”


“あああ、ううん。なんでもない、なんでもない。それより理緒ちゃん、試合あるときは観に来てくれはる?”


“それはもちろん行くけど。それより部活のことなんか合格してから考えたら? 入試まであと十日しかないよ”


“あー……、たしかに、まず入試(それ)やんな。オレって何してるんやろ。ちょっと空しくなってきた……”


“織、さっきからどうしたん?”


“ごめん、なんでもない……。オレら、受験頑張るわ……”


“織やったら大丈夫やわ。そのクラスの子も受かるといいね”


“……ありがとう”





 織は、入学するはずだった高校の制服の採寸に行くこともなく、中学校の卒業式に出席することもなかった。黒と臙脂の組み合わせに難色を示していた野球部の帽子を被ることも。だからわたし達家族の手元には、高校生になった織を想像させるものがなにもない。

 だったら創ればいい、と弟が亡くなってまだ間もないときに思いついた。

 成長したら、弟はどんな姿になるだろう。背はまだ伸びるだろうか。声はもっと低くなるのだろうか。わたしに差し出してくれる、透きとおった心は、ずっと変わらないのだろうか。

 わたしには、織の変わっていく姿がきっとわかるはずだと思った。だって織とわたしはそういう存在(・ ・)だ。織とわたしがほんとうに()()()()存在(・ ・)なら。




「……織は野球部に入るって言ってたから。織が成長していくところを、少しは想像できるかもしれへんし。わたしやったら、わかるかもしれんと思ったから。たとえ――――」



 たとえ、ネコになってわたしのまえに現れたとしても。

 二ィ、とかナァとか鳴いて、オルがわたしの足首に顔をこすりつけた。しゃがんで、オルを撫でた。雨に濡れて少ししっとりしていたけど、白い毛はふわっとしていて温かくて、黒豆みたいなお目目が細くなっている。

 ――――オルは、ここにいてくれるよね?



 朝比奈くんは、打ちひしがれたように目を伏せた。



「……ほんとうに、すみません」


「朝比奈くんは、謝ったらそれでおわるつもり?」



 自分でもビックリするくらい冷たい声が出た。わたしがしゃがんだ分、傘を傾けたから、彼の左腕のシャツはいまや完全に濡れていた。



「えっ……。それは、どういう、」



 朝比奈くんのこと知ってたって言ったよね、とわたしは言った。



「織が朝比奈くんへ教科書を返しに行って事故に遭ったって、わたしは知ってる」



 朝比奈くんは呼吸も忘れたみたいに、その場に凍りついた。








 ふわふわとあたたかい場所にいて、ああ、これ夢や、とわかった。

 学校から織とひとつの傘に入って家に帰って来たときのことや。いつまでこんなことできるかなって、いつまで仲よくいられるんかなってちょっと不安になってしまってときのこと。そうそう、ツインソウルってこのとき言ってたんよね……。



「理緒ちゃん、ツインソウルって知ってる?」


 なにそれ。なんかおんなじような言葉聞いたことある。……ソウルメイト……?


「まあオレもそのふたつの区別は、よう知らんねんけどな」


 知らんねんや。


「うん。せやけどな、ひとつの魂がこの世に生まれてくるときにふたつに別れたっていう設定で」


 設定なんや。


「むずかしいことはよう知らんわ。でもな。一心同体の関係で、たとえば離れたところにいても、相手が嬉しかったら嬉しい、悲しかったら悲しいって感情が、自分の胸に飛び込んでくるんやって」


 なんやえらいスピリチュアルやな。


「すっごい胡散臭い、みたいな顔したはるなあ、理緒ちゃん」


 織がいきなりそんな話してどないしたんかと思うて。


「いつまでも一緒にいられるかはわからんけど、オレと理緒ちゃんがそうなんやったら、お互いの気持ちは離れててもわかるんとちがうかな」


 “そう”って?


「理緒ちゃんとオレが、ツインソウルやったらってこと」


 そんなん信じる?


「ふたりが信じてたら、そうなるんちゃう?」




 ――――――そう、このとき織は気持ちが沈んでたわたしを慰めてくれた。

 でもわたし、そのあと身も蓋もないこと言うたんやわ……。

 でも、どっちかが死んだらどうするん。って。




 いつの間にか夢の場面が変わってた。今度は白猫のオルが、スッと佇んでた。首をちょっと傾けてポーズをとってる。


「ヒナのこと、怒らんといてあげて」と織の声がした。


 ――――怒ってへんよ。勝手に決着つけようとしたことに腹が立ってるだけ。事故のことは関係ないもん。


「……うん、理緒ちゃん、ごめんな……」


 なんで謝るん?


「先に死んだから」


 夢のなかで冗談言うんやめて。笑えへん。

 うん、と織は微笑んだ。とっても悲しそうだった。


 ――――なんでそんな顔してるん……?



「……理緒ちゃん。理緒ちゃんがオレに逢いたいと思ってくれはったときに、きっと逢えると思う」


 どういう意味?


「理緒ちゃんの隣じゃなくても、そばじゃなくても、きみの近くにいるよ。オレは理緒ちゃんのことが好きやから。ずっと、きみを想ってるよ」



 白猫が、ナァと鳴いてシッポを振った。

 織っ!! と絶叫して、わたしは目が覚めた。







【三】


 キン、というバットにボールが当たる音や、部員たちのかけ声がグラウンドに響く。ピッチャーが冗談の延長で、内野手にサインらしき合図を送っていて、他の内野手もそれに応えている。今日は朝から薄曇りだったけど、夕方の今はかすかに陽が差していた。一階の美術室からはグラウンドが見える。でも今日は外に出てクロッキーをしていた。

 帽子をあげて腕で汗をぬぐう仕草、地面を蹴ってジャンプ、ボールがグローブに吸い込まれる。白いユニフォームの半袖がはためく。脚と、腕の筋肉のしなやかな伸び。スケッチブックの用紙いっぱいに、ひとつひとつの動きを鉛筆が追っていく。

 コロコロ、と座り込んでいる足元に白い球が転がってきた。ああ、タイムリミット、と近づいてくるスパイクの足音に観念した。ザリザリという足音は、わたしの一メートル斜めまえくらいで静かに止まった。そのひとはボールを拾わずに、黒色の帽子をとって頭を下げた。

 約二週間、学年が違うとはいえわたしはよく逃げ切ったんじゃないだろうか。そもそも追われてなんかいなかったけど。あの日、朝比奈くんに預けたままだった傘は翌日、家の玄関の前に返されていた。

 わたしが隠れるように行動していただけだったけど、でも一、二度目撃した移動教室に向かう彼や、下校するときの彼は、だれかを探しているみたいに、どこか不安げだった。

 そして、あの夢をみた日を境に雨が降ってもオルは姿を見せなかった。なんとなく、なんとなくだけどもう会えない気がしていた。




「今日は野球場での練習じゃないんやね」


「施設点検があるとかで、明後日までは使えないんです」



 わたしの問いかけに朝比奈くんは少し驚いたようだったけど、戸惑うでもなく答えてくれた。専用グラウンドではないけど、うちの野球部がおもに練習するのは、ここから徒歩5分のあの野球場だった。わたしの家の窓から朝比奈くんと目が合ってからは、なるべく気づかれないように行動していたつもりだった。お葬式のときは、わたしは朝比奈くんを朝比奈くんとは知らなかったし、彼もわたしを認識していないと思っていた。でも彼はどうしてかわたしを知っていたし、目立たないようにしたところで意味はなかったようだ…………あれ? 

 そういえば、なんでわたしが()()()織を描いてるって知ってはったんやろう? わたしが美術部に入ったのは高校生になってからだし、朝比奈くんは学年がひとつ下なのに、どういうことだろう?

 それに、この間初めて口を利いたときにずっとわたしを見ていたと言っていた。それって、いつから?

 ひとりで静かに混乱していたら、「オレは卑怯でした」と朝比奈くんがぽつりと言った。



「オレは、理緒さんがオレのことに気づいてることも、野球部の練習を見て篠山を絵に描いてることも知ってました。あいつの……、篠山の事故はオレのせいです。でもそれをいつまでも言い出せなくて、せめて代わりに花を……って」



 朝比奈くんは片手に帽子を握りしめてうつむいていた。カン、と乾いた音が響いて「おーっ、いったいった」と笑み混じりにはしゃぐ野球部員たちの声が届いた。



「朝比奈くん……」


「……はい」


「わたしのこと、いつから知ってはったん?」


「えっ?」


「この間は頭が混乱していてそこまで思い至らなかったけど、朝比奈くんがわたしを知ったのって、織のお葬式? そうやったとしても、なんでわたしが織の絵を描いてることを知ってる()()なん? わたしが絵を描き出したのは、高校に入ってからやけど」


「…………っ!」



 朝比奈くんは急に身を硬くして青ざめた。いやそれは、とか、なんで今に限って、とか口の中でもごもご言っている。…………怪しい。

 わたしが不審がっていると、「おーい朝比奈ぁ。なにしてるん? (はよ)う戻ってこい」とグランドから彼を呼び戻す声がした。肩越しにそれにふり返った朝比奈くんは、視線を行ったり来たりさせた。



「朝比奈くん?」


「あ、……うっ……」



 さっきまでの落ち着きはどこへやら、朝比奈くんはこめかみから汗を吹き出し、今にも気絶そうだ。でも突然、なにかを決意したように、キュッと眉をよせて大きく息を吸い、




「…………っ、ごめんなさい!! ずっとあなたが好きでしたっ!!」




 と、大声で叫んだ。








 そのあとの騒ぎを思い返して、わたしは美術室の机に突っ伏していた。隣では、朝比奈くんが帽子をまだもったまま文字通り右往左往している。


「……絶対うわさになるよね、これ……」と、わたしの吐いた息は重い。


「こ、こんなことを言うつもりでは……」と、朝比奈くんは落ち込みが激しい。


 朝比奈くんの盛大な公開告白は、グラウンドに響き渡った。一瞬で静まり返ったその場は、あとがもう悲惨だった。野球部員たちはもちろん、他の数人の運動部員も交じってお祭りみたいになった。棒立ちになっていたわたしは、なんとか我に返って、朝比奈くんを美術室に引っ張っていった。その最中も、外野の煩さに気が遠くなった。もうアカン、一生の不覚。と、スケッチブックも机に放りだして、教室のカーテンも窓もドアも閉めて、かれこれ20分くらい経った。朝比奈くんは泣きそうだった。いや、泣きたいのはわたしだよ……。



「し、篠山さん、すみませ――――」


「もう謝らんといて」



 謝ろうとする彼を、()ねつけた。とたんに身体を縮めるようにした朝比奈くんは、青菜に塩って感じだった。今週、国語の教科書で読んだ部分に載ってたよねとどうでもいいことを考える。

 わたしが突っ伏している間、毒を食らわば皿まで……といった心境だったのかはともかく、彼はしゃべり倒した。朝比奈くんによれば、わたしを初めて見たのは彼が中学二年生になったばかりの移動教室の途中のことで、その数日後に織と昇降口で話しているところをまた見かけたそうだ。織とわたしが二人で一つの傘に入って帰っていくのに、とても衝撃を受けて、彼がわたしに一目ぼれ的なことをしたらしいと悟ったとのこと。わたしとの接点をなんとかもちたくて、織に協力してもらおうと必死だったこと。わたしが通う高校に、織と合格した矢先、織が事故で亡くなくなったこと。だから――これはこの間も聞いたけど――、彼のできる範囲でわたしを観察……いや、見ていたらしいこと。



「……なんでわたしが織を描いてるなんて思ったん」


 まだ机に突っ伏したまま、わたしはつぶやいた。


「……高校に入ってから、理……、篠山さんが野球部をスケッチしてはるのを何回も見てきたし、今年、願書を出しに来たときもグラウンドにいる篠山さんを偶然……。あと、去年の文化祭の絵も見てきっとそうなんやろうなと思ったんです。あの絵は、篠山ですよね……?」


「えっ!? 去年の文化祭って、斎南(うち)の文化祭!? 来たん!?」


「は、はい……」



 わたしはガバッと身体を起こして、朝比奈くんの返事を聞いてまた机へ伏せた。彼が言ったのは、去年十月の文化祭で展示したあの絵のことだ。野球のユニフォームを着た男の子の絵。まさか文化祭に来てたなんて……。


「軽いストーカーよね」


「ヤバい自覚はあります……」


 いま、頭のなかが大渋滞を起こしてしんどい。織のアホ……と独りごちた。協力を頼まれてたって、なんで教えてくれへんかったん。そんなんでツインソウルとか、どれだけバカバカしいん。朝比奈は勝手にわたしをストーキングしてるし、なんなんどいつもこいつも。



「うああぁっ!! もうアホらしいっ!!」


「りっ理緒さん!?」



 わたしは机をバァンと叩いて、ついでに放っていたスケッチブックもベシッと床に投げつけた。興奮して息があがる。



「――――朝比奈くんは勘違いしたはるわ」


「えっ……」


 彼は小さめの目を見開いた。


「勘違いしてる。わたしは織の絵なんか描いてないし、事故は朝比奈くんが起こしたわけじゃない」


「えっ? いや、でも」


「文化祭のあの絵が織やなんて、だれかに聞いた?」


「いや、誰からも……」


「じゃあ、わたしが描いてないっていったら描いてない」


「いや、でもっ!」


「でも何?」


「あのユニフォーム着たのは、だれがモデルやったんです? あれは、あいつですよね!? 学校のグラウンドでも野球場でも野球部を描いて、あの絵が織じゃないなんて、じゃあなんであの絵を描いたんですか?」


 朝比奈くんは必死だった。


「……なんで朝比奈くんがそんな必死なん」


「それは……! それは、理緒さんはいつも誰かを探してるみたいに、さみしそうやったから……! これが篠山やったら、少しは理緒さんの気持ちが楽になってるんかもって、オレが思いたかったんです。理緒さんはもう謝るなって言ったけど、オレはやっぱり、自分のせいやって、許せなくて……」


「だから! それ!」


 朝比奈くんにビシッと指を突きつけた。


「この間も思ったけど、今まで黙ってきたくせに勝手に決着つけようとして、わたしは、許すも許さんもない。わたしは、まだ織を――――」


 ぽろ、と涙が零れ出た。朝比奈くんは仰天したらしく、呆然とわたしを凝視したまままったく動かなくなった。


「まだ織を、()くしてない…………」



 すぐ会えるよと、あの日、織が言ったから。






【四】


 息を引きとる直前、もうほとんど意識がない状態だったけど、病院に駆けつけたわたしに織はそう言った。現実じゃなくて、夢のなかにいるみたいな景色だった。お母さんも、お父さんも顔色が悪くて、なんだか遠くて。織は何度呼んでもそれ以上はもう応えてくれなくて、あまりにも悲しいのに、どうしてだか胸があたたかかった。心が引き裂かれるみたいに泣いたのに、お別れとは思えなかった。だから、高校生になった織がいないなら、それを創り出せばいいと事故から間もないときに考えついた。それが絵だった。でもぜんぜん簡単じゃなかった。スケッチを練習したら、きっと織を描けるようになると信じていたのに。


「あれは、織じゃないよ……」


「――――――」


「わたしは、描けなかった…………」






 わたしは涙をぬぐって、閉めていたカーテンと教室の窓とドアを開けた。風がサアッと入ってきて、雲の間から差した夕陽に、練習に戻ったらしい野球部員たちが照らされていた。


 

「スケッチってね、被写体――モデルをじっくり観察して描くんよ。わたしが今描いてるのは――、してるのはクロッキー。クロッキーは短時間で細かいところにこだわらずにサッと描くものなんよ。わたしは両方やって初めてその違いに気づいた」


 人物の骨格や動きを捉えて上達を図るために、顧問の先生からクロッキーもやりなさいと言われた。一ヶ月間集中してクロッキーに取り組んだあと、人物デッサンに戻った。そこで、わたしは打ちのめされた。


 ――――――織のデッサンなんか、できない。


 中学校の行事での写真や、家族旅行での織を写したものはあった。でも、それは成長した織ではなく過去の織だ。顎の線、髪型、背丈、骨格、筋肉のつきかた、そんなものをどうやって細かく観察して描けばいいの? 未来の弟を、わたしは知らない。でも絶対にできると思って、野球のユニフォームを着た男の子を描いた。男の子の、後ろ姿を。



「あの絵って、グローブをもって、だれかと肩を叩き合ってる後ろ姿やったでしょう? なんとなく織に似せたけど、未来の織なんてどうやっても描けへんかった……」


「……オレは、てっきりあいつかと……」


 うしろに立つ朝比奈くんをふりかえった。


「家族の横顔の輪郭なんて覚えてる? 写真って、いつも前を向いてるやろう?」



 そう、写真は参考にならなかった。顔の正面が描けないなら後ろ姿にして、そこから覗く横顔だけでも織の輪郭に似せようとした。でもわからなかった。それまでまともに弟を描いたことなどないわたしに、まったくの素人にそんなことはできるわけがなかった。そして描けば描くほど、他人と織の違いが明らかになるだけだった。



「でも、じゃあ……まだ野球部員を描いてるのは、なんでなんですか?」


 朝比奈くんが泣きそうな顔をしていた。わたしもきっと、あまりにも悲しくて、壊れ物みたいな記憶にふれるのが怖かった。大切にしていたはずのものは、きっとずっと置き去りになっていた。


「…………逢えるかもしれへんから。ボールを拾って投げるひとが、織かもしれへんから――――――」


 ふたりが信じていたら逢える。その織の言葉を今度はわたしが信じていたい。離れていても、わたしが願えば、織も願ってくれる。織とわたしが、同じ気持ちでいるなら。

 またグランドのほうへ向いて、まっすぐ見たその先に、雲の間から差した夕陽がふわっとさえぎられた。白いユニフォーム、ううん、ネコ……?


「………オル………?」


「――――理緒さん」


 手のなかでぐしゃぐしゃになっていった帽子を被って、朝比奈くんがわたしの隣に立って、わたしが床に投げたスケッチブックを渡してくれた。帽子を被ると、朝比奈くんは凛々しく見えて、なんだか少し切なくなった。


「今度の日曜日は試合やけど、試合が終わったら菊をもっていきます」


 日曜日は織の月命日だ。


「……ありがとう、(ちか)くん。晴れるといいね」


 真剣にわたしを見つめる彼の目を見返して、わたしは微笑んだ。 







 その後――――――。

 日曜日の試合にわたしが来たことに動転した朝比奈くんが、ミスを連発し、七回表でコールド負けになったり。

 わたしが織と同じく動物好きなことを織から聞いていた朝比奈くんが、動物が苦手なのを克服するというよくわからない情熱を抱いていたことを知って、わたしがドン引きしたり。そのことで落ち込んだ朝比奈くんが、ネコを飼うとさらに訳のわからない宣言をしたり。

 そして、あの白猫は――――、オルは――――――。



 きっと、また逢えるよね。そうだよね、織――――。


 






【終】


お読みくださいまして、ありがとうございます。大切なひとを亡くし、一年ほどでこのような心境に至ることは稀なことでしょう。理緒がこれから自分の感情を少しずつ見出し、回復するという余地を残しここで作品を終えたいと思います。最後までお付き合いくださいましたことを重ねて感謝申し上げます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今回は、とても爽やかな作風で、優しい余韻の残るところが良かったです。 [一言] 人がひとり死んでいるので、物語の奥行きとしては、全然爽やかじゃないはずなのに……さすがもぃもぃさん^^ 絵…
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