ビリヤードのキューは突く物です
『お前か? クリームって奴は?』
そういきなり声を掛けられた。私は、声を掛けてきた奴を見る。
会った事は無い顔だな……
「うん? 誰? と言うか人違いしてますよ? 私は、そのクリームとか言う人ではありません」
『うるせ~! 誤魔化しても無駄だ』
この人は、何を言ってるのだろうか? 違うから違うと言っただけなのに、シ○ナーでも吸いすぎて、脳ミソ溶けちゃったのかしら?
「いや……うるせーと言われても、違うから違うって言ってるだけで……」
段々と私も、このチンパンジーよりもIQの低そうな男に、イライラしてきた。
「なぁ、お前、木村拓哉か?」
『あぁん? 俺が木村拓哉に見えるのかよ、違うに決まってるだろ?』
お~良かった、まだ日本猿並にまでは、脳ミソも退化してなさそうだ。
「だよね? 違うから違うって今言ったんだよね? じゃ私もその、クリーム? って奴と違うから違うって言ったんだけど?」
チンパンジーには、難しい日本語だったのか、理解出来て無さそうな顔をしている。
そもそもだ、そのクリームってヤカラは、今、コンビニにタバコを買いに行ってる。後、少々待ってれば会えると思うが、わざわざそんな事は教えてやらない。
『うるせーお前、黒の○○(車種)に乗って来ただろ?』
そうですね。クリームの乗ってる黒の車の助手席に乗って、ここに来ました。
「あ~うんうん、よく知ってるね」
あっここで、ちょっと説明を。私は今日、クリームと一緒に、お隣の市にある、ビリヤード場に遊びに来てます。
そのビリヤード場は、カラオケも一緒になってるお店で、クリームとカラオケをしに来たのだが、生憎と部屋が埋まっており、空くまでビリヤードでもするか。と、ビリヤードしてたら、声を掛けられた次第です。
『やっぱりな』
何が、やっぱりなだよ(笑)お前は、友達の車に同乗する事もある。って事ぐらいにも、頭が回らないのか?
「日本中に、黒の○○が何台走ってると思ってんだよ? まぁとにかく、私は、お前が探してるクリームとか言う、足の臭い男とは別人だから、分かったらどっか公園の木にでも登って、バナナでも食ってろよ」
『てめー俺の事バカにしてるのかよ!』
「そうだよ、バカにしてるの、だってお前、バカじゃん? 別人だって言ってるのに、信じてくれないし、動物園に居る、ゴリラやオラウータンより頭悪いだろ? チンパンジー並だろ? バナナ食ってろ、リンゴの方が、好きだったか?」
『てめーの態度次第では、話と金で、許してやろうと思ってたんだg……』
もう、本当、鬱陶しすぎて、ついつい、手に持ってたビリヤードのキューを、振りかぶって、そいつの頭に振り降ろしちゃったじゃん。
ベキッ! って音と、メキョ! って音が合体したような音がして、頭を抱えて、男がうずくまる。
そこに、もっと早くさっさと帰って来てたら、こんな事になって無かった、私が勘違いされた本人が、帰ってきた。
『あれ? もふ、何してんの?』
「いや……何かこの人? 私の事をクリームと間違えてて」
「私、ちゃんと何度も言ったんだよ、私はクリームとか言う【足の臭い】男とは別人ですって」
『誰の足が臭いんだよ!(笑)』
お前だよお前! お前……自分の足の裏が兵器並に臭いの自覚してないのかよ? と言うか……悪口だけは、ちゃんと聞こえるんだな(笑)
『で? これ誰?』
クリームは、私が手に持つ、折れたキューを見て、やらかしたんだなぁと理解した顔で聞いてきた。
「私に分かる訳無いだろ? と言うかお前の知り合いじゃ無いのか? クリームクリーム言ってたし」
どうやら、クリームも知らないらしい。取りあえず本人に聞いてみよう。と言う事になったのだが、当の本人が、床で寝てらっしゃる。こんな所で寝たら風邪引いちゃいそうだ。寝るなら木の上に帰らないと。
そうして、私とクリームは、男を二人がかりで、引き摺って店を出た。
店を出るときに、ちゃんと、その男の財布から、諭吉を3枚抜いて、お店の人に。
「これ、ゲーム代と折れちゃった(折っちゃった)キューのお金ね」
と渡しといた。
『うわ! 極悪人を見ちゃったよ俺……自分で折ったのに、他人の金で払ってるよ、この人……悪魔か?』
「うるせーバカ! コイツが私に絡んで来なきゃ、キューも折れなかったし、そもそも、お前がコンビニからさっさと戻ってくりゃ良かったんだよ! どうせ、風俗情報誌でも立ち読みしてたんだろ!」
そして男を引き摺りながら、外に出る為の階段の前まで来た。
『これ、どうする? ここから転がり落とす?』
コイツ……怖い……コイツの方が、よっぽど悪魔みたいな事を真顔で言ってるじゃん。
まぁ、何とかバカを説得して、引き摺って男を外まで運んだ。
建物にもたれ掛けさせた後に、改めて。
「コレ、知らんの? 本当に」
『知らん、見た事も無い』
もう、置いて帰っちゃおうか。なんて意見が、どちらからともなく出始めそうな頃に、男が目を覚ました。
『てめークリーム! よくもやりやがったな! 不意打ちなんかしやがって』
このチンパン君は、何を言ってるのだろう? ケンカなんだから不意打ちも武器も上等! だろ? 勝ちゃいいんだからケンカなんて。
「だから、私はクリームでは無いって」
そう言って、顔を横に立ってる男の方に、クイ、クイと振った。
男は、私の横に立ってる本物のクリームの顔を見て、私にこの男がどうかしたか? と言うような顔してくる。
『誰だコイツ?』
男に問われた私は、クリームを紹介してあげる事にした。
「こちらに、立っているのは、JKのパンツとおっぱいを、いやらしい目で凝視するのが大好きな、我が街最強の男、クリーム様だ! ビビったか? ビビったろ? ビビったのなら、クリーム様の1の子分である私に、財布の中身を全部、差し出せ!」
『もふ……お前絡むと、何で毎回コントになるんだろうな?』
そんな物は私が生まれ持ったサガだ!
クリームのツッコミを頭に受けて、次いでに誰がJKのパンツが好きなんだよ! と怒られる。
解せぬ! パンツ大好きだろ! お前。
で、まぁ何だかんだと、話を聞いてみると、男の後輩の彼女が浮気をしたらしく、その相手がクリームの名前を騙っていた。
と言う、まぁよくあるようなオチでした。
「いや~叩いてごめんね、痛かった?(笑)」
『痛かったに決まってるだろ? 俺も話を聞かずに絡んで、ごめんな』
等と、ある程度は、打ち解けた。
それじゃ帰るわ。って事で、私とクリームは、クリームの車に乗り込む。そして、走り出そうとしているクリームを止めると、窓を開けて。
「あっ折れたキューの代金3万円、お前の財布からちゃんと払っておいたから、それじゃ、バイバーイ」
そう言って、家路へと着いた。