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ダークサイド 真実は闇の中  作者: 森 彗子
第7章
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闇からの帰還 1

「あなた達は、自分の死を受け入れていますか?」


 それは死者に出会ったら必ず聞かねばならない質問らしい。

 ビョンデットに教えて貰ったやり方だから、世間一般的かどうかはさておき。


「受け入れました」


「受け入れています」


 二人の男女が同時に答えた。


「今から、あなた達あてに書かれた手紙を読みます。

 これを書いたのは美貴です」


 夫婦は支え合うように手を重ね合わせ、泣きそうな顔をして私を見つめた。



 *



詩織さんへ


 詩織さんは私にとっても妹達にとっても最高のお母さんです。だけど、時々この世で一番不幸そうな顔をしていました。もしかすると、その原因はお母さんの死の秘密にある気がしていました。ずっと疑っていたことを今はとても後悔しています。

 誰も悪くないと私は思っています。だから、どうか安らかに天国へと旅立って欲しい。心から感謝しています。妹達のことは私が詩織さんの分も愛情いっぱい注いでいくので、どうか心配しないで下さい。天国から見守っていて下さい。

 それと、母親でもないくせにって言葉を撤回したい。詩織さんがお母さんになってくれたから、私は毎日がすごく幸せだったと今ならすべてわかる気がしています。ごめんなさい。ありがとう。



お父さん


 ずっと一緒にいれなくてごめんって言ってくれたとき、ずっとそう思って苦しかったんだと気付きました。わがままいっぱい聞いてくれてありがとう。こうなってすごく寂しいけど、私はちゃんと生きていくから、お母さんや詩織さんと天国からしっかりと見守っていて下さい。

 まだ小さい茉奈と杏奈のことを守ってあげて下さい。私も出来る限りのことはして、姉妹仲良くがんばって生きていきます。



「これが美貴の気持ちなんだ」


 私からメモを受け取った詩織さんは泣きながら胸に抱いている。美貴のお父さんは微笑みながら詩織さんの肩を抱き寄せた。


「あなた……、私のこと怒ってないの?」


 詩織さんが不安そうな声で聞くと、美貴のお父さんは優しく微笑んで首を振った。


「君が苦しんでいるとき、そばにいてやれなくてすまなかった。

君を心から愛していたはずなのに、俺の方こそ君の支えになることができなかった。


家族を養うために身を粉にして働くことだけしか頭になかった。

追い詰められた君に、殺されて当然だと思う。


だから、君のことを怒ってはいない。


こんなカタチで死ぬなんてまさかとは思ったけど、自分の一生に後悔はない。

でも、娘たちともっと多くの時間を過ごしたかった……。


とても残念だけど、仕方ない。

娘たちが立派に成長するまで、出来る限りのことはしたい」



 私は頷いた。


 二人とも、やっと納得したような顔をしてお辞儀をした。

 すると、光の帯が降りてきて、二人の霊はまるで光に溶けるように消えて行った。



 今度こそ一人になったかと思ったら、もう一人。


 幽かな影として現れたのは、美貴のお母さんだ。



「あなたは自殺したんじゃなかったんだ」



 私の言葉に彼女はうっすらと笑った。



「はい。寿命が尽きたから死にました…… 」



私は死ぬ直前まで、家族を守ろうって考えていました。


でもそれが、私の勝手な独りよがりで詩織さんや美貴を苦しめる結果を招いてしまった……。


彼女を信じて任せていれば、こんなことにはならなかったかもしれません。



死んでから初めて家族の未来を知ったのです。

こうなることも視えましたが、私にはその時点ではもう、どうすることもできませんでした。


詩織さんは妊娠すると、心の奥に押し込んでいた闇が出てきました。


美貴を可愛がろうとする気持ちと、自分自身が母親からネグレクトされた苦しみの板挟みに陥り、日々憔悴して行きました。こんな自分が母親になれるのかと不安に苛まれ、どんなに愛しても愛されることがなかった過去に邪魔されて、美貴との信頼関係を見失ってしまったんです。


傍目では気付かれ難い状態でしたが、実は詩織さん、幾度となく自殺未遂を繰り返していました。


失敗するように働きかけるのは、なかなか大変でした。


私は治療の術がないと告知された癌と向き合い切れず、自殺したいと思ったことがあります。

其のたびに、私の絶望に気付いて励ましてくれたのが詩織さんでした。

彼女は私が消えゆくことを本能的に感じている美貴にも気を配ってくれていた…。

絶対的な信頼を、一方的な気持ちを彼女に委ね過ぎたんです。


だから、彼女の自殺願望に気付いた時

絶対に成功させるものかと意地になって邪魔してやりました……。


私は自分が死んでから今日までずっと責任を感じていました。


子供にとって親は命綱です。

特に美貴には二度も母親を失わせるわけにはいかなかったのです。



そして、その強い思い込みこそがこの悲劇の始まりになってしまったのだと今はとても後悔しています。



思春期になった美貴は、幼い妹の子育てと完璧な家事を追及する詩織さんに遠慮して、以前のように何でも話せる関係性を失っていました。


徐々に詩織さんへの不満を募らせ、苦しい気持ちを吐き出せず抱え込んであの廃墟に足を向けるようになっていきました。


そこでアグネータという悪魔に獲り憑かれてしまった……。


あそこは誰も寄せ付けない錆びれて荒んだ廃墟なのに、美貴は幻視を見て安全で快適な場所だと感じていました。


嫌なことがあると、自然と足が向かい、気付けばどっぷりと悪魔の罠の中に浸っていたんです。


私が生きていればどんなに素敵な母子関係を築けていたかもしれない、と甘い夢を与えられ、詩織さんは私の命を見殺しにして妻の座を奪った悪い女というイメージを受け付けられてしまったのです。


美貴は無言の責めを詩織さんにぶつけ、詩織さんは益々不安定になっていきました。


その異変に気付いた夫は、出張から早く帰ってきたところを殺されてしまった……。

詩織さんを救うには遅すぎたんです。


あの火事で、一家全員が死ぬという恐ろしいシナリオがありました。


私はどうしても止めたかった――――。



子供たちを守れたことだけが、不幸中の幸いです。


美貴の魂を欲していたアグネータは消え、

あの悪魔が関わったことで命を落とした大勢の魂も解放されました。


私のエスオーエスに気付いて対応してくれて、本当にありがとうございました」



 美貴のお母さんは生前の頃のようなきれいな姿でお辞儀をすると、言いたいことを言ってから先ほどの二人と同様に、光の中に消えて行った。





 とりあえず改稿し掲載していますが、後日読み返したあとでまた修正すると思います。

 この物語は「ダークサイド2」にそのまま連結しています。


 また近いうちに「ダークサイド2」をアップしたいと思います。


 ありがとうございました。


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