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ダークサイド 真実は闇の中  作者: 森 彗子
第6章
33/41

初陣 5


「あなたはただ幼くて無抵抗な子供のように怯えていただけだ。

戦い方を知らなかったんだ。


そこに連中は付け込んで来た。


おい!!


そこにいるなら早く出て来い。悪魔め!!」



 詩織さんの背後から黒い大きな翼のようなカタチの影が左右対照に伸びていく。

 俗に言う天使の羽のようでもあるけれど、あくまで影だ。

 実態など存在してはいないのだ。


 そして影は生き物のようにクネクネと動き出したと同時に、詩織さんの左肩から別の頭が生えてきた。

 おできのお化けのようなそれには目鼻口らしきものがある。どこか見覚えのある女の顔だ。


 その顔が突然両目を開いて叫び出した。

 超音波のような甲高い高音が、夜の廃墟に響き渡った。


 そして、その目が私を捕えたと思ったら、今度は口から釘のようなものを吐き出した。


 ドスドスっと鈍い音を立てて釘のような短い矢が壁に突き刺さった。

 これはまるで実態そのものに感じる。

 私は焦りを覚え、化け物のように変身した詩織さんから離れた。



「なんだこりゃ!」



どうなってんの?




どうすんの?





これ。




 ―――私じゃ、やっぱり無理だ……



 こんなの相手に、どうやって……!!



「怯むな!まどか!」




 静かな声がした。


 私は声がする方へ振り返った。



「ビョンデット!」



 白いスーツ姿のビョンデットが部屋に入って来て私の前に立った。



「なんで?お前、無理だって言ってただろ?」


「今は目の前のことに集中しなさい」




 ビョンデットは私に背を向けるように、化け物の前に立ちはだかった。




「醜い!実に醜いですよ!!」


 白目を剥いて気絶しているかのような詩織さんの顔の隣では、肥え太った女の顔がどんどん巨大化している。目つきがまるで地獄の閻魔大王を連想させた。あくまで想像だけど。


 ビョンデットは左手に何やら長くて光輝く棒のようなものを握っていた。

 それを振り上げて横払いすると、信じられないことに強烈な波動が放たれて詩織さんの体を、胴体と下肢を分断した。


「ぎょええぇぇぇぇ――――――」


 聞いたことがない悲鳴が上がり、巨大な顔の女の口から朦々と黒煙が飛び出した。


「逃がさない!!」


 ビョンデットはそう言うと軽く地面を蹴った。


 すると信じられないほどの身軽さで飛び上がり、黒煙に向かって今度は右手の平から白く光る網のようなものを放った。黒煙の動きは鈍り、白い網の中にかき集められて丸い玉のようになって地面にポトリと落ちた。


「あるべき場所に戻れ!」


 あくまで落ち着いた物腰のビョンデットは、白い網の中で蹲っている物体に長く輝く棒を突き立てた。すると脆くなった泥だんごのようにボロボロと崩れて粉々の灰になった。


 よく見ると、ビョンデットの左手はまるで刀身のように鋭く光っていた。

 透明のガラスのような長い剣からは、感じたことがないほどの強烈なエネルギー波が出ている。


 眩し過ぎて、目を細めながら眺めるしかできない。というよりも、今目の前にある光景がまるで現実感がない。


 私は膝待付ひざまづいた姿勢で、呆然と成り行きを見守っていた。



「やっと会えたわね」


 

 異様な事態が収束したかと思えば、今度は別のゲストが姿を現した。


 黒々とした羽を携えた美しい女が立っている。


 黒い光沢のドレスを身に付けたアグネータだ。


 白いスーツに金髪の貴公子のようなビョンデットとはまるで対照的な格好だ。



「あなたをずっと探してたのよ」



 女は甘えたような声で囁いた。


 ビョンデットは眉ひとつ動かすことなく、じっと黒い女と対峙している。



「まだ、こんな古い習慣を捨てずにいたとは呆れましたよ」



 ビョンデットは憎々しいといった声色で、女に凄んだ。


 こんなビョンデットは見たことがない。


 私は固唾を飲んで見守るしかなかった。



「うふふ……。生きる糧を得ることに古いも新しいもないわ。


一族を捨てて自分だけ綺麗な存在になったつもり?」



「魂は帰すべき場所に戻すことが理ことわり。


我々が地上に降りた勇者の魂を搾取することは許されない愚かしい行為だ!」


「おまえがそれを言うの? 


アッハッハッハッハ……おまえが生まれた理由を忘れたの?」


 低い濁声が混じるせいで、アグネータが女じゃないみたいな気がしてくる。


「与えられた使命など私は要らない!


欲しいのは自由だ!!


誰にも何にも縛られない自由を求めて何が悪い?!」


 一生懸命に反論するビョンデットなんて珍し過ぎて、私は呆然とやり取りを見守ることしかできない。

 ビョンデットの綺麗な顔に青筋が視える。


「……嗚呼、可愛そうな子。


自由なんて儚い夢よ?


どんな存在も、自分の意志に関係なく与えられた役割を担い時代を動かしていく。

大いなる意志の力には逆らえないことぐらい嫌でもわかってるでしょ?


その綺麗な顔で、身体で、お前は沢山の悪事を働いてきたじゃないか?


罪が消えるだなんて調子のいいことを考えてるのなら、愚かとしか言いようがないわね」


 アグネータの言い分も筋は通っている気がする。


 だけどビョンデットの犯した罪ってなんだ?


 ビョンデットはやっぱり悪魔だったってことだよな?



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