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07話 見つけた探しもの

「えへへ」

「……」

「えへへへ」

「……」

「えへへへへへぇ」

「……なあ、雫」


 これ以上スルーすることができなくて、俺は雫に声をかけた。


「何をやっているんだ?」

「和人くん分を補充しているんだよ」


 俺に抱きついたまま、雫は無邪気な笑みを浮かべた。


 彼氏彼女の関係になって一日。

 雫は今まで以上に甘えてくるようになった。


 もちろん、それはうれしい。うれしいんだけど……


「なあ……今、授業中なんだけど」


 できれば、時と場所をわきまえてほしい。


「ふーん、そうなんだ」


 私には関係ないと言うように、雫は俺に抱きついたまま離れない。


 他の人は雫が見えないから問題ないけど……

 俺は雫が見えるから、大問題だ。

 愛しい彼女の顔が間近にあって、授業にまったく集中できない。


「頼むから、授業中はおとなしくしてくれないか?」

「おとなしくしているよ?」

「そうじゃなくて、こうやって抱きつくのもやめてくれ、っていう話」

「ええー……」


 この世の終わりが来たような顔をされてしまった。


「和人くんと触れ合えないなんて、寂しいよ……」

「いや、それは、俺もそうだけど……」

「なら、いいよね?」

「でも、節度というものが……」

「いいよね?」

「……好きにしてくれ」

「わーい」


 負けた……男って、女に弱いものなんだな。

 そんなことをつくづく実感した瞬間だった。


「……」


 しかし、触れ合えない、か……


 何気なく雫が口にしたであろう言葉だけど、その言葉は俺の胸に深く響いた。

 雫は幽霊だ。少しの間、実体化できるといっても、基本的に触ることはできない。俺以外の人から認識されることもない。

 それは、とても寂しいことのような気がした。


 手がかりはなくなってしまったけど……

 やっぱり、どうにかして雫を生き返らせてあげたい。そして、人と人が触れ合う温もりに浸らせてあげたい。


 そのために、どうすればいいか?

 俺はノートを取るフリをしながら、そのことについて真剣に考えた。




――――――――――




 とある日の放課後、いつものように資料室にやってきた。


「今日のデートはここ?」

「いや、デートじゃないから」

「えー、そんなぁ……」

「そりゃあ、俺だって雫とデートしたいけど……やっぱり、雫を生き返らせることを優先させないと」

「でも、手がかりはなくなっちゃったよね?」

「そのことなんだけど……」


 今日一日考えて、ふと、ある可能性に気がついた。


 雫の名前は卒業生名簿に載っていなかった。

 でも、休学している生徒、あるいは中途退学者の名簿なら?


 卒業生ばかりに気をとられて、そちらを調べるのを忘れていた。


「……というわけなんだけど、雫はどう思う? 調べてみる価値はあると思わないか?」

「なるほどー、さすが和人くん! 頭いい!」


 賛同を得られたので、さっそく新たな名簿に手をつけた。


 まずは、中途退学者。

 七峰学園はそれなりにいい学園なので、中途退学するような生徒はほとんどいない。

 資料も少なくて、小一時間で全て目を通し終えた。


「……いないな」

「じゃあ、次は休学している生徒を調べてみよう」


 続けて、休学中の生徒の名簿を手に取った。


 ……これで見つからなかったら、どうしよう?


 残された時間は、一週間と少し。

 そうなったら、雫は生き返ることができなくなってしまう。

 例え生き返ることができなくなったとしても、俺は雫とずっと一緒にいるつもりだ。


 でも、できることなら……


「……あ」


ふと、雫が目を丸くした。


「どうした?」

「……これ」

「うん?」


 雫が見ている名簿を借りて目を通した。



『宮ノ下雫』



 名簿には、俺たちの探している名前が記されていた。


「こ、こここ、これ」

「マジであった……」


 動揺する心を鎮めながら、『宮ノ下雫』について書かれた項目を見る。



『宮ノ下雫』

『32期生 ニ年三組』

『4月に事故に遭い入院中』



「確か、俺が35期生だから……時期は一致するな」

「私、事故に遭って入院中……?」


 求めている情報を手に入れたけど、いまいち実感が湧かない。

 本当に、これは正しい情報なんだろうか? もしかしたら、同姓同名の別人じゃないだろうか?


 そんな疑問が次から次に湧いてくる。


「えっと、えっと、えっと……ど、どうしよう?」

「……とりあえず、この『宮ノ下雫』が入院している病院に行ってみよう。それで、全てはっきりするはずだ」

「そ、そうだね」

「それじゃあ……行こう」

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