共通 後悔先にたたず
はるか昔、テアライドという国にとても勇敢な王女がいた。
テアライドにはアデライドという元はひとつだった国がある。
各国王の仲がとても悪く、戦争を繰り返してばかりいた。
そこで女だてらに平を率いた王女レアンディーゼルは、美しいドレスで優雅に戦場を舞い、の敵兵をなぎはらう。
王女の武勇は知れ渡り戦を一時的に停止し、アデライド国王はテアライド国に和平を持ちかけた。
それから一年がたったのち、実質王女が支配するテアライド国へ、双子の王子達がやってくる。
唯一の王の血族であるレアンディーゼルは幼い頃から後継者として鍛練して来た。
一年前戦に出たのは、15歳の誕生日に成人したことと
本来戦に行くはずのテアライドの国王が脚を悪くして、寝たきりになっているからだ。
◆◆◆◆◆誰が勝つのか
「我らの最強の防具と最強の剣で争い、勝ったほうと婚約するそうだ」
「まあ僕はメカケの子だし兄さんが選ばれるのがフツウ、だよねェ」
「そういって横から掠めとる気だろう俺はあんな女いらん、跡継ぎの座はやらないが女はくれてやる」
「そうなの?じゃあいっか兄さんの勝利を祈っておくよ」
◆◆◆◆◆
隣国の王子は兄が黒の鎧、弟が白の鎧だ。
「私を殺したら黒者の勝ち、殺されなかったら白者の勝ちよ」
●私はどちらを応援しよう。
【黒】
【白】
【どちらも負けろ】
なんて思っていたら。
――――――――
100点はいらない必要な点数さえとればいい。
努力はかっこわるいし、めんどうだからやらない。
そうやってやりたくないことは避けてきた。
私は真面目にやろうと思えば、なんでもできたんじゃないかと思う。
人間には誰しも生まれ持った才能がある。
才能が無いなんて、ただの怠惰な怠け者の怠慢。
私はいつか、なにかに本気になれるだろうか。
放課後、学校を出て、近場のコンビニによった帰りだった。
金髪の男が、白の鎧を着て剣を持っている。
まるで絵本に出てくる騎士のような、いかにもな姿。
この現代、道のど真ん中で、こんな格好。
コスプレにしても、夜の道路、場違いすぎではないだろうか。
深傷をおった白い騎士の手を、剣がカラリとすべり落ちた。
それを黒の騎士が、蹴り飛ばした。
そして、私の足元に、剣が転がった。
黒の騎士は私の姿に気がついていないようだ。
白の騎士に、トドメをさそうと、剣を真っ直ぐ地面に振りおろした。
いまなら、別の道を通れば、家に帰れる。
けれど、私は無意識に剣をひろいあげていた。
「ねえ…!」
白の騎士に黒剣が刺さる前に、私が姿を見せた。
黒の騎士は、切っ先ギリギリのところで、剣を彼からよけた。
「ただの小娘が、威勢の良い事だ…」
黒の騎士の低く、重圧感のある声が、執拗に耳へとのこった。
邪魔をされ、腹を立てているのか、あるいは。
「悪く思うな、己の無謀さを悔いろ」
勢いよく振りおろされた剣を、私は左横に避けた。
さっきまで私がいた場所に剣がささり、ヒビが入る。
下手に剣で一度目の攻撃をかわしても。
つばぜり合いでは、男女腕力の差で圧される。
この男は命乞いも聞いてくれなそうなタイプだ。
二度目には殺られていただろう。
相手は演技なんかじゃなく、本気で殺しにかかっていた。
「ほう…」
ただの小娘に、攻撃を避けられた彼の反応は、関心、呆気、そのどれでもない。
「おまえ、剣の鍛練はしたことがないな」
「あたりまえでしょ、あんたらいつの時代の人?」
倒れている白い騎士に
、剣を返す。
私には、初めから戦うつもりはない。
わけのわからない二人の戦いに首を突っ込んだのは、私だけど。
ただその場に居合わせただけで彼等には関係ない。
目の前で殺されかけていた彼を見捨ててられなかった。
「そうか―――」
二度、黒の騎士は剣を振り上げた。
(どうしよう…!剣はもう白騎士に返して――――)
避けられない。反射的にまぶたを瞑る。
痛みはない、おそるおそる開くと、私はきられていなかった。
目の前には剣を受ける白騎士がいた。
「今回は退こう…次も楽しませてもらうぞ」
黒騎士は私達に背を向け、暗い路地へ入り姿を消した。
とんでもないめ'にあった。
ただのコスプレだったらよかった。
あの緊張感が、演技だっていうなら。
この二人は間違いなくハリ●ッドに行ける。
今考えれば、あのまま見なかったことにして、家に帰ればよかったのかもしれない。
――――後悔先にたたずってやつだ。