#08
本日更新(1/2)
俺は本屋で本を探していた。
手に持っているのは子供用の「あいうえお帳」と「算数のドリル」だ。
あれからいろいろと分かったことがある。
俺とリナたちは言葉は通じるものの、それは直接話している時だけだ。
テレビから出る音声とかは全く認識できない。文字も読めない。
どこかで翻訳がかかっているらしいが、まったくの謎だ。
特別なのは俺なのか彼女たちなのか、それも不明だ。だって他に話ができる人がいないしね。でも、まぁ、俺は普通の人だろう。
こちらの世界に来た方法も全く分からないという。
突然、指輪が光って、気が付いたらここで寝ていたのだそうだ。
「魔法だと思います」
リナはそう言い切った。その瞬間、俺のテンションは爆上げだったのだが、彼女は魔法を使ったことも教えられたこともないそうだ。つまり、帰る方法を知らないどころか、俺が魔法を見ることはできない。
積んでいる。いや、来ることができたのだから帰ることもできるはずだ。何も起きなかった昨日までの日常より、グッとその可能性は上がっている。そう思おう。
またリナたちの生い立ちだが、母親と旅の途中で乗合馬車が盗賊に襲われたらしい。そして、ルナと一緒に奴隷商人に売られたそうだ。そして姉妹バラバラの売り先が決まったと知って、逃亡した。母親の行方は分からないらしい。そう、とても淡々と話していた。辛いことがあったせいだろうか。俺の人生にも辛いことや悲しいことはそれなりにあったが、過酷さがくらべものにもならない。だから、きっとそうなのだろう。
俺は本は屋を出ると、今夜と週末の分の食料、薬を買い込んで、家の前まで戻ってきた。
警察車両はない。いやいや、そんなことがあるとは微塵も思ってなかったよ。そもそも俺は何もしていない。何もする気はない。俺の心の中だけの話だとして、発育の良い○○○だとしてもギリギリだ。現代人は昔の人ほど、生き急いではいない。
今、考えなければいけないことは他にある。
俺を何と呼ばせるかだ。リナは「ご主人様」を希望していたが、それはまずい。まず過ぎる。何がって世間体的に。聞かれたらアウトでしょ、アウト。俺が聞いたら血の涙を流しながら通報するね。
やっぱり、お兄ちゃんかな・・・。
実の妹にも呼ばれたことないしね。