#04
大きい子は10歳くらい、小さい子は6歳くらいだろうか。大きい子は手足に痣がある。痛そうだ。ただ、見るからに重症なのは小さい子の方だ。
顔が赤く、息が途切れ、高熱が出ている。左の腕は大きく赤く腫れていた。肘を見ると紫色になっていて膿んでいる。俺もなかったことがあるからわかる。これは傷口からばい菌が入って、抵抗力が落ちて免疫で対処してきれなかったのだろう。
抗生物質の薬を飲めば良いのはわかる。以前に病院から貰った残りがある。残りと言うか飲んでいない。むやみやたらに薬を出す病院はどうかと思うぞ。
話がそれた。飲ませれば良いのだろうが、そもそも子供に飲ませてよいのかわからない。だいたい薬で対応可能なのか。間違った薬を飲ませたところで俺の罪状に変化はない気がするが、どうも躊躇する。
俺は膿を押し出し、洗面器に取ったお湯でその子の傷口を洗いながら逡巡していた。すると、突然、子供の腕がうっすらと光っているように見えた。
「え・・・?」
足の方を見ると、なんか足先から透明になりつつあるんだろうけど。
ナニコレ、まさか消えちゃうんじゃないの・・・。死んじゃうの・・・?
焦った俺は和室から飛び出してリビングに行くと、抗生物質と解熱剤、ペットボトルの水を取りに行った。
「ほら、飲め」
子供の口をあけて薬を入れる。そしてペットボトルから少量の水を入れた。のどが渇いていたのか、無意識にもその小さなのどが、ゴクンと動いた。
後で指摘されたけれど、”消えてしまった方が後腐れなんてない”なんて思いもしなかったよ。
その後は、大きい子の方をリビングに移動して、毛布をかけた。
「ごめんね、ふとんはひと組しかなくて」
そのあと、俺は何度か小さい子のおでこを冷やすタオルを取り換えた後、その横で寝落ちした・・・。だって昨日まで残業残業で睡眠時間が短かったんだよ・・・。零細企業のシステムエンジニア(IT土方)なんで・・・。