#02
突然、部屋全体が”カッ”と一瞬、光った。視界が真っ白になった。意識が飛びそうなブラックアウトする感覚の光る版と言うか、そんな感じだ。
ただ、「目が~目が~」という感じではなく、後遺症はない。
続けで、和室の方からドスンッと言う何か大きなものが落ちてきたような音がした。なお、ここまでがほんの一瞬の出来事。文字にすると長いな。
反射的に音がした和室の方に振り返ったが、和室には特に変化はない。万年床のふとんが敷いてあるのみ。音がした方はその先、押し入れだった気がする。
先日、数年使用しているパソコンの空箱をついに捨てたばかりで、押し入れには崩れるようなものは入っていないはずだが・・・。
家の中で危険なことが起こるなんて思っていない俺は、立ち上がっても目まいがしないことを確認しつつ、押し入れに近づき、襖を開いた。
「えっ・・・」
とたん、ドサッ、ドサッと何かが落ちてきた。落ちてきたそれは、なんと子供だった。
小学校低学年くらいの子供と、幼稚園ぐらいの子供だ。しかもボロボロの服を着ている。服と言うか布と言うかそんな感じのものだ。しかも汚い。ほこりも染みも大量にあって何日同じ服を着たうえで、どこかの山でも転げ落ちてきたみたいだ。
いかにして家の中に侵入したかも謎だが、そもそも日本に”内戦をしている国の孤児”のような子供が存在するのだろうか。いや、それを超えている気もする。日本で、こんなになるまで大人の目から隠れ続けることなんてできるものだろうか。
頭が真っ白になって何も考えていなかった俺が110番しようと携帯をとりに戻ろうとした時、バッと足の裾をつかまれた。それは大きいほうの子供で、俺を見上げると、消え入りそうな声で言った。
「お願いします、見逃してください」
「え・・・」
「お願いします、私が捕まったら・・・。妹は・・・」
そう言って、顔を伏せた。気を失ったらしい。
「び、病院に・・・」
そう思った俺が足を動かそうとすると、グッと重さを感じた。子供が俺のズボンをつかんでいる。こんなにやせ細って軽そうなのに、強い力を感じた。多分、意志の力だ。それにハッとなった俺は少し冷静さを取り戻して考える。
もし119番しないで何かあった場合、俺の責任は非常に大きい。だが、連絡したとして、この状況をどう説明するのか。押し入れからできたと言って信じてもらえるのだろうか。何しろ今の目に見える押し入れの先には穴も開いていない壁しかないというのに。そして、子供の足首には鎖をつけるためのような鉄の輪っかがついているというのに・・・。
「これは通報したら俺が捕まるんじゃないの・・・」
そう思ったとたん冷や汗が流れた。