#01
俺の名前は藤堂高虎。どこぞの偉人と同名だが、共通点は名前しかない。年齢は30歳のお兄さんである。お兄さんであるのだ。
家は築30年のボロアパートの2階である。格安だが和室付きの1LDKである。地方のため安いのだ。試される大地であるゆえに。
試される大地と言ってもここは大都会であり、雪さえ許容できるのであれば住みやすいといってこの上ない。大学卒業後は東京で働いていたこともあるが、あのひとの多さは辟易する。
ちなみに彼女は居ない。多分もうできそうな気がしない。大学生時代はちょっと良い感じになったこともあるが、それも相手はどう思っていたかよくわからない。ただでさえ、人と接するのは苦手だ。仕事的な付き合いだけなら問題ないのだが、自分の心をさらけ出すには抵抗がある。だから、恋人とどころか親友と呼べる友人すらいないのかもしれない。自分の心を開かないヤツに、心を開いてくれる人などいないのだ。だいたい、自分を無防備にさらけ出して傷つけられたらどうするのだ。致命傷だ。致命傷はそれだけで済まない。致命傷は死に直結するのだ。
とはいえ、そこまで現状に不満があるわけではない。ひとりが寂しい夜だって、枕を濡らすことだってあるが、現代は十分にたくさんの娯楽がある。日曜日の憂鬱さは筆舌に尽くし難いが、今日は金曜日。テンションは最高潮である。
そんな俺が何をしているかと言えば、パソコンの前に座って画像の吟味中である。今日のお気に入りの画像を並べるのだ。画面いっぱいに。画面にいっぱいに並べた後は何をするかは割愛しよう。誰だって知りたくはないだろう。
そして、そろそろ今日のベストの状態かなと思ったその時だった。