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剣戟の幻想物語 5 獣たちの晩餐会  作者: やきたらこ
一章~山の悪路~
2/17

1.

 温かい空気に乾いた木の香りがした空間から一歩外に出ると、突き刺すような冷気に包まれる。

 俺――リアン・ディールは木造のとある雑貨屋から外に出たところだった。外では相棒のアイゼン・グリッダ、もう一人の旅の仲間シエル・ラーグナーが新調した服の確認をおこなっていた。

「なんか変じゃない?」

 俺に確認を求めるのはシエル・ラーグナー。

 彼女はいつもの青を基調とした服装の上に茶色い毛皮類のコートを着ていた。濃い紺色の髪はフードの奥に隠れている。足元は軽く動きやすい靴ではなく、防寒を重視した長めのブーツになっていた。得物の短剣はコートの内側の腰に付いているという。

「大丈夫。中々似合ってるよ」

「へへ、ありがと……」

 満面の笑みで返すシエルに俺も自然と笑顔になった。



「お前も様になってるじゃねぇか」

 俺の肩に手を回した青年は金色短髪のアイゼン・グリッダである。

 彼はシエルとは違い、パッと見た感じでは防寒を意識しているように見えなかった。

 いつもの金属鎧といった格好である。

 しかし、どうやら鎧の中で暖かい仕様に代わっているらしかったが、外的にみれば分からない。


 俺の方はというと、基本はシエルと一緒だ。

 防寒の為、黒を基調とした服装の上に茶色い毛皮のコート。足元は茶色いブーツで、足首の辺りがもこもこしていて暖かかった。



「それじゃ、行こうか」

 俺に促される形でシエルとアイゼンも歩き出した。





 帝国領北東部。

 季節も季節である。この地域では雪の降り始めも早く、降雪量も多い。

 俺たちが何故こんな辺境を旅しているのか、その理由は湯治である。

 簡単なことだった。二日前、意識も混濁していたシエルの為に俺とアイゼンで、有名な保養地を訪れようと決めたのだった。


 案の定彼女は大喜びだった。

 しかし、温泉への道は険しい。

 有名な温泉地――エウディアは帝国領北東部に高々と(大陸中央のウィーナ神山には負けるが)そびえる厳乱山げんらんさんを越えた先にある。俺たちは今その厳乱山げんらんさんを登り始めていた。


道順ルートに大きな渓谷がある。落ちたらエウディアまで合流出来ねぇぞ」

 注意を喚起するのは隣を歩くアイゼン。

 その注意を俺たちはしっかりと受け止めた。


「そういえばシエル。体はもう?」

 シエルはニコリと笑って答える。

「もうほとんど大丈夫。たまにダルくて気持ち悪い時があるけど……」

「そうか、無理しなくていいからな……気分悪くなったら言いなよ」

「うん、ありがとうね」

 シエルは笑顔で返してくれた。

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