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異世界戦線カプリチヲ  作者: 天沙羅
9/10

ロストアーミーイズノットデッド9

「と、なると、ますます話がややこしくなってきたな……」

 伊織はゴールドの顔を見て口を開いた。

「まずお前が暗殺されかけたマリーの姉と……」

「ああ。そして次にあの港は殆ど元老院派に占領されている」

 ゴールドはやれやれといった様子で立ち上がった。

「ここで私が輸送船を止めていたがそれも無駄だったようだしな」

 ガレットが手に持つ新聞。セントラルの戦闘が激化したとの内容が一面に大々的に取り上げられている。

「それにしてもどうやってこんな量の武器を……」

 その場にいる誰もが同じことを考えていた。

「もしかして別の港から出港したんじゃ……」

 楓の考えは即座にゴールドによって否定された。

「いや、それはありえない。私の師匠とその傘下の船で全ての港をチェックしているからな」

「お前の師匠ってそんなに凄いのか?」

「ああ、海の上ではあの方の右に出る者はいないからな」

 ゴールドの口調はやけに自慢げだった。そこに急に割り込んできたのはガレットだった。

「そんなことより、アタシの部下はどうしてくれるの?!」

「どうするもなにも、あのまま監獄行きに決まってるじゃない」

 楓の冷たい言葉にガレットの目が潤む。

「しかしながら」

 重々しい様子でゴールドが口を開いた。

「もとはと言えば私に間違えられたのがそもそもの発端と考えると、やはり私にも非があるような……」

「そんな、わざわざゴールド様が行かなくても……」

 楓の悪い予感は当たっていた。既に意を決していた様子でゴールドは小さく「行こう」と呟いた。

「四人で街を落とす、か……」

 無論、戦闘狂という一面のある伊織が止める訳もなく、むしろついていく様にしか見えない。

「私も戦力に入ってるわけね……」

 楓も諦めがついたようだ。

「武器の輸出港を占領してしまえば結局は国の為になる。それに敵の敵は味方だろう?」

 ゴールドの補足を聞き、楓は小さく頷く。気乗りしない海賊救助、楓のキャリア上最初にして恐らく最後の法律無視、汚職、それに対する自己正当化をなんとか済ませる。

「そうですね、確かにこれは国の為……」

「じゃっ、早速行こう!」

 ガレットの言葉と共にセントクロネッタ号は港に向かって猛進し始めた。水しぶきをあげて進む船、その船に伊織は一つの疑問を抱いていた。

「そういえばこの船、何で動いてるんだ?」

「そんなことも知らないの?」

 ガレットは驚きの表情を浮かべる。

「たいていこのサイズの船は後部に付いてるプロペラを魔力で回して進んでるの」

「魔力ってことは、お前が動かしてるのか?」

「当たり前じゃん!船に魔力を注ぎ込めるのは船長だけの特権よ!」

 そう言ってガレットは眼帯を外した。少女の瞳には複雑な紋章が刻まれている。

「ほら、契約の証」

「こんなちっちゃいのによく従わせたわね。どれ、スペックは……」

 楓がガレットの目を覗き込む。紋章を見た楓は言葉を失った。

「楓、どうしたの?」

 ゴールドもガレットの目を見た。ゴールドは殆ど聞こえないような声で「……箱舟」と呟いた。

「はこぶね?なんだそれ?」

「始まりの人が世界樹で作った船。高い耐久に自己回復能力、更には浮遊までできる代物よ」

 楓の目は虚ろなままだ。

「この世に四つしかない船、お父様ですら末席のしか持ってなかったわ……」

 ゴールドも動揺を隠せないでいる。

「そんなのよくわかんないけど……飛ぶよ!」

 ガレットが手を挙げると船が傾き、滑るように宙に浮きはじめた。セントクロネッタ号は空中で更に加速し、アルダンテの街の上をくるくると回っている。

「それでは私と伊織で海賊達を救出する。合図を出したら迎えに来てくれ」

 ゴールドは伊織を脇に抱えると、船を飛び降りた。まるで羽になったかのように二人はゆっくりと落ちていく。

「これも魔法なのか?」

「何を当たり前なこと、月種なのにそんなことも……」

「月種じゃないって、これだって昔は黒かったんだぜ」

 ゴールドは疑いの目を向ける。事実、白髪を見れば月種、という考えはこの世界じゅうに円満している為、ゴールドがそう思うのも当然である。

「お前等俺の髪見て月種って言うけどさ、月種ってどんな奴なんだ?」

「月種か……」

 ゴールドは手を口元に当てて暫く考えた後、その手を下ろした。

「一説には創成期に来た侵略者の末裔だとか、また一説には原種の進化した姿だとか……ただ一つ言えることは原種や原種と他生物の混合種より遥かに優れた魔力を持っているということだ」

「なるほど、なら尚更俺は月種ではないな」

 伊織は吸魔石のネックレスを首から外してゴールドに見せた。

「どうやら俺はコイツが無ければ魔法の耐性が全く無いらしいしな」

「なんだ、そんなものを着けていたのか。よし、ここを無事に抜けたらお前に魔法操作を教えてやろう」

 ちょうどゴールドが言い終わった時に、二人は路上に着地した。

「では行くぞ、黒幕は恐らくあの塔だ」

 ゴールドが指差す先には街の中央の巨大な塔、天にも届きそうな煉瓦造りの塔は二人を待ち構えているようにすら感じられる。二人は巨悪の潜む商人の巣窟に向かって駆け出した。



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