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異世界戦線カプリチヲ  作者: 天沙羅
8/10

ロストアーミーイズノットデッド8

「これがゲート……」

 桔平の身長の三倍以上ある巨大な門。東京の地下にこのような物があるとは誰も思わないだろう。

「元々はもう少し北のほうにあった物なんですが、四百年程前にこちらに移されましてね……」

 グローリーがゲートを撫でながら語る。

「今では使われることも殆ど無く、年に数回、使者が手紙を持ってくるくらいです」

 金属製のゲートは所々錆ついており、その黒い汚れが桔平に長い時代の流れを感じさせる。

「忘れられゆくもの、か……」

「グローリーさん、準備終わりました」

 感慨にふける桔平の耳に聞き慣れない声が聞こえる。振り向くと桔平と同じくらいの歳の、つなぎを来た金髪セミショートの少女が立っていた。桔平が小さく会釈をすると、少女も同じように小さく会釈をした。

「この娘はメロ、あっちの世界から来てもらった私の助手で、優秀なエンジニアだ」

「僕の紹介なんていいですから、早く行きましょう」

 グローリーはやれやれといった様子でゲートに手をかざす。

「これをやるとだいぶ小さくなってしまうからね、もう少し今の姿を楽しみたかったんだが……」

 ゲートは低い唸り声を上げながら開いていく。その先には何処までも延びた真っ白な道が続いている。

「さあ、行きましょうか」

 聞き慣れない子供の声、桔平が振り向くとそこにはマリーと同じ位の大きさの、グローリーの格好をした少年が立っていた。

「だから嫌なんですよ、なんと言うか……ダンディズムが削がれると言うか……」

 グローリーは悲しそうな表情で白い一本道を進んでいく。

「さっ、行きましょう」

 桔平、マリー、メロも後に続く。数分程歩いた所で一人の老婆が机に座っているのが見えてきた。

「あっ、ダリアさん!」

 マリーが老婆に駆け寄っていくと、老婆はしゃがんでマリーを抱きしめた。

「お元気そうでなによりです、マリー様」

 ダリアはグローリー達に気づくと立ち上がり、一例した。

「行くときは私でしたが、今回は貴方が小さくなってしまいましたね」

「やれやれですよ」

 いるだけで周りを和やかにする、そんな不思議な魅力を桔平はダリアに感じていた。

「それにしてもグローリーさん、何故この時期に?」

「あちらの世界にも暗殺者が来た。それもウィード盗賊団のリリウムとルベルムだ」

「まあ、どうやって……」

「確かにわからん、が、今はそれ以上にマリー様が襲われた事実の方が大切だ。そちらのほうで何か変わったことは?」

「変わったことと言えば、元老院派が紛争を引き起こしたことくらいかと……」

「何!?その件に関する報告は?」

「五ヶ月程前に使者を送ったはずですが……」

 その時だった。メロが突然ポケットからナイフを取り出しマリーの首に押し当てた。

「何をしている、お前!」

 メロは怪しい微笑を浮かべて笑いだした。

「いやー、ちょろいちょろい。アタシ一人で十分だったじゃないの」

 メロの顔は変形し始めて、赤髪のきつい顔の女になった。

「貴様、ウィード盗賊団の……」

「あら、ジジイにしては記憶力がいいわね。そう、ウィード盗賊団ナンバー4のドーシャよ」

 ドーシャは一歩ずつグローリー達から離れていく。

「この娘を人質にすれば国王軍も降参するしかない。そうでしょ、元隊長サン?」

 グローリーの表情は渋る一方だ。

「それともー、今ここで殺しちゃう?」

 マリーの喉元に一筋の血が流れる。今にも泣きそうな顔で震えるマリーとそれを見て喜ぶドーシャ。グローリーの我慢が限界に達した時、五人より遥か後方、ゲートの外から一筋の光線が注した。光はドーシャの右肩を焦がし、苦痛に顔を歪めるドーシャの腕元からマリーが逃げ出した。

「まったく、僕のふりするならもうちょっと賢くなきゃ」

 作業用のつなぎにセミショートの金髪、本物のメロが駆け寄って来た。

「お前……何故出られた?!」

「君の封印結構簡単だったよ。まっ、解くのにすっごい時間かかっちゃったけどね」

 ドーシャは悔しそうな表情を浮かべて一瞬考えると、すぐにその場から逃げ出した。

「待て!」

「誰が待つかよ、クソジジイ!」

 小さくなったグローリーではドーシャに追いつくことはできない。メロも拳銃を撃つがそれも容易にかわされる。ドーシャが出口に差し掛かった時、一人の男が姿を現した。

「なっ!?」

 全身を白銀の鎧で覆い、金髪をオールバックにかきあげた右目に斬り傷のある男が剣の鞘でドーシャの腹を打つと、ドーシャは元いた位置までぶっ飛ばされた。

「うっそ、現隊長もおでましかよ……」

「あらワーナットさん、調度良かったですわ」

 ダリアがワーナットにお辞儀をすると、ワーナットもダリアに向かってお辞儀をした。

「おや、師匠まで一緒とは」

 グローリーはワーナットを見るなり急に背を向けた。

「見ない間に随分大きくなったな、我が弟子よ。」

「師匠は見ない間に随分小さくなられて」

 ワーナットの冗談らしくない冗談にマリーはくすりと笑った。

「姫様もお元気そうで。それと君は……」

「あっ、桔平です」

 桔平がぺこりと頭を下げる。

「そうか、よろしく桔平君。俺はワーナット、オレンジ王国軍総隊長だ」

 ワーナットはドーシャの方に振り向くと、指を鳴らしながら「さて」と呟いた。

「殺すなら殺せよ、このチンピラもどきが!」

 地に這ってなおドーシャの威勢は変わらない。一番最初に動きだしたのは以外にも温厚なダリアだった。

「口の悪い子にはお仕置きが必要ね。桔平君、あちらでマリー様と遊んでいて」

 軍人の桔平にはこれから何が起こるか容易に理解できた。

「安心しろ、これはダリアさんの専門だ」

 ワーナットが耳打ちをする。が、言葉とは真逆に全く安心できる内容ではない。桔平は精一杯の作り笑顔を浮かべてマリーと共にその場を去った。

「なんだか久々でワクワクしちゃうわね」

 遠ざかる二人を横目にダリアはワーナットの鞘から剣を抜くと、それをドーシャの腹に刺し、掻き混ぜるようにぐるぐると回しはじめた。ドーシャは苦痛に顔を歪め、狂ったように叫び声をあげる。

「拷問のごの字もねえ、ただの死刑よりも酷いな」

 グローリーも思わずドーシャに同情しているようだ。

「それ一応俺の剣ですからね……」

 一方ワーナットは自分の剣が心配なようだ。

「そうね、今持ってくるわ」

 ドーシャの服で剣の血を拭うと、ワーナットに返し、ダリアは急いで机に駆け寄った。立てかけていた長杖と黒い鞄を手に取ると、ダリアはドーシャの元へ向かう。

「死んではいけませんよ、聞きたいことが山ほどあるんですから」

 そう言ってダリアが床を杖で突くと、ドーシャの身体が光に包まれ、傷が治った。

「まだ一回目なのにもうこんなにへばっちゃって、まだまだこれからよ」

 ダリアは鞄からハンマーと鉄杭を取り出すと、ドーシャの腰に杭を当てた。

「バカ、何考えてんだよ……」

「私ね、無垢な子供の笑顔も好きだけど、それと同じ位悪人の断末魔も好きなの」

 ダリアがハンマーを振り下ろす。ドーシャの骨盤が音をたてて砕ける。一通り暴れた後、ドーシャは身体を痙攣させて横たわっている。

「あら、まだ釘があったはずだけど……ああ、これね」

 鞄から取り出された十本の釘が、次々と両手の指を貫いていく。

「さて、次は何をしましょうか?」

 鞄の中の絶望は我先にとばかりにうごめき、きしめきあっている。が、床に張り付けられ虚ろな目をするドーシャにもはやどうでもよいことだった。どうせ死なない、死ねない。昔何処かで聞いたことがある、その監獄の拷問部屋から出てくる死体には傷一つ無く、むしろ美しい位だ。死因は外傷によるものではない、心労だ。

「血塗られた聖女か……ひゃー、怖い怖い」

 ワーナットは相変わらず他人事といった様子で傍観している。

「次はこれかしら?」

 ダリアが取り出したのはリボルバー型の魔法銃。装填した魔法石ごとに計六種類の弾が撃てる代物だ。ダリアはシリンダーを回すと適当な位置で止めて、トリガーを引いた。光弾は着弾と同時に黒い犬の首と化しドーシャの脇腹をえぐった。

「ひぎぃ!!」

 暴れる程に杭の痛みがぶり返し、苦痛のループに飲み込まれていく。

「おっと、質問するのを忘れていたわね。それじゃあ……」

 苦痛に歪むドーシャの顔を見るダリアの顔は悦に浸っていた。



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