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異世界戦線カプリチヲ  作者: 天沙羅
10/10

ロストアーミーイズノットデッド10

「ボス、侵入者です!」

「侵入者?どんな奴だ?」

 バスクは回転椅子に座ったまま振り返ると机の灰皿に吸いかけの煙草を置いた。

「一人は二十代後半の月種、もう一人は……処刑人ゴールドです!」

 部下の報告にバスクは舌打ちをした。

「楓の奴、死にやがったな……」

 バスクは立ち上がると壁に飾られた長銃を手に取り、出口に向かった。

「ボス、何処に行くんですか?!」

「何処って、こんな所何時までもいたら殺されるだけだぞ」

「しかし……」

「しかしもクソもねえよ。そんなことより早くアレを出せ」

 部下の背筋に悪寒が走る。

「アレってまさか……」

「決まってんだろ、この街はもう終わりだ。とっとと荷物まとめてずらかるぞ」

 そう言ってバスクは部屋を後にした。処刑人ゴールドが上陸してしまってはもはや打つ手は無い、と、直感的に判断したバスク。通路の壁から現れた隠し部屋に入ると、地下まで続く螺旋階段を一気に駆け降りていく。

「ったく、まさか本当にコイツを使う日が来るとわな……」

 半分が水で満たされた薄暗がりの地下室。水の部分は直接海に繋がっており、巨大な潜水艦が浮かんでいる。

「まっ、あとはせいぜい楽しんで死ねよ、ゴールドさんよ」

 バスクが潜水艦に乗り込む。潜水艦の中には一ヶ月分の食料と水、電話、それに三十億バール、日本円にして三百億円もの大金が積まれている。上で奮闘する部下達を背に、バスクは潜水艦を発進させた。

「さて、あとは女がいれば最高なんだがな」

 出発間もなくぼやき始めるバスク。

「あら、ここにいるのに。気づかなかったの?」

 バスクの陰が歪み、どんどん小さく、細くなっていく。

「お前、何故ここにいる?!」

 影から現れたシャムロックは小さくお辞儀をした。

「私はマスターの命に従っているだけですわ」

「マスター?ああ、あのパ……」

 バスクの胸部からどろどろとした血がとめどなく流れる。

「すいません、逃げ出したらすぐに殺せと言われていたもので……」

 シャムロックは右手に持っている心臓は床に捨てると、バスクの頭を掴んだ。まだ自分の死を認識仕切れていない死体はしきりに痙攣を繰り返している。

「ネイアスまで、急いで」

 少女の手から直接、黒い魔力がバスクの脳に指示を出す。潜水艦はその指示に従って進路を北に変える。

「あら、電話まであるのね、調度良かったわ」

 シャムロックはバスクから手を離すと、電話のダイアルを回し、受話器を手に取った。

「マスター、こちらシャムロックです。調度今逃げ出そうとしたバスクを始末したところです」

「あら、ご苦労様」

 電話の先の女性の声は優しく、張りがある。

「それで、計画の方は順調にいってますか?」

「はい、楓をこちらに送ることは成功しました。ただ……」

「どうかしたの?」

「あちらの住民に妨害されまして、その……白髪の男なんですが、その男まで連れて来てしまいました」

 女は小さく笑った。

「あなたが邪魔と感じるなんて、随分と腕の立つ方なのね」

「人間の域はゆうに超えていましたわ」

「そうですか、味方になれば心強いですね」

「はい。それで、そちらはどのようになっていますか?」

「計画通り、グローリーとの接触に成功したわ。彼も相変わらずだったわ」

「ついに王国も動き出しますわね」

「ええ、私達の望みが叶うのね、長かったわ、この十二年。ようやく父も浮かばれるわ」

「それでは、引き続き作戦を続行しますわ」

「任せたわ。くれぐれも気をつけて」

 その言葉を最後に電話が切れた。シャムロックは受話器を戻すと、再びバスクの頭を掴んだ。潜水艦は先程にも増して素早く進みはじめた。


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