解き放つ鍵
~~『解き放つ鍵』パート~~
「何でお前がいるんだ『解き放つ鍵「ときはなつかぎ」』。お前は病で床に臥せていたはずだろ」
『解き放つ鍵』は原因不明の病により、動くことすらできず床に臥せていたはずである。
「私がココにいちゃいけないの?紫電?」
「いや、悪いわけではないが・・・お前は原因不明の病で床に臥せていたはずだろ?」
「私の病気なら治ったよ。とある人のおかげでね」
私はとある人のおかげで病が治った後、屋敷の書庫に急いだ。
そこには他の本とは違い、埃をかぶり日の光が当たらないところに見つからないよう鍵のかかった箱に厳重に保管されている本があった。その本のタイトルは『フレセイア』。『この世界の真実を記し、この本を解読できた者の前にはおのずと道が現れん』とだけ伝えられ、その所在は誰も知らないと言われ続けた失われた本。一説には現代では解読不可能となった『レオン語』で書かれており、読めたのは『初代』のみとされる。
なぜ失われた本が屋敷の書庫にあるのかはわからない。
「もしや・・・!」
その続きを紫電が言おうとしたと同時に茂み(解き放つ鍵が出てきたのと同じ茂み)から、あろうことか雪乃と颯玄が出てきた。
「いい加減その『解き放つ鍵』って呼び方やめたら?」
雪乃の癇に障ったのか、紫電に軽くにらみを利かせながら提案する。
「おい紫電。コイツにだってちゃんと名前があるんだ。その『解き放つ鍵』って呼び方やめろ」
紫電だって『解き放つ鍵』の名前ぐらいは知っている。でも、名前で呼ぶのは恥ずかしいし、あだ名みたいな方が呼びやすい。
「でも、この方が呼びやすいんだけど・・・・・・わかった!わかったから2人ともそんな怖い目で見ないでくれ。恐怖以外の何物でもない!!」
ホントに怖い。2人から『殺ると言ったら殺る』オーラがものすごく出ているように見える。ワリと本気で。
『わかった?』
「分かりました。喜んで名前で呼ばせて頂きたい所存であります」
ホントにこの二人に逆らうことはムリ。この2人に対等に意見できるのは神羅だけだろう。
『ならよろしい』
ココで再び『解き放つ鍵』に戻す。
「紫電。神羅はどこにいるの?状況は?いつも一緒にいる黒裂はどうしたの?」
「そんなに質問しないでくれ。どれから答えたいいのかわからないだろ?」
「神羅はどこにいるの?」
多少ドスの利いた声で問う。周りの奴らも震えていることから、相当コワいと思われる。
「神羅は現在行方不明だ。さっきの光の柱が落ちたあたりにいたと思うが、定かではないし、まして、無事なのかもわからない」
それは聞きたくなかった。ただでさえ神羅と離れることは嫌だったのに、まさか生死が分からない。なんて聞きたくなかった。胃から苦いものがせりあがってくる。ソレをこらえて飲み込む。
「分かった。じゃあ、今の状況はどうなってるの?」
これ以上神羅について聞いてると自分が自分でなくなるような気がして怖かった。そして、今の自分には、それを耐える自信がない。
「今はさっきの『光の柱』で両軍とも戦いの手が止まっている。戦況は『ヴャヴァハ』を押している。だけども、こっちの複数の部隊が謎の少数部隊に壊滅させられてる。あまり時間的な猶予はない」
少数部隊? そんなん部隊にいくつも部隊が壊滅させられてる。いくらなんでもありえなさすぎる。普通の部隊ならできようはずもない。可能だとしたら伝説の『エネスク』だけだ。もしかしたら影の『忍部隊』が暗躍し始めたのかもしれない。
「分かった」
「一つ忘れてんぞ。『瑠璃』」
瑠璃。その名はこの世に生を受けた時から世界に知れ渡り、『天命が決められし呪われた子供』として邪険に扱われてきた。本名を『明導院瑠璃』。元名門、明導院家の末代である。
『明導院家』は『創峰院家』のカギとして、ストッパーとして存在している一族だと古より伝えられている。それゆえ、世界最古の貴族として60年前までは相当の地位と名誉を得ていた。だが、それもつかの間。創峰院家が滅亡してからはその地位も名誉も地に落ち、それとともに衰退した。『悲劇の貴族』としても有名だった。
「何か忘れてる?何を?」
「黒裂の行方」
「忘れてた!それで、紫電!今、黒裂はどこにいる!」
「いやわからない。気づいたらいなくなっていた」
「まずい!急いで黒裂を探して捕らえて!」
「なんで?」
「黒裂が『ヴャヴァハ』に情報を渡したスパイなの!たぶん今、黒裂はヴャヴァハに向かっている最中でしょう。今すぐ黒裂を捕まえないと本当に手遅れになりかねない」
「詳しいことはわからないけど急いで探させるよ。後で詳しく説明してくれよ?」
そう言って黒子たちを大量に呼び寄せ捜索に向かわせた。
約1週間ぶりの投稿です。この次の話は、キャラクター設定を書くつもりです。