颯玄Ⅱ
颯玄Ⅰの続編です。2000もじ程度です。
~~颯玄パートⅡ~~
「お前は『女』なのか?」
目の前には『美人』の文字を具現化してような美女が立っていた。
「そうだ」
俺にはこんな美人の女の子が戦場で血で血を洗っているのを想像できない。それに許せない。家族を人質にとり、『神羅に会いたい』って気持ちを踏みにじるかのように戦場に立たせる。戦場で会えたとしてもそれは敵同士である以上、神羅に会えたとしても『殺し合い』をする運命になる。
「ふざけるな!そんな事ってありなのかよ。なんだよそのやっと会えても『自分を守ろうとすると神羅が死ぬ。神羅を守ろうとすると自分が死ぬ』なんて運命あってたまるか!」
そんなのがあってはいけない。そう思っていても事実を捻じ曲げることはできない。出来るのは『殺し合い』にならないように避ける事だけ。もし相手が自分の好きな人なら尚更だ。
「そう思ってはいても事実を変えられるだけの実力を私は持っていない。私が5人、存在する神器を持ってかかっても『あの人』に勝つことなんて不可能なほど実力差がある。そんな相手に無謀な勝負をかけると私の家族は殺されて私も死ぬことが確実になる。だから私にはこの戦いで功績を立てて家族を開放してもらってから家族で逃げるしかないんだ」
琴恵が悲痛な叫びをあげた。それしか方法がないのが分かっていても、抗った結果が見えていても、その選択肢しかこの少女には残されていなかった。
「だからって・・・だからってそんなのあっちゃだめだ。自分一人でできないなら皆でやればいい。だから諦めるな。まだお前の家族やお前自身を助ける策があるはずだ。だからそんな顔しないでくれ」
颯玄は目の前で大好きだった姉を亡くしている。原因が颯玄を助けるため。あの日犯罪に巻き込まれた颯玄は姉が助けに来たとき、迂闊にも飛び出してしまった。そこに銃を向けられた颯玄に被さるように飛び込んできて、その直後心臓を貫かれ死んだ。その時、大好きだった姉を自分のせいで亡くした颯玄は目の前で苦しんでいる人に手を差し伸べるのを『生きる目的』にした。
「皆でやればいいって言われても誰にも頼れる人がいないしいたとしても頼れない。私の不注意で招いたことに人を巻き込んで死ぬかもしれない場所へ連れて行くことなんてしたくない!」
琴恵の言うことも間違ってはいない。でもそれを止めてでも俺は目の前の命を助けたい。それにこれ以上俺の目の前で人を死なせたくない。もうあの時みたいなことが起きるのは御免だ。
「もう俺は目の前で人が死ぬのを見たくないんだ!あの時、姉さんは命を懸けて俺を守ってくれた。1度救われた命を人助けに使えたら救ってもらった意味がある」
そう言い終わり琴恵を見ると目に涙を浮かべていた。
「何で私を助けようとするの?私は敵だよ?自分の家族のために君を倒そうとしてるんだよ?なのにどうして?」
「目の前で悩んでる女の子に手を差し伸べるのがおかしいのか?困ってる人が目の前て助けるのに理由はいるのか?人助けに敵味方なんて関係ない。もし君が話の通じない子ならその時はその時だ。でも君は俺に自分のコトを話してくれた。そんな敵はいない。もう君は立派な仲間だ!」
何で俺はフラグ立てしてんだ?俺には雪乃がいて・・・・・何で俺は自ら修羅場を作るようなことをしてんだ?
目を琴恵に向けると顔を真っ赤にして泣きじゃくっていた。まるで子供のように。感情を抑えられないといったように。
「ほんとに?私を仲間にしてくれる?」
「本当だ。俺を信じろ!」
嘘を言ってもしょうがない。それに本心から助けようとしてる人に嘘を言う必要がない。敵だから疑われるのは当然だが。
しばらく悩んでいた琴恵が決心したらしく泣き止み、『真剣』な表情をした。
「本当に私を助けてくれる?」
「ああ。約束する。」
「ホントに?」
「ほんとだ」
「ほんとにほんと?」
「ほんとにほんとだ」
軽くイラついてきた。これ以上言うならちょっとイジってワザと『やっぱり助けるのやめた』と言ってみるか。泣かれるか剣を向けてくるかの2択だろ。
「じゃああなたを信じる。お願い。私を助けて」
言ってこなかった。せっかく仕掛けようと思ってたのに無駄になった。
「当然だ。目の前で困ってる女の子を見捨てるほど俺は腐ってない」
「ありがとう」
微笑まれた。雪乃に惚れてなければ琴恵に惚れてたかもしれないな。危ない危ない。ホントに危ない子だ。無意識だろうけど男にとっては天使と悪魔そのものだ。