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颯玄Ⅰ

今回は書いているうちに4000文字を超えたので2部構成にします。

        ~~颯玄パート~~


「何なんだよこのけが人の数は!どんだけ酷い争いをしてんだ」


 俺たちは今、崖の上に安全地帯を作って治療所を作り、けが人の治療をしている。


 結界をかけて外敵のいないバカ広い空間を作ったのにまだ全然足りないし人手も足りない。こっちに来てるのは『サンガ』の傷兵だけ。それでもなお、場所も人手も足りない状況と言うコトは戦場ではもっと悲惨な状況になっている事だろう。


「おい雪乃(ゆきの)。まだ手当てできるほどの体力と『チカラ』は残ってるのか?この戦いのカギはお前の『完全なる回復魔法(パーフェクトヒール)』が必要不可欠になるんだ。そのことを考えてもお前にムリして身体でも壊しでもしたら世界が滅ぶことになりかねないんだぞ?だから辛くなったら言え」


 雪乃1人にしかできないとはいえ流石に女の子1人に世界を担がせることはできない。だからこそ颯玄(そうげん)もこうして救護班の手伝いをしているのだが、自分に出来ることはけが人を運ぶことと雪乃をいたわることしかできない。それに雪乃は幼いころ目の前で両親を不慮の事故で亡くしたショックから魔力を完全に失ってしまった。今は皆の存在と自分の勇気で当時の50%まで回復したもののいまだに心の奥深くではあの時のショックを完全には拭い去ることが出来ていない。また、雪乃の祖父であり育ての親でもあり『王立魔法学園』の学園長『聖回院聖源(せいかいいんせいげん)学園長は高齢で来てはいるものの雪乃のようなスピードはない。


 颯玄は何もできない自分が歯痒かった。この結界もほかの仲間がやったものだし、手当ての手伝いもできない。意中の女性が一人で頑張っているのに自分はその光景を見守ることしかできない事実を変えたかった。


 そんな矢先、空から太い光の柱が降ってきた。その直後、地響き、空震、強烈な爆発音が颯玄たちがいるところを襲った。


「今のは何だ?確かあの場所には神羅(かみら)が居たはずだが大丈夫か?」


「今の光の中に階段があって、その階段を上っていたような感じがしたんだけど見えました?」


「えっ?俺にはそんなの見えなかったけど?」


「あれはまさか創峰院(そうほういん)家直結の子孫ができた幻の『ノアの方舟』じゃないか!」


 疲れたらしく木陰で休んでくると言っていた聖源はさも見たことがあるように言った。


「わっ!びっくりした。驚かさないで下さいよ。学園長」


「それより、おじいちゃん。その『ノアの方舟』ってなに?」


「『ノアの方舟』っていうのは、はるか昔『創峰院双聖(そうほういんそうせい)』(以後『初代』と表記する)という人がいたのは知っているじゃろ?」


「この国の基礎を築いた人でしょ?」


「大まかに言えばそうじゃ。初代がこの国の基礎を築いた時にはここら一帯は荒れ果てた土地で、とても生き物が住める土地じゃなかった。でも初代が草木を作り、生き物の住める土地に変えたとき、移動する手段として使われたのが『ノアの方舟』と言われる光の階段だったと文献に残っている。その中には『安らぎの神殿(シャーンティ神殿)』があるとされ、そこには『青龍(せいりゅう)』、『白虎(びゃっこ)』、『朱雀(すざく)』、『玄武(げんぶ)』、『麒麟(きりん)』(以後『古の5神獣』)がいて、この星を守っているとされる。『ノアの方舟』は代々創峰院家直結の子孫の心の中にあり、意志や『古の5神獣』が必要だと感じたときに具現化することができるらしい。最後に『ノアの方舟』が具現化したのは60年前の『悲劇の戦い』で、それ以降、永遠に現れることのない伝説になったのだが、今、目の前に具現化した。つまり、あの場所には『滅びた旧家『創峰院』の血を継ぐ者がいることになる」


 つまり、あの光の柱は『ノアの方舟』で、あの場所にいる『滅びた旧家『創峰院』の血を継ぐ者』が何らかの理由によって『ノアの方舟』を具現化する理由を作ったらしい。


「おい雪乃。さっきあの『ノアの方舟』を上がっていく神羅を見たって言ったよな?」


「確かに見たけど確証はないよ?」


「もうひとつ、神羅は本当は明導院の人間ではなくて、明導院の当主『琥珀』さんに拾われて育てられたって言ってたよな?」


「確かにそう言ってたけど、それが何の関係があるの?」


「その2つで2つの仮説が成り立つ。」


「どんな仮説?」


「『安らぎの神殿(シャーンティ神殿)』にいる『古の5神獣』の誰か、もしくは全員が神羅を呼ぶためにあの『ノアの方舟』を具現化させたってこと。もうひとつは『滅びた旧家『創峰院』の血を継ぐ者』が神羅である可能性が極めて高い」


 この2つの仮説が正しいのなら、なぜ神羅を呼んだのか。などたくさんの疑問がわいてくることは必然でわからないとイライラする。


「でも確かめるのはあとにしよう。とりあえずは、けが人の手当てを終わらせよう」


「うん」「やれやれ。人使いが荒いな。老人は労わるべきだよ」


 早く終わらせて神羅のところに行って色々と聞きたい。今の颯玄はその気持ちが一番だった。だがその気持ちは行動に移す前に阻まれた。


「お楽しみのところ悪いが、我らの総大将がこんなに早く兵が出てくるのはおかしいって仰ってね。調べるために人形飛ばしてたらここを見つけたんだけど、そこにおられるのは『聖回院聖源』とお見受けする。総大将からは見つけ次第抹殺せよとのことだ。だが、さすがに老人をこの手にかけるのは心が病む。そこで、そこにいる若い男子、私と手合わせ(殺し合い)願えないだろうか」


 そこにはいるだけで周りが黒く見えるほど『恐怖』を身に纏った侍がいた。フードを深くかぶっているため顔までは見えないが口調と声からして男だろう。


 後ろには雪乃(好きな人)がいるし、大勢の怪我人がいる。もしも、このまま俺が手合わせを受けなければ、雪乃や聖源学園長が危なくなる それに勝負を受ければ雪乃(好きな人)や聖源学園長、大勢の怪我人を少しでも守ることができる。ここまで何もできなかった俺が役に立つにはこれが1番かもしれないな。


「お前を『男』と見込んでこの手合わせ(殺し合い)を受けるにあたって条件がある」


「言ってみよ。だが条件によっては守れぬのもあるだろう」


「条件は2つ。まず1つは、ここにいる全員に手出しをしないこと。2つめはここに被害がいかないよう離れたところでやること。俺はこれを望む」


「1つ目の条件はこちらの総大将の名を無視しなければいけないのですが・・・まあいいでしょう。その条件をのみましょう」


 こうして颯玄と謎の男の『手合わせ(殺し合い)』が始まった。


 ここは先の場所から離れ森を切り開いて作った『手合わせ(コロシアム)』。


「ココなら何へだてなく『手合わせ(殺し合い)』できるだろ?」


「欲を言えばもう少し広くしたいとこですが、もたもたしてると総大将が御怒りになりそうですので始めましょうか」


 そう言って謎の男は横に手をかざした。すると魔方陣が現れ、そこから1つの『西洋剣(レイピア)』を取り出した。そのレイピアは見た目はごく一般的なモノなのにそこにあるだけで何か神聖な物を思わせる殺傷道具(レイピア)だ。


 一方、颯玄は地面に右の手のひらを付けていた。すると地面に魔方陣が浮かび、地面にマンホール大の穴が開いた。そこに迷わず腕を入れると中から1ッポンの巨大な斧(戦国B●SARAの武田信玄の持っている斧のようなものを思い浮かべるとわかりやすい)を取り出した。


「面白いものを持っていますねぇ。まさか君が地面をいとも簡単に割ることのできる斧『震幻(しんげん)』を家宝とし、代々伝えてきた『震皇(しんおう)家』の正統後継者『震皇颯玄(しんおうそうげん)』だったとはね」


「驚くことでもないし、亜炎朱達の方がすごいよ。それにそっちもすごいものを持っているだろ。この世界が生まれたとき同時にでき、『神器』と呼ばれる5つの剣のうち『水神 ヴァルナ』の力を封じ込めた剱『ヒュドロコオス』だろ?その5つの神器は創峰院家の滅亡とともに消えたはずだろ?」

「それは違う。『ヒュドロコオス』は代々私の血筋のモノが守護をやっていましたが、60年前に創峰院の血が途絶えても『ヒュドロコオス』は失われることはなかった」


「なぜだ!確かに創峰院の血は絶えているはず・・・・・まさか『神羅(かみら)』なのか?」


 颯玄には『ノアの方舟』や出生不明な点から神羅が創峰院の末裔であると確信していた。


「そう『神羅』くん。さっきキミの唱えた仮説でも彼が『滅びた旧家『創峰院』の血を継ぐ者』と言った。そうだとするとなぜ60年前に死んだ幻聖(げんせい)の血を継ぐことができたのか不思議には思ったはずだ。そこでもやっぱり仮説が生まれる。1つ目は神羅の外見詐称。2つ目は神羅は生まれたときから時間が止まっていて君等と同じときに生まれたように時が動き出した幻聖の弟である。3つ目は幻聖には隠し子がいて、その子が大きくなってからできたのが神羅である。以上の3つがあげられる」


曰く、神羅はやはり創峰院の末裔である。そのコトをなぜ知っているのかはわからないが目の前の男が神羅の真実を知っていることは確実である。


「仮にその仮説の中に真実があったとしてもなんでお前が神羅の真実を知ってんだ!今まで一緒に過ごしてきた俺らが知らないことをお前が知っているなんて信じられない」

「お前が信じられなくても私が神羅くんの事を知っている事実は変わらない。それに君たちが知っているのは神羅だけだろ?」


 神羅だけ?まさかこいつは神羅の親の事も知っているのか?だとしたらあいつは何者なんだ?


「一体お前は何者なんだ!なぜそこまで神羅のコトを知っている!」


「私は『苑善琴恵(えんぜんことえ)』私が神羅くんの事を知ってるのはあの子の親は私のおじいちゃんが拾ってきた子供で、私が生まれてきたときに隣の家に移ってそこで暮らしてた。そして、2年後、神羅くんが生まれた。だから私は神羅くんの事を知っている。あの子の昔の記憶がないのは私の親が記憶を消したから。でも私はその術を解くことができる。いわば私と神羅くんはずっと昔に仲良くしてた『幼馴染』なんだ。ずっと神羅くんに会いたかった。だけど『ヴャヴァハ』に人質(かぞく)を取られてからは逆らうこともできず、いくら抗っても総大将に勝つことはできなかった」


 怒鳴るようにそう言って琴恵と名乗った男は被っていたフードを取った。そうすると誰もが『綺麗な人』『美人』などと言うだろう一人のか弱そうな『女の子』が目の前に現れた。

颯玄Ⅱはすぐ出しますのでお待ちください。

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