第1章 第7話 新しい日々
この調子で書いていければ、リハビリ小説として成功?ですよね。
{連載書かない現実逃避とも言う}
おしかけられた大陸の様子です。
あの日、見たこともない多くの異形が現れてから、既に3年の月日がたっていた。
初めは混乱や、民衆の暴動などで数多くの血が流されてきたが、それは怪しげな宗教の人柱や生贄といった小さなものから、地域ごと、国ごとの小競り合いの中での沢山の命が消えていったが、あの異形のもの達が街中にもあらわれるようになって、人々がそれによって犠牲になるのが増えるにつれ、人間同士で争う愚を知り、この大陸での唯一神である大地神ラオナを祀る「ラオナ正教」の元、はじめの混乱を乗り越え、人々は一致団結するようになった。
それには別のコロニーを展開し、人族とは一線を画していた他の種族であるドワーフ族、獣人族、妖精族も参加して初めて一つの目的の中まとまった。
彼らもまたその存亡の危機にためらいもなく人族と共闘した。
ラオナ神の巫の直系の系譜であるとされるグルーノス帝国の聖王アイロンは、「ラオナ正教」の教皇もかねており、実質グル―ノス帝国がこのアウロニア大陸全土を支配するにいたった。
一国独裁の利点を生かし、各国境地帯には共通の軍である、「導きに頭を垂れる羊」と正式には呼ばれる神官軍がおかれ、そこにグル―ノス帝国が誇る闘竜隊と魔術師たちが加わり、各部隊をまとめるためそれぞれ指揮系統のトップにおかれた。
それに各国精鋭の部隊が付き従う形で、人里に姿を現す異形達に立ち向かう形が出来上がっていた。
もちろん、その部隊のそれぞれには他の種族も加わっており、この大陸はじまって以来の誰も夢にも考えなかった理想的な形が実現した。
それが異形による脅威によるものだったとは皮肉なものだが。
この三年でわかった事は、あの今では統一して「妖獣」と呼ばれるものたちの大きさは、家畜程度のものから典型的な町の家をゆうに超える大きさのものまであり、その姿形も様々で、地面を這う者、走るもの、空を飛ぶものまで、いろいろいることがわかった。
そして、昼にみかけることはなく、夕暮れから明け方までに遭遇することや、単体であれば、何とか神官軍により撃退する事ができるのもわかった。
空を飛ぶ大型の騎竜に似たものを「ズール」。
地を走る虎に似たものを「グール」。
地を這う蛇のようなものを「ザール」。
そう名をつけて分類し、それぞれの弱点を見つけた者や退治したものには、報奨金をおしみなくラオナ正教の名の元に出した。
その為、妖獣狩りをならわしにする命知らずの集団も数多く排出し、アウロニア大陸はこうして新しい時代を迎えた。
そうして、たくましい庶民は妖獣にも慣れこれまでと同じように生きていた。
ただし、あのハンニレ山脈の中でも一番奥まった一帯であるロンド山、及びその渓谷だけは、人族も他の種族も決して足を踏み入れてはならない禁足の地「邪神の息吹」と呼ばれるようになり、それを破るものには厳罰が待っていた。
「邪神の息吹」にいる妖獣は、けたはずれの化け物ばかりで、知恵もあるということが多くの犠牲の元わかったからである。
調査の為に赴いた数多くの神官隊は、ことごとく壊滅状態に陥りわずかに生き残ったもの達からの証言で、その場所にいる妖獣たちが人里におりてくるものなど問題外なほど強いというのがわかった。
更に調べるため、実地では無理ならと今度は遠視の魔法にたけている者達を各国から集め、その力を合わせロンド山を遠視するも、その遠視がことごとく靄がかかるようにしか見えず妨害されているのがわかった。
その妨害に、あの凶暴な力だけでなく、何か魔法の素養もあるのかとそれを知った支配者たちは絶望した。
しかし、それと同じくして、ラオナ中央神殿の口寄せから驚くべき言葉が託宣された。
それは邪神の託宣と後世呼ばれた。
「私の夢に邪神があらわれ申しました。ロンド山は我らがもの、ここに立ち入るは許さぬ。生きて返したもの達は我らが証言者。立ち入らぬなら、何もおこらぬ。心せよ」と。
口寄せにより邪神と初めて告げられ、皆はようやくあれら突然あらわれた妖獣が何ものなのか納得した。
あれらは邪神の使徒、我ら「ラオナの子」に仇なすもの、ある意味この託宣で、アウロレア大陸にすむものはやっと安堵した。
「理由」がわからないものほど人々を疲弊させるからである。
邪神があらわれたなら、ラオナ神もいつか我らを救う為に顕現されるに違いない。
それをひたすら待ち望もう、と。
いっそうラオナ信仰が高まり、本来、自然を敬う妖精族たちすらもラオナ神に帰依するものが出てきたほどだった。
人々は嫌な事があると、ロンド山の方角に向かい、悪縁切りの所作、右指を交叉させつばを吐く、などを行うようになっていった。
こうして、大陸に住むもの達は妖獣たちに慣れていった。