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第1章 第6話  その日

別視点です。

 アウロリア大陸は、群雄割拠の時代を経て、やっと国々は安定と繁栄の時代を迎えていた。


 大陸に最大覇権をとなえるグル―ノス帝国は、聖王アイロンの元、その華やかさの陰で権謀術策を用い、確固たる地位を築いていた。


 グル―ノス帝国には一介の千騎長から、第3大隊の隊長まで力でのし上がったエンブスをはじめ、血筋にかかわらず、実力を重視する方針のせいで、帝国に忠義を尽くす猛者が軍部にはひしめいていた。


 もちろん連綿と続く貴族もまた、力ではなくその巧みなかけひきや深い血のつながりでもって帝国を支え、その地位をまた盤石のものとしていた。


 それぞれがお互いを見下しあってはいるものの、帝国を支えるそれらがあってこその帝国の力であった。


 グル―ノス帝国ほどではないにしろ、それに続く数か国も国内を安定させており、十数年前の新王即位の混乱を狙った、もはやその国は既に地図の上から消え去ったが、その戦いを最後に、とりいってこれという問題もないまま、各国間での表立っての争いのない、平穏な時代がこのまま流れていくのだろうと思われていた。


 その日も、訓練を終え第3隊の隊長であるエンブスは自身の騎竜の元に向かい、城下にある自分の屋敷に警護の部下3人と共に帰還する所だった。


 騎竜たちが、いつになく落ち着かなく、また気を高ぶらせており、珍しい事に、エンブスが天塩にかけ幼竜の内から仕込んだ愛竜ソランも、あの熾烈を極めた戦場でさえも、一歩もひくことのなかった気性の荒いソランでさえ、なぜか後ずさりエンブスをその背に乗せようとはしなかった。


 それを不審に思い、この高台から見える城下を眺めれば、やはりおかしな様子で、犬の遠吠えや家畜の騒ぎ声があふれ、鳥たちの一団が落ち着かなく空を舞いあがり、そして消えて行った。


 その不穏な空気に何事かとあたりを見渡してみる。


 城内からも交代した城づとめの人間が外に出てきて、同じように様子をうかがう。


 そんな中、城をみれば、バルコニーに小さく姿を現したのは、宮廷魔術師長たち一行だろう。


 ひときわ白いローブの集団に金色の髪が目立つのは魔術師長であるレアル殿下だ。


 よくよく見ると彼らの足元で召喚陣が淡く、やがて強く輝いていくのがみえる。


 さきほどまで自分がいた城中で、本日、召喚獣を呼び寄せるなど、一つも聞いていなかった。


 本来、慎重に慎重を重ね準備されるそれが、急きょ行われているという事になる。


 一体何がおこっているんだ?


 エンブスは、軍隊長としての顔に一瞬にして戻り、3人の部下に伝令を急ぎ務めさせ、自分は懐から魔法具である狼煙、第三部隊の色である青の炎を打ち上げ、第三隊に緊急行動の合図を送る。


 見れば赤の炎である第一部隊の狼煙も、黄色の第二部隊の炎も高く上がっている。


 城の裏手にある、我が帝国最大の誇りであるこの大陸最強をうたわれる闘竜隊の詰め所から、狼煙であり、なおかつ闘竜たちを興奮させる匂いを放つ金色の炎もあがっている。


 軍靴をカツカツとならしながら、急ぎ城に戻るエンブスは、目の前にいる衛兵の叫び声に何事かと思い、彼らが指さす方向に目をやった。


 振り返って、自分がみたものは、初めは小さな点に見える幾つもの黒い影だった。


 それがみるみる大きくなるにつれ、鋭い音もかすかに耳に聞こえてきた。


 そうして、エンブスは自分の目を疑った。


 周囲の人間もまた驚愕のまま固まっている。


 今まで見たこともない、数多くの異形の群れが空を覆い尽くすように飛び、その大きな翼のはばたきを音に乗せ、はるか、大陸最高峰の連なるハン二レ山脈の方に向かう、その姿だった。



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