第2章 第14話 広場の騒動②
昨夜遅くに読み直して、やっと今日帰ってから更新しました。
ゆっくりですが更新再開です。
私は腕とほっぺに赤い筋をつけてよろけたアンナを見た。
すぐに皆も私に続いてやってきてアンナを助けおこし、口々におバカと言いながら泣きそうな顔をしながら悪態をついている。
なりそこないとうちの子らに言われてるアル達や、この初めての友達に気持ちを向けはじめた途端、あれほどカタコトだったこの世界の言葉が一気に理解できるようになり私の言語能力が上がった。
ジョーカーに聞くと私が「共感」したせいだと教えてくれたけど。
どうせなら今の友人たちの感情も共感できればいいのにと思う。
私にとってここでの騒ぎは何も気にする事ではなくって、「あ~子供が死んだんだ~」って感じ。
お友達が望むから広場に戻ったけど、私には彼らのようなその出来事に向ける感情は何一つなかった。
けれどアンナが鞭を打たれた瞬間は違った、私もどこかがとても苦しくなり痛かった。
あのメイドみたいな偉そうな女達を排除したのを後からみんなに教えたら、それを知ったみんなに私は「だからおバカなんだ」とひどく怒られた。
「命」は大事なんだぞ!と。
私がわからない、と答えるとわからなくてもいいから「大事なんだと思え」と言われたばかりだ。
だけどみんなが言うそんな大事な命はこうして私が何もしないでも簡単に消えていく。
ほら、こんなにもあっけなく。
もしアンナに向かって放たれたのが鞭じゃなかったら、アンナもまた命を奪われたかもしれない。
私はひどくあやういそれにぞっとした。
私は欲張りじゃないはずだ。
だって大事にしたいのはわずかだけだもの。
時々ジョーカーがわざとらしく目を反らして顔を合わせないような時があるけど、やっとわかったよ。
私もあれいただく事にした。
私はアンナに寄り添う友人達をなにげにスルーして、アンナに鞭打ったその男に目を向けた。
黒いフードで顔はわからないはずなのに、男は一歩更にまた一歩と私の視線を感じて後ずさる。
私の怒りに合わせてどこかから咆哮が聞こえてきた。
何やら不穏な気配に護衛やあの馬車のそばに控えている人間が回りを見渡し、あわてたように言葉もなくそのまま動き出しはじめようとする。
ダメだよ。
アンナを傷つけちびっ子を泣かせたんだもん。
もしほおっておいて、またやられたらどうすんのさ。
私はみんなにおバカと言われるけど、みんなが簡単にこうして壊されるかもしれないのをほおっておくほどバカじゃない。
今大丈夫だからって次が大丈夫だとは限らないじゃない、その次は私がいるとは限らない。
あのなりそこないのアル達は何か造りがちょっと変化した気がするから、認めたくないけど大丈夫な気がする。
だけど友人達はダメだ、それこそ考えたくもない。
後でまたみんなにちょっとだけ怒られる事にしよう。
まず私から離れようとしたアンナを鞭打った護衛の男が声を出す間もなく、クローバーの子によって地面の中に引きずり込まれた。
その周囲にいた同じく馬車を囲むようにしていた他の護衛も、自分の目の前でおきたそれに何がおこったかわからないまま地中から飛び出た大きな口に銜えられてこれまた一瞬で消えていく。
そうして、街の人間はそれを見てやっと悲鳴をあげながら蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
その場で残っているのは死んだ子供を抱きかかえている母親と、怪我の手当を受ける父親とアンナを囲む友人たちだけ。
友人たちに叱られる前に残った馬車をハートの子らにまかせた。
空からバッサバッサと降りながらその馬車を器用に持ち上げ去っていく。
おお、なんて早業、グッジョブだ。
馬車の中から男の人と女の人の声が聞こえてきたけど私の知る言葉じゃなかった。
私の友人たちがしゃべる言葉じゃなかった。
それと同時にかすかに聞こえたその泣き声に私は耳をすました。
もう空高く遠ざかるそれに意識を向ける。
ハートの子を通して馬車の中を見る。
馬車の中にいるのは、どんぴしゃセバスチャンみたいな男の人と、ロッテンマイヤーさんもどき。
それに豪華な衣装に身を包んだ若い男の人と女の人。
そして女の人の腕の中には・・・・赤ん坊がいた。
私はギギギと首を回してアンナたちを見た。
友人たちは自分と同じ子供が大好き。
特に赤ちゃんの面倒をきちんと見ないとよくハートの子らも私もひどく怒られた。
思い出せ!「えーと一人で立てぬものはちゃんとみんなで助ける事」
我がグループの決まり事の一つだよなあ。
あれも一人で立てぬものに入るよな、でもみんなには見えないし・・・、だけどあの泣き声聞こえたかもだし・・・。
私はグルグル考え、とりあえずみんなに向かってニヘラっと笑ってみた。
ハートの子らにその馬車持って帰ってこいとそっと伝達する事を忘れずに。




