第2章 第4話 聖王戴冠
これって番外編長すぎるかな?
しばらくは初お友達!という事で、自分の精神年齢の低さに開き直り、この最初の訪問地でダラダラ過ごしていた。
うん、凄いんだよ、前いた天幕群を大きな街にかえた親方一行達が素晴らしい勢いでここも見違えるように変えていくんだもん。
揃いのエンちゃんたちとは色違いの灰色のマントで颯爽と闊歩する職人さん方ってかっこいいかも。
畑に沿う形のこの浅瀬の小川も、最初にジョーカーが作った小さな泉も、すんごい勢いで冷たい湧水がコンコンと流れている。
そこでこうして昼食後には、お友達と足や手を水につけておしゃべりタイムに毎度なる。
ついでにいろいろな言葉を教えてもらってるの。
わからないと「バカだなあ」って、ニシシって感じで小突かれるんで、最後は何故か鬼ごっこに移行
してしまって、やがて日が暮れるまで遊んじゃうけど。
それを大人たちやエンちゃんや職人さんたちがニコニコして見てる毎日。
この泉のそばには大きなタープが設けられ、その下に椅子やテーブルがおかれて、皆の憩いの場になっている。
そうして今日はこの泉に集まってお祭りをする。
収穫祭みたいなのをするの。
なんで収穫祭?って思うでしょ。
ほらあの種をまいた畑があるでしょ?
私は遊びがてら毎日何気にみんなと覗いていたんだけど、全然芽がでないの。
まあすぐに育つなんて思っていないけど、食べ物はみんな王都やあの天幕の町から送られてくるし、天幕の町の支店のお店もいっぱいできて今は無償でそれらの店で食べられるから困ってはいないんだ。
だけどさあ、やっぱり気になるんだよ。
それでねえ、某アニメの真似をして、ふざけたノリで「大きくなあれ」ってやってふざけて遊んだの。
そしたらねえ、子供らもびっくりしてたけど、ニョロニョロと芽が出てきたの。
マジ、マジで!
さすがに私もびっくりしたけど、ジョーカーが言うにはこの水はジョーカーが無理やり捻じ曲げてつなげた水路だから、まだ色濃くジョーカーの力?みたいのが残っているから、相棒の私の力が入りやすいんだって。
え?私に力なんてあったの?
まあ深く考えないで2~3日そんな感じでやったら本当にどんどん大きくなっていって、1週間もたつ頃には「とうもろこしもどき」やら「そらまめもどき」、「小麦もどき」みたいなのが見事育ったんだよね。
これにはまた大げさな年寄り連中や大人たちが大泣きした。
ドン引きしてたら友達らが言うんだ。
「生まれてはじめて作物をみた」って。
子供らも大喜びしてるから無問題ってことで、それからなんかあれよあれよって感じに今日のお祭りが決定された。
あのレアルっていう王子様たちもきていいかってエンちゃんがデカい図体を縮こませてウルウルお目目で言うんだもん、「いいよ」って答えた。
ただし前来た時みたいにエラそうにしないでよって身振り手振りを交えて片言とはいえお願いした。
お友達と楽しめないなんてダメ、絶対!
で、こうして収穫祭当日。
なんか日の出とともに、前日到着したレアル王子と一緒に、畑の作物の最初の刈り取りをさせられた。
なんか白いぴらぴら着た王子と黒いぴらぴら着た私で、あの結婚式でやるみたいなケーキ入刀みたいのを畑で作物相手にやった。
恥ずかしいけど、だってこれやったらシリ―のペットの猫もどきの赤ちゃん産まれたらくれるっていうんだもん。
お友達たちがすんごいキラキラした目でみるのよ、シリ―の猫もどき。
何でも特殊な猫もどきなんだってさ。
この町にもいればなあ、なんていうのを聞いたばかりの私に、エンちゃんの再びのお願い、この畑での見世物に出て欲しいの言葉に私は「猫くれれば」といそいそと交換条件出した。
だから頑張ってこの無言劇?に出演して頑張って早起きもした。
なんか例の魔法で王都や他の国とか、まあ大きいとこにも映し出されてんだと後から聞いて、本番中にそれを聞いてなくて良かったとチキンな私は思ったよ。
なんかそこでレアル王子に最後に王冠みたいの頭の上に乗せたパフォーマンスもしたんだけど、それには一緒に王都からきた人達も、エンちゃんたちもガン泣き、引くよね。
これには驚いたけど、王子がこそっと私にもわかるように教えてくれたんだけど、王様になる儀式もちゃっかりやっちゃったんだってさ。
私には関係ないからどうでもいいけど。
それからはもう食べて遊んでのお祭りタイム。
ひらひらを急いで脱いで、恒例の鬼ごっこやかくれんぼ。
みんなうちの子にも慣れて、そこらにゴロゴロまったりしてるうちの子たちの翼の下に隠れたり、お腹の中に隠れたりもするの。
さすがにジョーカーに隠れるのは私だけで、それには近づけないんだから「見っけ」にならないとジョーカーに関してはかくれんぼからは除外される事となった。
多数決で負けた。
怖いもの知らずな子は、何と女性の長いスカートにも潜り込もうとして、頭をばっちんと殴られていた。
それを見てあのレアル王子、いや王様になったか、彼が肩を震わせて笑っていた。
なんか陰険腹黒そうだけど、そうでもないのかな?
エンちゃんやアルなんて「ガハハハ」って笑ってた。
何はともあれ夜遅くまで楽しく大人も子供も無礼講ではっちゃけていた。
あのウネウネに最初に突入していった男の子サディが、お酒で大騒ぎする大人たち、えらいらしい王様になったレアルやその臣下の人達も混じって楽しく過ごしているその様子を見て、私達子供組みが集団でゴロゴロしている場所で、じっと私を見てはじめて言った。
「ありがとう」と。
その言葉を受ける私に子供達の視線が、いつも遊んでいるそれとは違った真摯な視線が集まった。
私は照れくさくなった。
何が「ありがとう」なのかわからないんだもの。
どうしていいかわからなくてサディの顔をみたら、私の頭をくしゃくしゃにして笑う。
その顔をみたら言う言葉がわかった。
だからにっこり笑って「あたぼうよ!」と日本語で答えて、そして一人一人ハイタッチした。
空には綺麗な星々があり、脇を見るとゴロゴロ転がるお友達が一緒にいる。
そうしてすぐそばにはジョーカーが寝そべり、ハートの子らにもたれた友達の皆とこうして過ごす。
元の世界ではわからなかった事も、この友人たちが「バカかお前」と教えてくれる。
嬉しくなって私は空を再び見上げ、こんな時花火が欲しいと心から思った。
花火はさすがになかったけど、ジョーカーが空にあがりその体を七色に順番に輝かせ、ハートの子らもそれぞれ綺麗な色に輝いて夜空を彩り飛び回った。
夢中で空を友達と見上げ、大人たちも夜空を見上げ感嘆の溜め息をついた。
ぐるぐる嬉しく駆けまわる友達と私にその光が優しく降り注いでいく。
そうか、前いた世界でもこうして友達を作れたら良かったんだ。
たった一人でも友達を。
そうすればこうやって「生きる」事を教えてくれたはず。
人は怖くて、私に向ける人の言葉も怖くて、家族からはじかれていた私はそれが全てだと思い込んでしまったんだ。
これからはこの友人たちと共にいて、こうしていろいろと一緒に覚えていけばいい。
それをジョーカーたちにも教えてあげよう。
私達って何にも知らないから。
ワクワクしてきた。
あっ、ジョーカーも嬉しそう。
口からも色とりどりの炎をふきだした。
あっ、でも残念。
子蛇ちゃんたちも頑張って出したそれにお互いがあぶられて大変なことになってる。
ジョーカー、得意になってるとこ悪いけど、見て、見て尻尾を!
私のそれを受け取ったジョーカーは自分の尻尾の子蛇ちゃんたちが焦げてる様子をチラと見て、綺麗に目を逸らせていく。
やれやれジョーカーも私とおんなじだ。
うちらは友達にいろいろ教えてもらおうね。
この日は遅くまでたっぷりと楽しんだのは言うまでもない。




