第2章 第2話 はじめての町②
なんか違う気がする。
なんか間違ってないかな?
私はこの町に甘いもの求めてやってきただけなのに、これって最初の時から絶対間違ってるよね?
あの後、エンちゃん達も意気揚々とあの高台の砦みたいな所を短時間で襲撃し終わり、私の元に戻ってきた。
そこまではいいよね。
それでもどった途端「どうするか」って私に聞いてきたんだ、うん、確かにそう言ってた。
だからいまだはしゃぎまわるうちの子らを眺めて私は言ったんだ、「うちの子らが遊んでからもどる」って。
だってこれじゃ甘い物はおろか、ただの残骸の町に何か期待できるものがあると思えないもの。
せめて遊ばせてあげたいものね。
そう言ったとたんエンちゃんやロウゼ達みんなの目が何故かウルウルしてんの。
あれ?って思ったんだけど、私が不思議に思うまもなく、エンちゃんが大声をあげてそれに魔法がかかってたみたいで、この残骸の町にその大声が、ほら拡声器みたいな感じで響き渡ったんだ。
それに合わせてエンちゃん達の騎獣も雄叫びをあげるものだから、遊んでたうちの子らも何、何?って感じで遊びを放り出して、真似をして声を上げはじめた。
そうしたらワラワラと町の痩せ細った人達が大人も子供も大勢出てきた。
そりゃあ大勢。
この人達どこにいたのさ?
・・・あっ、ダメ、この人達エンちゃんが呼び出したんだから、遊んじゃダメです!
オサワリ禁止!メっ!
そう皆に言い聞かせながら、すんごくおどおどとした様子の出てきた大勢の人達を見る。
子供は昔、授業で見た写真の子供みたいにお腹ばかり出てる子どもたちばかりだ。
お母さんらしき人もすんごいガリガリ。
若い男の人達も目にも力がなく痩せている。
なあに、なあに?
ここって結局甘い物どころか食べ物なんかなかったみたいじゃん。
え~、え~、はずれ?はずれなの?
お風呂といい、今回のおやつプリーズといいはずれっぱなし。
私は思わずしゅん、としてしまってため息をつきながら下を向いた。
するとアルが寄ってきて、ひどく深刻そうな顔をして、私の肩に手をポンとして何かを言った。
聞き取れたのは「気にするな」みたいなこと。
だから私は首を横にふり「いや、残念すぎて情けないよ」と片言ながら答えた。
そしてなぜか今に至る。
まあ私も手伝っているんだけど。
今やすんごい活気にあふれてるこの残骸の、いや最早残骸じゃない建設途中の町に私はいる。
あれからすぐにあの伝達の魔法を王都に飛ばし、エンちゃんたちは瓦礫と化した建物の残骸をうんしょうんしょとどかしはじめた。
すぐここから出ていくもんだと思ってた私は、あれ?とは思いはしても、この最早ゴミとなってしまった諸々をどかしてから出発するのか、とそう思い、それなら一刻も早く出発したいから、うちの子らにも手伝わせた。
いや、瓦礫製造者としては率先してやることにした、エンちゃんたちに悪いし。
凄いよ、うちの子ら、やるとなったら半端ない。
その馬鹿力で瓦礫をあっという間に数か所に集めたら、あっ言う間にジョーカーが炎を出して灰にしちゃう。
それほどの時間も立たずに綺麗に片付いた。
で、これで出発か?と思ったら炊き出しがはじまって、どうみても住民の数に比べてエンちゃんたちが持っていた食料は微々たるもの。
それなのにそのほんのわずかなスープもどきをおいしそうにみんな食べるの。
おどおどしていたのがウソみたいに。
この短期間でエンちゃんたちと町の人たちの間で何があったのか、そういえばジョーカーが燃やしてるときに、エンちゃんが何か腕をふりあげて町の人たちに演説みたいのしていたな。
最後なんか何か泣き声と雄叫びが一緒だった気がするけど、精神衛生上よくなさそうだから無視して見もしなかったけど。
なんか方向性が間違ってるような気がするのは気のせい?
エンちゃんが私にもスープもどき持ってきてくれたけど、この量じゃ全然足りてないんじゃないの?
みんなデカいんだもの。
本当に手がかかる旅の仲間だよ。
しょうがないみんな狩の時間だよ、大量ゲットよろしく。
私にはおいしい果物忘れずに。
そう頼むとうちの子らは喜んで飛び出ていった、半分以上遊び気分で。
だから私は明日の朝までには寄り道しててもいいけど帰ってくるんだよ、と念を押しといた。
時間の観念なんかないからね、あの子らは。
そして翌朝には大量のエモノが揃い、町の人総出で肉の仕込みがはじまった。
余った肉はロウゼが嬉しそうに燻製にしていた。
それから少しして地に潜る子がうねうねしちゃった所に、年寄りたちが嬉しそうに種まきをして、子供らもそれをやっていたのを見たアルが何を納得したのか他の所もうねうねやってくれ、と私にお願いにきた。
狩りには戦力にはならない地に潜る子らはそれを私に頼まれて張り切って他の土地もうねうね三昧にしたのはいうまでもない。
そのうねうねと土が盛り上がるたび、なぜか住人達は喜んだ。
もう怖くはないらしい。
しまいに子供の一人、5歳から7歳くらいの男の子が数人、こらえきれずにそのうねうねと動く土にダイビングしてキャッキャッとはしゃぎだした。
いや本当にそれは面白そうだった。
うねうね三昧の土はとても柔らかくそれが上に下に動くんだもの。
ふらふらとつい私も参加してしまった。
子供らと手を握り落ちないようにバランスをとって立とうとしたり、そして立てなくて転がったり、本当に乾燥してるんで土と土ボコリをかぶるだけだけど、そのうちクローバーの子の頭を出させてよじ登り競争もはじめた。
ん?大丈夫口はばっちり閉じさせたから。
久しぶりに思いっきりあばれた私は自分と子供らの土まみれの残念さに、水浴びを、ほらアメリカの映像でよく夏の風物詩みたいに道路で水をシャーってかぶるあれがやりたくなった。
こんな時はジョーカーだよね。
横になってだらけているジョーカーに、私のイメージを送る。
するとジョーカーがそばまできて足元にその爪をたて潜る形態になりあっという間に潜っていった。
ジョーカーを近くに見てさすがに硬直する子供らに私は口に手を当てて、その後私に注目させるとカウントダウンをはじめた。
10までの数字なら間違えないで言えるのさ!
私がはじめたカウントダウンに戸惑っていた子らも、あの最初にウネウネに突進していった男の子が私に真似るのを見て、皆で口をそろえてカウントダウンをはじめた。
そんな私達がエンちゃんたちは勿論町の人たちに注目を浴びていたのも知らず、ニコニコとカウントダウンを大声でしていた。
最後の「ゼロ」という所で、ジョーカーが飛び出てきて、飛び出た穴は本来の姿の大きさに見合わせた大きなもので、そこからシ噴水のように水が飛び出てきた。
はじめ茶色がかったのがすぐに透明な水にかわり、私達は笑い声をあげてその水を体中に浴びた。
それに何か、ウオ~っという声がしたと思ったらエンちゃんたちや町の人たちも歓声をあげ水浴びに参加してきた。
なんかみんな変なテンションで水をかけあっていた。
私には子供らしかかけてこないけど、何で?差別?
思うぞんぶん遊んで水からあがったら、水をいそいそと一生懸命あの種をまいた所に手ですくってはかけている町の老人たちが見えた。
そんなのここから水を引けば一発じゃん、そう思った。
だから今度はその種をまいた所に水がいきわたるよう、田舎の畑とかのイメージをジョーカーに送った。
地に潜る子でもいいんだけど、やっぱりきちんとした仕事はジョーカーに限るんだよね。
私のイメージから全て了解してやってくれるんだもん。
ジョーカーがまた潜りあの種をまいたうねうねに沿って水の通り道があれよあれよという感じに出来上がっていった。
うねうね畑?の周りを囲むように小さな浅瀬の小川の通り道があれよあれよという間にできあがった。
どうよ!これ!すごくない?
私はエッヘンとばかりに子供らにえばろうとしたが、それより先に先ほどよりも大きな歓声がおこり、やがて住人の皆さんがなぜか泣きだし、1人、また1人と膝をつき頭を下げていった。
うん、エンちゃんたちなんてもう恰好よくザザザって感じに私に礼をとる、何故に??
そんなかんなでここにみんなで長くいるんだけど、もう1か月以上も。
王都からも職人さんとかがきて家々をたてはじめ、材料の木材なんか運ぶのに手間がかかってるみたいだから、それならとエンちゃんたちとうちの子らがお手伝いをはじめた。
うん、いや私が待ってられないの。
なんか私ってばここの子供らと遊び友達?つーのになっちゃって、ほら日本にいた時は子供の頃から人付き合いできない子だったから、遊んだ思い出なんて、低年齢の頃のお遊戯ぐらいしかないのよ。
それがあのうねうね水遊びから仲良く遊ぶようになっちゃってさ。
石けりや例の水遊びとかいろいろ遊んでるんだけど、やっぱりそうなると落ち着いた家をあげたくなるじゃん。
今は簡易布を敷いてそこで皆雑魚寝状態。
どうやらここは雨がふらないらしくてテントまではいらないみたいだけど、友達は大事だからね。
大人はなんかうやうやしくしてくるけど、子供達は全然遊んでいても普通。
同じ水をかぶった仲って感じでとても仲良くしてる。
私って精神年齢低かったのね。
だから家やもろもろの材料とりにはうちの子らが大活躍。
国境なんて関係なく最短な距離でグループになって取りにいってる。
はじめ王都にお金を取りにいった時は驚かれたらしいけど、何か皆慣れてきたってアルがいってた。
どうやらあの時、「もどる」って言った言葉が違った風にとられたみたいだけど、何でも「戻す」復興する?みたいにね。
でもまあいいや、まだまだ遊びたりないし、もう少しここにいても。
「おもしろい」は正義だよ。




