第1章 第4話 邂逅②
ゆっくりと、ゆっくりと手探りで闇の中を進む。
誰だ、暗闇に目が慣れると、うっすらと見えるようになる、と言ったのは。
ちっともその闇は、馴れ合う事を拒否するように、ただひたすらのどこまでいっても闇だった。
私が近づいているのがわかるのか、その鳴き声は、早く早く早く!と私を催促する。
うん、不思議だ。
何故かその声に込められる思いが、私にはすんなりと伝わる。
時間の感覚もないまま、やっと私は自分以外の存在を訴える気配にいきついた。
一転甘えるように鳴くその声の元に、手を伸ばしてみる。
何も見えないけど、少しずつ伸ばすそれに、何か感触が伝わる。
もっと近くへとここにきて初めて私はよろよろと立ち上がり、もう一度しっかりそれを確かめるべく手を伸ばす。
未知の存在であるそれを、不思議な事に私は少しも怖くなかった。
ずっとずっと昔から、私を呼び続けていたそれに、声をかける。
「ねえ、どうして?何で私を呼んでたの?」
すると私の頭の上から、どうやら顔らしきものをそっと擦り付けてくる、それ。
「ここはどこ?」
いろいろ話しかけているうちに、ちょっとだけ闇が薄れていくのがわかった。
それを知った私は、どんな原理か知らないが、話しかければいいのかと、それに手をかけたまま、他愛もないおしゃべりを続けた。
話し続けて、やっとそれが目にうっすらと浮かび上がる明るさになった時、それがとても大きい生き物だとわかった。
ずっと話しかけていた時間がなければ、怖くないと知っていてさえ、声を上げていたかもしれない。
それは堅そうな鱗に覆われた恐竜に似た生き物で、けれど尾の方はとても長く大蛇のように見え、それは闇の中に消えていた。
そしてその四肢は虎のようで、その背に見えるのは大きな翼だった。
ありえない。
遠足で昔見たヒグマなんて目じゃない大きさで、その赤い目のある顔を私に近づけて、また頬づりをしてくる。
いやいや、何のフォローを自分にしたらいいのか、何となくどうしてよいかわからず、その赤い目と目を合わせた。
ベロンと二股にさける私の顔ほどある舌に舐められながら、急激におこる眠気に私は何が何だかわからないまま、その場で眠りについてしまった。
いやいや、ないだろ!そう思いつつ意識をなくすように眠りについた私を、その大きさに見合わない器用さで、上手にその懐にかかえこみ、それもまた満足げに眠りについた。