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第1章 第33話  向かうべき先

ロウゼ視点②


ちょいと出かけます。

昨日夜中までゲーセンいって遊んだ私のおみやげは、交通違反の切符と罰金七千円でした。


またまたキリがいいとこでやめることに・・・すいません。

次回にはロウゼさん視点は終わるはず?

 レアル殿下一行が到着されるのを、共に迎えに出てくれた少女、我らはただ便宜上、姫と呼ばせていただいているが、なぜなら少女を知れば知るほど、さぞやそれなりのお生まれの方だと察せられるからだ。


 その手肌は瑞々しく、赤子のように柔らかそうで、それは全ての労苦と無縁である王侯の方々と同じように、いや、それ以上に美しい。


 また、ほとんど我らの食事は、手でもって食べるのが多い。


 木でつくられているカップや簡単な皿ならあるが、カップ以外はほとんど使われることはない。


 やんごとなき身分の方々でさえ、貴重な銀食器を使うのは、公式行事に限られている。


 しかし、この少女と初めてエンブス隊長の天幕で夕食を共にしたとき、その夕食には、わざわざ王都の宮城から取り寄せられた銀食器が使われていた。


 それらを当たり前に使いこなし食事する少女に私は目を見開いて驚いてしまった。


 慣れないそれにエンブス大隊長はじめ私達は、粗雑な音をたて、あまつさえ持て余しているというのに、少女は当たり前にそれらを優雅に使いこなしていた。

 

 エンブス大隊長によると、天幕に届けられる食事になかなか手をつけず、唯一カップのスープにのみ手をつけたという。


 好きな食べ物は何かと、後日紙に書いて聞いた所、銀食器の上に乗っているらしき食べ物を書いたという。


 その食べ物は何かとは特定できなかったが、食事を共にするのは名前を覚えてもらう次に意味がある。


 急ぎ、王都に伝達鳥を飛ばし、それが揃ったところで、共に食事をとるようになった。


 これだけとっても普通ではないと私達は知った。


 もともと邪神たちを従える、どこぞ異国の少女。


 この世界のどこにも少女の生まれを特定できるようなものはない。


 はじめに少女が身に着けていたローブのようなものは、少女が簡単に捨てたものをそっと拾い、王都で魔術師長であるレアル殿下直々お調べになったが、全ての魔法を跳ね返し、どのような武器を持ってしても傷一つつくことがなかったという。


 そのようなもの、神話の中の話しでしかない。


 少女の着ていたローブは、最重要宝物庫に厳重に管理された。


 これ一つでも、情報が洩れれば、それを求めて戦さがおこりかねないくらいだ。


 そのため不可思議な聖衣は一番奥深くに厳重に保管された。


 それほどのものをぼろきれの如く捨ててしまう少女について我々は、レアル殿下の見解だというそれに納得してしまった。


 「この少女もまた、人ではありえないのではないか?」と言ったという。





 何はともあれ、共に出迎えてくれる様子の姫と邪神に我々は、少なくてもこの度の視察を彼女が嫌がっていないとわかり大きく安堵した。


 しかし、その姿も大きく見えはじめた時、どのような気まぐれが、少女はぷい、と邪神と共に天幕に戻ってしまった。


 その姿を我々はじっと見送った。


 ただ厭きたのか?それとも・・・。


 いろいろ考えていたかったが、じきレアル殿下一行がお着きになられる。


 我々はそちらに気持ちを切り替えた。


 




 到着されたレアル殿下を主たる建物に代表である数人が案内した。


 今回の御座所となられる建物に入ると何気にアルドブ小隊長が、エファラン公爵のそばを陣取る。


 そしてエンブス大隊長はレアル殿下のそばに。


 その瞬間、レアル殿下の教育係りであり文書官のトップでもあるセブンズ侯爵とエンブス大隊長の目が交錯した。


 何て事だ!エンブス大隊長には、今回の話しが出た時に、王都の噂を踏まえた上での話しを聞かせ、アルドブとシリ―も呼んで王都の勢力図がはっきりしないうちは、ただこの場所の責任者として、どうともとれる曖昧さで、レアル殿下寄りにもミルス王子寄りにも決してとられる事がないようにと言い聞かせた。


 それなのにアルドブまでエファラン公爵をけん制している。


 だから頭まで筋肉でできている輩は嫌いなんだ。


 エンブスお前、覚えていろよ!せっかく私が無難な道を示したというのに、これじゃレアル殿下陣営だと表明したも同じ事だ。


 レアル殿下の右そばに控える、それは命を懸けて守るという騎士の証し。


 王都からついてきた近衛の騎士が、その位置をわずかにずらし第3大隊の隊長であるエンブス大隊長にその場所を譲る。


 第3大隊は、グル―ノス帝国最強の兵団であり第1大隊の近衛兵とは最初から立ち位置が違う。


 その第3大隊のトップであるお前が、そこに立つという意味をわかっているのだろうな!


 まったく、エンブスめ覚えておけよ!いつもいつもお前は、お前のいう所のカンで動く。


 溜め息をつきたいのをおしこめ、脳内では我ら妖精族が人間族に対して言う罵詈雑言を一つ一つ並べ立てる。


 はぁ、仕方がないか、お前がただのペーペーから共に生きてきた。


 お前はこんな奴だったよな。


 アルドブと共に「息吹の草原」に駐在していて、すっかり忘れていたようだ。


 ならばこの私のするべきことは、ただ一つ。


 この堂々とした立場表明に、エファラン大公とその取り巻きが険しく睨んでくる。


 ほら見ろ、そう思いつつ、私はにこやかに「お茶でも」と声をかけた。


 にこにこと、とっておきの妖精スマイルだ。


 




 何とかエファラン大公とその側の人間を挨拶もそこそこに別の建物に案内し、「何も知りません。私は知りません」という態度をとり続け、人間族の間では最上級と認識される、我が妖精族の幻の里にいけばゴロゴロころがっているただの色つきの石、人間族のいう「竜の涙」といわれるそれを、加工するのも妖精族にしかできないそれを一つ二つ手渡して、大公の機嫌をとる。


 それからその足で大公の末の娘である「邪神の巫女」に目通りを願い出て、同じく私にしてみれば道端の石でしかないそれを贈呈した。


 その体中に、みえすいた献上品の山を身につけた「邪神の巫女」はひどく高飛車で品がない女だった。


 こちらが何も言わないのをいい事に、この私に色目を使ってくるバカだ。


 もちろん、当たり障りなく、持ち上げておく。


 その時、あまりに私に対してあからさまな態度をとるのに侍女の一人が、 


 「エスターバ様、いくら姫様でもお立場を。どうぞご自重あそばされませ」と注意する。


 まともな感覚な侍女もいるのかと思ったが、続く言葉にあきれてしまう。


 「ここにはレアル殿下がおられます、じきどちらかの殿下とご婚約あそばされる姫様です。あとでロウゼ様にはいらして頂けばよい事。夜は長うございます、どちらとお過ごしになられましょうとも」


 そう言って私を見て含み笑いする。


 婚約?私はまたまた妖精の笑みを安売りした、覚えておけ!エンブス!


 「ご婚約?ですか」


 私はがっかりしたように思わず、といった感じで聞いた。


 忌々しい事に、気持ちの悪い色を含んだ目で私を見ると、本人みずから話してくれた。


 「ええ、仕方がない事よ、私は邪神の巫女ですもの。次期皇太子妃にふさわしいと皆さまおっしゃるの。もちろん、私は自由ですけれど」


 そう言って媚を私に向けてくる。


 もう我慢の限界だった、これ以上いると、罵詈雑言を浴びせたくなる。






 レアル殿下の御座所にエンブスを迎えにいった。


 これ以上の深入りは危険だ、本来なら魔導師である私は、あのレアル殿下の直属の部下にあたる。


 エンブスの実力が認められ、最初にエンブスが願い出たのは、この私の第三大隊入りだった。


 それまでの数年間をレアル殿下の下で働いた。


 私もまた人間族であるエンブスにかぶれたのか、時折カンを信じる。


 そのカンが言うのだ、レアル殿下は危険だと。


 私はこの第三大隊に入るまで上手にレアル殿下から隠れていた。


 それなのに、このどう転ぶかもわからぬ局面であの単純バカが、よりにもよって!


 私からすれば、あの完璧な温厚さも物事に動じないひょうひょうさも、どうも薄ら寒く感じてならない。


 まるで猛獣や魔獣が身をひそめてエモノを狙っているようで。




 急いでエンブスを迎えに、名目上は、かの邪神と姫の様子をうかがう時間だといって許可をもらい入ってみれば、そこでは、レアル殿下と腹を割って話しているバカがいた。


 もちろん腹を割って話しているのは、うちのバカだけだが。


 レアル殿下もその右腕も、ふってわいたこの状況にまだ飛びつこうとしていない。


 それはそうだ、この不穏のおり、第三大隊のトップである男が自分寄りの立場をとった。


 この帝国の実質、軍のトップがだ。


 その男が突然こうした行動に出た、今まで自軍以外興味がないと言われ、すり寄る者も許さず、ましてや自分がすり寄るなど考えられないと認識されていた男だ。


 疑って当たり前だ、私もその立場なら突然の豹変を疑ってかかる。


 エンブスの右腕といわれる私が許可を受け入っていった瞬間、私からそれを読み取ろうとするレアル殿下達。


 エンブスは本気で話しているのだが、あまりの単純な言いようゆえに、まともにそれをとっていない彼ら。


 私は、最早忍耐はあの邪神の巫女という女で全て使いきってしまったらしい。


 レアル殿下のすぐそばで、教育係の腹心に「だから俺は・・・」と話していたエンブスの元につかつか歩み寄ると、思いっきりその頭を我が愛杖ではたいてやった。


 痛さにうめいて、頭をおさえつけながら屈みこむエンブスに、


 「だからお前はバカだというんだ。王宮の風を読むまでは曖昧でいろと言ったよな!それがどうだ!このありさまだ!」


 「あの公爵たちを敵に回したからには覚悟はできているんだろうな!キリキリ働いてもらうからな!この、戦以外は使えぬ能無しめ!」



 私が怒ったのはいつぶりか、先の大戦のおり以来か、もう一度杖を振り上げてエンブスをなぐろうとしたら、


「待った!待った!待てって!なぁ、仕方がねえだろ?俺が大事なのはこの国とそこに住む奴らだ。誰がてっぺんとったって関係ないけどよ、けど、な、これだけはダメだ。あの公爵とあの巫女は俺らががやっとつないだ糸を台無しにしちまう。」


 そう言って頭を殴られても痛くないようにかばいながらわめくエンブスに、そんなのどうにでも、と言いながら私が続いて怒鳴ろうとしたら、クククと、やがて大きな笑い声が御座所に響いた。


 レアル殿下が笑っていた。


 あの腹心たちもだ。



 



 結局レアル殿下が到着した日に、第三大隊の立ち位置は、こうして決定した。


 ありえないほど簡単に。

 


 




 

 




 


 


 

 


 

 

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