第1章 第27話 訓練
ほら、軍隊組の訓練が、とってもかっこいいでしょ。
だから私もやってみたくなったの。
もちろん、私は運動神経ないもの、だからジョーカーたち。
あれから、何とか片言だけど、なるべくしっかり意思疎通をはかっている。
食事の時に明日は訓練のお休みの日だと、うっすら何となくわかった、そういう話しだって。
それなら明日はうちらが訓練してもいいかなと聞いてみた。
なぜか、それを聞いたロウゼも、エンちゃん達も、文官のトップのハギアも、驚いたように私を見たけど。
あれ?あれれ?
何かおかしなこといったかな?訓練したいって言っただけだよね。
夜寝る前、ジョーカーに明日みんな集まるように伝えてもらった。
訓練するよ、おもしろそうだよ、絶対楽しいよ、って。
ふふ、強い個体の幾つかから、「遊ぶ~」と楽しい返事。
いやあ、明日が楽しみだ。
な~んも計画は立ててないけど。
やってまいりました。
訓練初日。
天幕からさらに離れた草原で訓練を昼食後にするの。
なぜかエンちゃん達から、訓練がみたい、との要望で、全員で天幕の所からピクニック気分でやってきました。
なんかシリ―が様子を中継?したいからいいか、っていうから、もちろんオッケーしました。
何か数人ががりで、変な事やっていたよ。
みんなでお昼ごはん食べてる最中もね。
うん、前にも私が触ったら、サ~って感じで崩れたあれ、あのミミズもどきのでっかいバージョンの時のあれもある事だし、私はちゃんと手を上げて「さわりません、大丈夫!」と誓いました。
あれでなんかもやっとした、かげろうみたいなので都の王様たちにも見てもらうんだとさ。
衛星中継みたいな感じなのかな?
私も映るかも知れないので、ちょちょっと髪を撫でつけました。
乙女だもの。
手を振った方がいいのかな?Vサインしちゃう?
でもさ、あまり意識してもさ、映らなかったら恥ずかしいよね。
微妙だ。
今ジョーカーには大きくなってもらって、私はその足元にいる。
さあ、みんなを呼ぼう。
ジョーカーが大きく声をあげた。
私も足元に手をやり、ちょっとかっこつけて地面をリズミカルに叩いた。
「おいで~。」
地の下を這うものに呼びかける。
地を駆けるもに呼びかける。
次に空に手をあげる。
空を飛ぶものに呼びかける。
大きな鳴き声が私とジョーカーに答えてくる。
どんどんどんどん空は翼ある子たちにおおわれる。
地を走る子と這う子たちで、みるみる草原もおおわれる。
それはあっという間だった。
さてはこの子たち、待ちきれなくてほんとに近くまできていたな。
かわいいやつじゃ。
ジョーカーもどんどん大きくなって、闘いモードに変態していく。
爪も牙も凄いことに皆なっている。
みんなのワクワクが伝わってくる。
え、え?殺る気モード・・・・。
ジョーカーが誇らしげに咆哮をあげた。
それにつられて皆も咆哮をあげる。
空からも草原からもすぐそばの頭の上からも期待に満ちた目が、心が私に押し寄せてくる。
ワクワク、ワクワク。
えーと、・・・・・誰と闘えと・・・・。
私はガバリと頭を下げながら、トトトとエンちゃんの所まで戻って、ロウゼの通訳を頼みの杖に、何したらいいかわからない、と素直に泣きをいれました。
で、現在エンちゃんの指示を仰いで、私が皆を動かしてます。
いってみれば壮大なマスゲームみたいな?
空を飛ぶものを五つにわけて、地を這うものもその特長に合わせ細かくわけて、ハート組みなども大きくわけて、演習みたいなのしてる。
最初は単純なチームごとに駆けたり跳んだり潜ったりだったんだけど、私との意志の疎通が完璧だと、それも時間差がないと知ると、エンちゃんたら複雑に隊形組んだり、空の子との連携した動きやらさせたりと、さすが凄いの。
ノリノリになって楽しみました。
甲冑組みの皆さんも最後は大盛り上がりで、声をあげていたし、文官さんたちも目を見張りながらいます。
で、・・・ジョーカーがすねました。
だってジョーカー規格外なもんで、同じことやっても周りの子吹き飛ばすし・・・・。
私と見てるだけ、んで、すねた。
あまりに不憫なので、最後の最後、ジョーカーだけで動きました。
みんなに見つめられて華のオオトリ。
はりきったジョーカーは空を飛び、地にもぐり、地を走り、それぞれ最強に近い姿になって頑張りました。
なぜか周囲がシーンと静まってしまいましたが。
あれ?




