第1章 第22話 君に決めた!
しばらく仔猫もどきに癒されていると、あのリーダーらしき人が、そっとそっと、私の元に寄ってきた。
そして、私を見つめて、じっと見つめて他意のない事を示しつつ、寄っていいか?ときいているのがわかった。
私はもうこの仔猫ちゃんと遊ぶのも飽きてきたし、う~ん、どうしよっかな?とジョーカーを振り返った。
ジョーカーは小さくなって私の背後にいる。
殺る気満々を隠そうともしないジョーカーに、腕の仔猫が怯えて震える。
あっ、もう脅かしちゃダメって言ってるのに・・・。
しっしっと腕でもっと下がるようにジョーカーに言うと、他の子たちと一緒になって、しょんぼりする。
うっ!カワイイ!かわいすぎる。
やっぱ勝者は、うちの子たちだね。
でもあまりのカワイサにSっ気に目覚めた私は、放っておいた。
私は、膜をもう一度自分の体にまきつけ、身だしなみ・・・身だしなみだよ!なんか文句あるって感じに自分に言い聞かせ、リーダーさんの元に自分から寄り、「待ってて。」ってジェスチャーをした。
トテトテと急ぎ足で、さっきのローブの人の所にいき、仔猫ちゃんを、「ん!」といって返した。
何か行動をおこすのってタイミングが大事だと思うわけよ。
さっきは、彼らを殺しちゃうにはいいタイミングだったけど、今は何か違う。
だから私はジョーカーたちに、やっぱり食べちゃダメって、お願いした。
だってさぁ、ここで「ワー」って感じで襲っても、何か間抜け感たっぷりだもの、残念な感じ。
リーダーさんが、私とジョーカーたちを指さす。
それに、私はライオンもどきのハート一族の子をちょちょいと呼んで、だってこの子の尻尾は蛇たちじゃないから、頼んでそのふさふさの、これだよ、これが尻尾だよ!王道だよ!っていうので、地面をファサファサしてもらった。
よし!準備オッケイ。
私はジョーカーを呼ぶと更に小さくなってもらい、その右足をおもむろにつかんで、いざ、その爪で地面にお絵かきをした。
ほら、ジュッてなって地面が焼けるから、お絵かきにもってこいだもの。
リーダーさんに、みてもらうのさ。
まず、棒を丸くしたような絵を書いて、それに牙をつけてジョーカーたちをいくつか書いた。
そこに丸を書いてリボンをつけて私の絵をたす。
そして仲良く手をつないでいるとこまでを描いた。
意味は・・・・わかるはず、うん・・・・、わかる?よね?。
リーダーさんがジョーカーをとても意識しているようなので、書き終えた私はジョーカ―の右足をペイっと捨てて、ジョーカーに下がるように言った。
リーダーさんは顔色が悪いようだけど、私の書いた絵のそばに屈みこむと、頷いた。
よっしゃ!
見るとリーダーさんが、腰の短剣を指さす。
何度も私に指さしながら、何かを伝えようとしている。
私の書いた絵を指さし、自分の短剣を指さす。
はっきりいって訳が分からん。
けれど、繰り返し単純な動作を繰り返すリーダーさんや、その後ろで固唾をのんで見守ってる仲間の皆さんに、「おバカ」認定されるのが嫌で、日本人の得意技「あいまいな笑い」でその場を乗り切る。
するとリーダーさんは、ほっとしたように、腰の短剣から鞘の部分をだし、その鞘の先端の飾りみたいなとがったので、私の絵に書き足していく。
おおっ!そうか、その意味だったのか、さっきのジェスチャーは。
本当はポン!と手を打ってやりたいのを我慢して、知っていたよ~、ってな雰囲気を出す。
女は見栄も大事だかんね。
まして、私の恰好をみれば、なおさらだよ!
リーダーさんの絵はうまかった。
ちゃんと人間ってわかる絵。
私の書いた棒とか丸とか・・・考えちゃいけない、情けなくて口から魂でちゃうから。
リーダーさんの絵は、手をつないだ私とジョーカーたちに向かって、自分も手を伸ばす絵だった。
私は、この世界で最初に出会った村人Aさん方を見た。
この世界に生きている方々、それなりにキラキラしい恰好をしている皆さん。
そうして自分の恰好を改めてみた、「膜」・・・。
「ない!これはない!」
その瞬間、私は思春期の女の子としての当然の事、ちゃんとしたお洋服がきたい!の一心で、リーダーさんの手をブンブン握り、よろしくお願いしますと答えた。




