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第1章 第19話  手の平を舐める

聖子ちゃんたちに遭遇した気の毒な隊長さん視点です。

俺たちはグルーノス帝国最強とうたわれ、最大の数を誇る第3大隊に所属する第10小隊だ。


第1大隊は城内の警備を主にする近衛大隊で、第2大隊は城下を中心に代表的な街を守っている警邏隊だ。


我々第3大隊は全部で15の小隊に別れ、それぞれの小隊は100人ほどで構成されている。


その下に補佐隊が組み込まれ、2年に一度、その補佐隊から小隊員になるための厳しい試験が行われる。


第3大隊は隊長のエンブス様を見てもわかるように、厳然たる実力主義の、帝国最強の軍隊だ。


だからこそあの日たちどころに動いたのは我ら第3大隊で、多くの犠牲を出しながらも、あの突然あらわれた妖獣の後を追いかけ未だ町や村に出てくる妖獣と戦い続けている。


特にこの「邪神の息吹」に近い一帯は、禁足の地として立ち入らぬように、3か月交代で我々小隊が直々に警戒にあたっていた。


第10小隊もひと月前からここで警戒にあたっていた。


私、アルドブはありがたくも名誉ある第10小隊長を任命されて、もうじき1年になる。


いつものように騎竜や騎馬に乗って、天幕に居残り組を残し二手に分かれ「邪神の息吹」のソルネイ草原側を私達は見て回っていた。


いつものように見回りをしていると、神官であるロウゼが「ロキロキ草」の気配がする、と言ってきた。


「ロキロキ草」とは、年に2度「藍の満月」の時に爆発的に増えその通る道には何一つ残らないと言われている肉食の草に擬態する生き物だ。


我らのラオナ神のありがたい思し召しか、そんな凶悪な「ロキロキ草」は太陽のある刻限は本当のただの草と変わらぬほど火に弱く動くこともできぬ。


「ロキロキ草」は見つけたら、夜にはそばに寄らず太陽がでるその時に必ずその近辺の住民総出で、一筋すらも残さず退治するのが、当たり前の事だった。


神官の言葉にすぐさま「ロキロキ草」を退治すべく、われらは急いだ。


太陽の光の中の「ロキロキ草」など、我らの手にかかれば赤子の手をひねるより簡単に退治できる。


そうして急いで向かった我々が見たのは、ありえない光景だった。


粗末な布を被った子供が、ヨタヨタと「ロキロキ草」の上にいて普通に動いていた。


ありえない、この大陸にすむものが無防備に「ロキロキ草」に近づくなど。


まして子供のようだ。


部下の一人の「おい、手のひらを舐めたか?の声に、やはり皆が考えるのは同じだ、と思った。


「手の平を舐める」というのは、信じられないことがおこったら、手のひらを舐めてその場をきよめる、という、まじないみたいなものだ。


もう一度しっかりとみても、確かに子供が「ロキロキ草」の上を、はいつくばって動いていた。



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