第1章 第12話 いわゆる第1村人発見?てやつ
あのドっ、ドっという重い足音は、ラクダのような顔をした大きな馬にまたがりこちらに走ってくる総勢30人くらいの人々だった。
その中にはひときわ大きい、竜に似た生き物にまたがる5人の人間も含まれている。
私がコケの端の方にいるのを、一瞬驚いたように見てとると、何事か私に向かって声を上げながら集団で近づいてくる。
何やらひどく切迫したような雰囲気と会話だ。
何を言っているのか全然わからないけど、私をみながら話しをしているので私の事に違いない。
ほぇ~、これがこの世界の住人の皆さんか。
その馬にまたがる体には、鈍く輝く鎧と兜、腰には大剣をさしている。
テンプレじゃ~、私は目を丸くして見た。
兜をかぶっているので顔はわからないが、その体はでかい。
皆さん、がっしりとして、背も1メートル80以上ありそう。
その中でも背は高いが、とてもこの中ではひょろくみえる人が竜からおりて、私の所に近づいてくる。
歩きながら兜をぬぎ、共に近づいてくる同じように細い人に兜を預けた。
え、え、え~!リアル未知との遭遇です!
目は銀色、髪は白銀、そしてあの髪の毛から大きく飛び出てるのは、まぎれもないとんがった耳!
それほど私の地球人感覚から大きくそれてない容姿に、ほっとしつつ、もしやこの人が妖精族?と思い失礼ながら、ガン見してしまいました。
状況を忘れて・・・・。
身振り手振りでこの人が、このコケからおりるよう言っているのがわかり、おお!ジェスチャーは万国共通!どころか、異世界共通なんだなぁ!と感動してしまいました。
私は例のフニャフニャ膜を、頭からかぶるようにして、体に巻いているので、それが大丈夫かしっかりと確認しながら、ええ、だってすっぽんぽんまではいかなくとも、パンツ1枚ですから、私。
いやぁ、エース君ちに遊びにいくので、1枚しかないパンツをはいてきてよかった。
大事な大事なパンツなので、ふだんは、はかないでとってあった。
この世界の人との初の遭遇に、パンツをはいている事をえばる私ってどうかな?と思うけど、仕方がないよね、私だって女の子だもん。
・・・・膜をかぶってるのが、痛いけど。
私が言葉を理解していないのを知ると、その妖精さん、白銀バージョンが、自分の隣りの妖精さん、紫紺バージョンに何かを言って、その人が後ろにいる、ひときわ大きい竜に乗る人に、大きな声をかけて呼んだ。
その人はさすが群を抜いて大きな体をしていた。
私だって身長は160センチあるのに、その人が私のそばにくると、その人の胸のあたりまでしか身長がない。
お互いまだ少しの距離を取って向かい合っていたが、その人が一歩私に近づいた時、雷のような音があの山の方角から聞こえてきた。
ジョーカーだ。
ジョーカーが眠っていた目をあけ威嚇の声をあげた。
どうやらジョーカーはこの状況がお気に召さないらしい。
閉じていたあの赤い目をあけ、こちらに向かって威嚇の咆哮をあげているのが脳裏に映った。
ふん、何さ、今頃気にしても遅いんだかんね。
歩いて帰ろうとした私の、考えただけでもめんどくさくなった、あの悲しい決意を忘れちゃならない。
私のそばにきた集団は、ジョーカーたちがいる山の方を眺めながら、急に緊迫した、触れれば切れるほどの雰囲気をかもしだしている。
そりゃそうだろう。
ジョーカーの威嚇の声に呼応して、同じように風に乗って、かすかに咆哮がいくつも耳をすませば聞こえてくる。
結構離れているのに小さいけれど、聞こえるもんだ。
彼らはあわてたように私を見ると、何はともあれ、私を連れて行くと決めたらしく、あの大きなリーダーらしき男が、一気に私との距離をつめ、私をひょいと抱き上げ、自分の乗ってきた大きな竜みたいな生き物に乗せようとする。
けれどその竜は、後ずさり私を乗せようとしない。
男はチッと舌打ちすると、懐から何かの錠剤みたいのを出してその竜に呑みこませた。
すると、その竜は大人しく男と私を乗せて大きく方向を変えると走り出した。
ドっ、ドっ、ドっ、と今度は私をその仲間に入れて凄い速度で走り出す。
男は自分の前に抱きかかえるように私を座らせて、激しく上下に揺れる動きをちょっと大丈夫かと気にしているようだったけど私は全然平気だった。
なぜって?馬にも乗った事のない運動音痴の私でも、あ~ら不思議、この膜につつまれてると衝撃なんて全然こない。
ほら、究極の無圧布団だったあの膜の一部だもの。
そうやって走っていると男の一人が叫び声をあげた。
皆、後ろを一瞬振り向き、それからは2度と振り向くことなく最大のスピードで必死に駆けていく。
なぜなら、チラっとみた背後の、遠く見える山の方から、ここからはまだ小さくしかみえないけれど、あの子らが飛んでくるのが見えるから。
あの中でひときわ大きく見えるのは、眠りから覚めたジョーカーだ。