第1章 第11話 やっぱ迷子
夜中らしい時刻、何やらモゾモゾするので目が覚めたら、あら?不思議。
私はどこの魔法の絨毯だ!って感じに、地面をスルスルと移動していました。
モゾモゾと、大事だから二回言うけど、モゾモゾという感触を体に感じながら。
自分の体の下、そこらじゅう見える限りの一帯は、幻想的に緑色の光を発光しながらすべるような速さで移動している。
私は運動会で、あの大きな紅白の玉を頭上に流し競争するあの玉のように順繰りにすべるように、緑色に濃く淡く発光するコケらしきものの上を綺麗に流されながら移動していた。
凄い!ポケーっとする私は、その大きな満月の下、綺麗に蛍のように発光しながら、まるで大河のように流れいく動きに見惚れてしまった。
自分がその中にいるのが珠にキズだけど・・・。
そぅっとおきあがろうとしたけど無理、自慢じゃないが運動神経はひとかけらも持ち合わせていない。
何とかぺたっと座る事ができたけど、これほどの幅のなかここから抜けるのはめんどくさそうだしその労力を考えたら却下だ。
どうやら月の光を浴びて増殖しながら、こうして移動する生き物らしい。
ジョーカーが眠りの中で私をとらえるのがわかった。
状況を判断し大事ないと思ったのか、またこの世界につながりその力を取り込むために深く眠りに入った。
私はこのありえないくらい美しい緑のまたたきの中、思いっきり後ろに倒れ、大の字になって深い夜の空を見上げた。
うっとりと乙女路線に走った私を、あの時に戻れるのなら私は言ってやりたい。
「おバカ!」と。
月が隠れ、明るくなりつつ空に動きを止め、ただのコケに戻ったその上で、私は自分があの山から大分離れた見知らぬ場所にいるのに気がついた。
あの遠くに見える山々から一晩で移動するって、あんたら・・・・褒めればいいのか、なんて事してくれたと怒ればいいのか。
どうやって帰ろう、気をすませてもジョーカーの気配しか感じない。
ジョーカーは私に危険はないと、またもや判断したみたいでそれ以降私に意識を向けてさえこない。
わーったよ!わかったよ、いいよ、いいよ。
うんさか歩いて帰るわよ。
基本、自由人?な彼らには期待せずに、自分の足でプラプラ戻ろう。
あんたたちの行動範囲と私の行動範囲は違うと思うのよ。
そこんとこはわかってんのかしら?
しかし、私のそのケナゲな決意は、やっとコケの端にとどいたくらいの時間しか持たなかった。
もろくも崩れ去ったその原因は、大きな足音が、ドっ、ドっ、と次第に大きくなりながらこちらに向かうのが聞こえてきたからだ。