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赤防災頭巾ちゃん

作者: 絆創膏

むかしむかしあるところに、女の子とその母親が仲良く住んでいました。

二人が住んでいるところはとっても不便でしたが、この二人は協力してとっても仲良く楽しい毎日を送っていました。そしてその様子を覗くのがもっぱらの楽しみな私。・・・いえいえ、ストーカーじゃないですよ。いやちがいますってば。

さて、今日もその様子をちょっとだけ覗いてみましょう。



あ、いたいた。森の中にポツンと建っているログハウスが、この二人のお家です。ちょっとお邪魔しちゃいましょう。

「・・・ゴラァァ!!!なにやっとんじゃボゲェェ!!」

「ご・・ごめんなさいお母さん!!・・・・・・きゃあぁぁっ!!」ガシャーン


・・・・・・・・ん?あれ?私の耳の調子がおかしくなったようです、失礼しました~。それじゃ気をとりなおしてもう一回、おじゃましま~す。

「洗い物もろくに出来ないなんて・・・あんたなんて生まなきゃよかったよ!!」

「お、お母さん…ごめんなさい!ごめんなさい!」


あれれれれ?いつも仲の良い二人なのにな~。おかしいな~。それは本当だよ?

・・・・・・ってああっ!理由が分かりました!お母さんの傍にころがってるワインのビン数本、あれだー!お母さん、かなりのアル中なんです。だからお酒をのむと人格が変わっちゃうんです、許したって。


しかしかわいそうに、女の子泣いてます。大丈夫、アルコール抜けたら元のやさしいお母さんに戻るから。お母さん自分が凶暴なときの記憶ないから。だから思う存分、優しいバージョンのお母さんに甘えるといい。


「もういい!アンタ、おばあのところに見舞いにいきな!」

「グス・・・、わ、分かりました・・・」


信じられないことに、お母さんは女の子をひとり送り出そうとしています。女の子、逆らうこともなく素直にバスケットを手にとぼとぼと出て行きます。


危険だ、追いかけねば!どうしてかって?それはね、お母さんと女の子が住むこの森に、とっても凶暴で残忍な獣たちがうじゃうじゃいることで有名なんです。だからひとりで外にでるのさえ危険なんです、女の子は家からひとりで離れたことがないくらいなんです・・・まあ、悪いのは住むほうも住むほうですね。


それでも二人がここにいる理由は、この凶暴な動物たちのお肉が、とってもジューシィーでおいしいからなんです!見た目筋肉質の動物でも、信じられないくらい美味しいんです。特にお母さん特製のミートパイが。・・・え、なんで味を知ってるかって?そりゃあ、あんた・・・・・・


って、女の子が行ってしまいました!ええい、おかんも捨てがたいが女の子が心配だ!!私は慌てて女の子を追いかけました。

意外と歩くのがはやい女の子、しばらくしてやっと追いつきました。ぜえぜえ。


しかし、とぼとぼと森のなかをそのかっこうは森を歩くのにまったくふさわしくありません。ふだんきている木綿のドレスに前掛け、でこぼこ道を歩きにくそうな編み上げブーツに、まるで狙ってください!とでもいわんばかりのまっかな防災頭巾。・・・なぜ防災頭巾?


そしてそのうしろをこっそり着いていく私、背後から忍び寄る獣を音もなく排除していきます。安全第一!それくらいはできるんだぜ、なめんな!


さてさて、向かっているおばあさんの家は、これまたなぜか山のちょうじょうにあります。つまり、道からはずれても上へ上へと登っていけば必ずつくということなんですね。すでに女の子は山の中ほどまで登りおえています、それほど高いわけでもないのでこの調子だとお昼くらいにはつくでしょう。既に疲れてきたおじさんの体力が持つうちに、さあ、脇目もふらずレッツゴウ!ゴーズアンドリターンズ!!


「あら、なんてきれいなお花畑」

って違う!寄り道しちゃだめええ!!だめだって、おじさんにも限りがあるの。もう限界疲れてきた・・・獣ヤバイ!なぜ途切れない!連携プレイのごとくめちゃおそってくるから、おじさんの腹の肉ねらってるから!花畑燃えろ!


「これ、おばあさんに持ってったら喜ぶかしら」

!!なんていい子なんだ、君って子は・・・・じゃなくて、女の子も囲まれてる!囲まれてるから!気づいてくれ、逃げろおおおお!


「・・・こんにちは、お嬢さん」

「!!・・・何?」


女の子に話しかけたのは・・・狼。狼が二足歩行で話しかけています。なぜ狼が喋るのかと疑問を持つことなく返す女の子、でも私から見たら狼の皮を被った人間にみえます。ここらのボスなのでしょうね、狼があらわれた途端に獣たちはにげていきました。


「お嬢さん、あっちにはもっときれい花が咲いてるって教えにきたんだよ。」

「もっときれいな花・・・?いえ、いいわ」

ちょっと惹かれながらもきっぱりと断る女の子、日ごろからお母さんに知らない人には着いてっちゃだめって教えられてるもんね!えらい!


「行かないのかい、そうかい・・・残念だよ」

狼は肉食獣の眼をぎらりと光らせましたが、案外あっさりと引き下がりました。

「さようなら、お嬢さん・・・(おばあさんのところで待ち伏せするかね)」


ん?・・・心の声が聞こえてきたような気もしますが、とりあえず目先のことはよし。引き続き花を摘みだす女の子、リラックスしたのかバスケットからミートパイを取り出してむしゃむしゃ食べはじめます。・・・それ、おばあさんへの贈り物じゃなかったっけ?

しばらくした後、ようやく女の子は歩きだしたのでおじさん一安心しました。

そして何事もなくおばあさんの家へ。


「おばあさん、私よ」

「ああ、お入り」


気のせいか、おばあさんの声がいつもより低いような・・・?女の子がバスケットの中身(ワインと一切れ欠けたミートパイと、それを隠すための花束)を置きながらおばあさんに言います。

「おばあさん、なんだか前より大きくなったわね」

確かに、おばあさんが寝ているベッドのふくらみはいつもの二倍ほどもあります。


「いやいや、きのせいなのだよ」

おばあさんはしわがれ声で答えます。


「それにしても、おばあさんの耳はどうしてそんなに大きいの?」

「それはね、お前の声をよーく聞くためさ」


おばあさんのベッドの横にこしかける女の子、なおも追求します。

「それに、どうしておばあさんの眼はそんなに大きいの?」

「それは、お前の姿をよく見るためさ」


「それから、どうしておばあさんはそんなに毛深くなっちゃったの?」

ベッドからでているおばあさんの手には、びっしりとごわついた毛が生えていました。おばあさんは手をひっこめながら答えます。

「それはね、・・・えーと、脱毛処理し忘れたからさ」


おばあさん、それはちょっと無理があります。窓の外からこっそりのぞいていた私は、こっそりつっこみを入れます。もうおばあさんが狼にしか見えません、私は背負っていたライフルを音もなく構えました。


「おばあさん、どうしてそんなに口が大きいの?」

「それはね、お前「お前を食べてしまうからに決まっているだろう!」」


窓を突き破って登場する私、女の子がぽかんと口を開けています。

「ふせていろ、ナンシー!!」

ライフルを狼に向け乱射、立ち上がりかけていた狼は弾の餌食になります。状況が把握できていなかった女の子は泣き出しました。


「やめて!やめてパパ!」

「ぐ・・・・・・」

狼が床へと倒れこみます、それを見たナンシーは悲鳴を上げ駆け寄りました。


「なんてひどいことをするの、パパ!」

ナンシーが私を睨み上げましたが、かまわず大声を出しました。

「お前を食べようとしたんだぞ、この狼は!」


「違うわ!彼は・・・彼は、友達なのよ!」

「・・・・・・えっ??」


私呆然。ナンシーは私を敵のごとく殺気を放ってきます。・・・なんだか気が遠くなってきました。

「今日だって、私にサプライズパーティーを開いてくれようとしていたのに!途中の花畑で時間を稼ごうとしたときから気づいてて、楽しみにしていたのに!・・・パパのせいで、もう、めちゃめちゃよ!」


よく見ると、部屋の中には色とりどりのわっかと垂れ幕、『ナンシー誕生日おめでとう!』の文字がありました。台無しにしたのは・・・私。

・・・・・・・・・・・・・・・・・崖から飛び降りてこようかな、俺。


「狼さん!狼さん!」

女の子が狼を揺すります。血だまりに横たわり、うめき声もなくなりつつある狼。その時、おばあさんが窓から入ってきました。


「よお、ナンシーいらっしゃい。・・・・・・って、そいつは!犬っころおおお!!」

どうやらお知り合いらしく、持っていたかごを放り出して走ってきます。まともにラディッシュの山を頭から浴びる私。

「犬っころ!おい、しっかりしろ!おいっ!」


「・・・もうだめなようだ、ナンシー。せめて最期に彼の願いを聞いてやろう・・・」

息も細くなってきた狼を診て、おばあさんはゆっくりと頭を振りました。女の子が狼にしがみつきます。立ち尽くしたままの私は完全放置。

「いやあ!」

「もういいのだよ・・・お嬢さん。僕の最後のお願いを聞いてくれ・・・」

狼が息も絶え絶えに小さな声で呟きます。聞き逃さないように、女の子が狼に被さりました。

「ええ、ええ、もちろんいいわ。・・・なあに?」


「お願いだ・・・僕の・・・僕の・・・ぅに・・・てくれ・・・」

「えっ?なあに、聞こえないわ!狼さん・・・」


そのとき、覆いかぶさっていた女の子の唇が偶然、狼の口に触れました。そしてその瞬間、部屋いっぱいを眩しい光が覆い尽くします。たまらず目を覆い隠す私たち。やがて光が収まると、そこには驚くべき光景があったのです。



「お、狼さん、あなたなの・・・??」

「初めまして、お嬢さん」

・・・・・・そこには、プラチナゴールドの髪も眩い王子様が立っていたのです!!女の子はその高貴な顔だちに、おばあさんはその最高級の仕立ての洋服とマントに、私はその王者の品格に目を奪われていました。王子様が生まれながらに持ついろんなものに圧倒されます。王子様はおっしゃいました。


「私は隣の国の王子です。魔女に狼になる呪いを掛けられていました。そして、それを解くためには、乙女の口づけが必要だったのです」

「えっ、いやそんな、あの狼さんが王子様だったなんて・・・!」


女の子、ひたすら照れまくっています。狼だったからって、王子様としちゃった訳ですからね。そりゃ照れます。真っ赤になった女の子の手を取って、王子様が跪きました。その姿は昭和チックな女の子が皆憧れる、まさに、まさにあのシーンでした。


「よろしかったら、僕と結婚してください」

「・・よ、よろこんで!!」

女の子のテンションはダダ上がりです。まるで夢のようだわ!とほっぺをつねってみたりして、王子様にそっと手をとられて止めさせられたりしています。おばあさんは「あたしの若い頃を見ているようだねえ」なんて暖かい目で見守っていました。そして私はというと、・・・扱いが背景と同等です。


「さあ、そうと決まれば我が国に知らせましょう!」

王子様が立ち上がります、女の子もぽわんとしながら頷きました。


「じゃあ、私もおっかさんのところまでひとっ走りしてくるよ」

おばあさんも立ち上がります。持病のぎっくり腰はどうなったのでしょうか。


「あの・・・・・・」

忘れ去られそうだった私は、意を決して声を上げました。女の子が、振り返ったかと思うと冷たい視線を投げかけてきます。

「あれ、パパまだ居たんだ。ママに言って正式に離婚届だしてもらうから、よろしくね」


王子様も同時に振り向き、困ったような微笑を浮かべたまま私を見遣りました。よく見ると、目は笑っていません。

「きっかけを頂いたのだけは感謝します。ですが・・・、私の国には一歩も入ってこないでくださいね。結婚式にも招待しませんから。」

そうして三人は出て行き、森の頂上の家には私一人が取り残されました。



 むかしむかしあるところに、赤い頭巾を被った女の子がいました。

 ある日、森に住んでいた女の子は、狼と仲良くなりした。

 しかし、いつものように遊んでいた二人を猟師が見かけました。猟師は、女の子が襲われていると勘 違いして狼を銃でうってしまいます。

 狼は倒れ、女の子に最後のお願いをしました。「私に、口づけをしてくれ」と。

 女の子がその願いをかなえた途端、そこには麗しい王子様が立っていました。

 王子様のプロポーズを受け入れた女の子は、王子様と結婚し、末永く暮らしましたとさ。


おしまい。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 題名がもう少し面白いとよかった。 [一言] はじめまして、あくまでと申します。 素直に面白かったです。それだけです。でわでは
2011/02/19 12:15 退会済み
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