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Californication

作者:
掲載日:2026/03/10

タクシーに乗った。

乗った途端に、

「行先はいつもの耳の穴ですか?」と運転手に聞かれた。

私は「いいえ、■■動物園までです」

と答えた。

「■■店までですね、いつもご乗車いただきありがとうございます」

と囁いた、私に聞こえないボリュームだった。

よく聞こえなかったので、私はそっと背もたれにもたれ掛かり、片方だけイヤフォンを耳に差した。

半分だけの音、半分だけの世界。

私の頭はぷつりと切り分けた。

タクシーは静かに走っている。

しばらくして運転手さんに聞いてみる。

「■■動物園までであってます?」

「着いたら教えますよ」

ふと目に止まった助手席後部の背もたれ、運転手の名刺が入れられたケースがある。

そこに目を凝らすと、

「あなたの思う日を、ありがとうございます。」と運転手の名刺が入っていた。

そっと手に取り、ポケットに入れる。

じっとり濡れた後乾いたような、嫌な感触がした。

「昨日ニュース聞きましたよね。

ほら、あの喫茶店の店員が突然消滅した、目の前でざああって、砂嵐みたいに」

片耳だけで聴こえる情報は、どこか嬉しそうに信号を送る。

イヤフォンを突っ込んだ耳からは

Red Hot Chili PeppersのDani California

が流れていた。

タクシーはまたしばらく走る、突然軽快に流れていた音楽にノイズが走る、ぴーざざざあ。

耳が痛くなるがすぐに音は元に戻った。

思わず運転手さんの方を見る。

バックミラー越しに見る運転手さんの顔は、死んだ魚のような目をして無表情にそこにあった。

「今日は暑いですね」

何となくその場をやり過ごそうとして私は話しかけた。

「山の中の一軒家、あそこに行ったらどうです?耳に弾を込めると成功しやすいそうですよ」

私は笑いながら

「へえ。そうなんですね」

と答えた。

しばらく走ったところでタクシーが停まる。

ちょっと高いなと思いつつ料金を支払いながらも、私はここで降りるべきかどうかが分からなくなっていた。

片耳からは相変わらずDani Californiaが流れている。





ここまで読んでくださりありがとうございます。

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