神の領域3
……ようやく。
永い眠りから醒めるように櫻は目を開いた。
視界を覆うように、3つの顔がこちらを見下ろしている。
グランギニョルの、民だ。
「……あ、…え…」
「アウラさま!」
涙声で明るく微笑みかけてくるパメラに視線を合わせ、櫻は翳った眼差しを隠すように腕で覆った。
暗闇がやけにリアルで、だから余計にあの時間が嘘ではなかったことを知覚する。
「……アウラ?」
目を開ければ赤い髪の青年もそこにいる。
それを知って、櫻は堅く口を閉ざした。
知られたくない。
知られたくない。
泣きたくないから。
一人にして。
喪失の思いを知られたくなんてなかった。
……知られたく、ないのだ。
一人に。
一人になった。
―― あの『箱庭』とやらの民は、櫻だけ。
「一人に、して」
* * * * * * * * * *
雑音が、嫌いだった。
絶え間なく人々の間に生まれる雑音は、いつもいつも、櫻を不快にさせるから。
明るい春の日差し。笑顔の人、人、人。
身近の人はどこまでも大切なのに、それよりずっと多い他人は、いつも櫻を不快にさせるのだ。
けど。
だけど。
「……っ……っ…………っう」
失っていいはずがない。
あの世界だって、美しかった。
愛していたのだ。
櫻はベッドに寝転んだまま、ひたすら顔を覆って泣いた。
櫻の部屋は広い。寝室の扉までも距離がある。
けれど、声を殺して、ひたすら泣いた。
大切なともだち。
家族。
それを失ったと考えることより、あの世界が消えてしまった喪失感が櫻を覆い尽くす。
もう、あの大地を踏むことはない。それはわかっていた。知っていたはずなのに。
思い起こしては、どうしているかと願うだけでいいと、ひっそりと思っていたのに。
願う依代さえももう。
この世界の果てまで探しても、どこにもない。
ぎゃー!前半抜けておりました。
すみませぬ。。。