神の領域
”最後のアウラ”
―――ピアノの音が、した。
櫻は、はっとして顔を上げる。
思わず窓の外に視線を向けた。
遠くから、近づいてくる音色。少しずつ、歩くように、軽快に近づいてくるこれは、違う、そうじゃないそうじゃなくて…
「……違う、ヴァイオリンだ」
思わずもれた呟きに、ヴィスドールは弾かれたように櫻を見た。
櫻はその視線に気づいていたが、遠くから少しずつ、次第にはっきりしてくる音色に集中したまま、動かない。
踊る、踊る、軽快に。
歩きながら、ステップを踏む。
ヴァイオリンのリズムが舞踏に変わる。
……どこかで、激しい太鼓の音が、する。
何だろう、まるで、儀式のような。
遠くから、そう、遠くから。
まるで。
櫻は立ち上がって空を見上げた。
「―― 空、から?」
空から降ってくる。
激しいダンス。大勢の声。叫ぶように歌う声たち。
溢れてくる。
空から降りてくるのだ。ステップを踏んで、踊り狂いながら。
ヴァイオリンは、激しく引き裂かれるような音色を上げて響く。
「…………やめ、て」
うるさい。
うるさい…っ
近づいてくる。
頭の中まで。
「……ひっ、」
強く耳を塞いだ。
けれど音は消えない。
それどころか、一層音を増して。
「やめ、っつ、」
ぐるぐると。
気づけば頭の中でそれは鳴り響いていた。
狂うように。
舞いながら。
笑うように。
うるさい。
うるさい。
うるさい、うるさい、うるさいっ!!
―― 頭の中がそれらの音で溢れかえったその瞬間。
櫻は意識を失った。
短くてすみません。
今日中にもう少し進みます。
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ちなみに一応活動報告で近況報告しております(ぺこ)