うちはイタチ二次創作
「イタチ…私のこと好き?」
「あぁ…俺もだ、撫子。だが最近お給金が少なくなっているんだって?大変そうだな…3割減か。俺の暗部での仕事が捗っている今日この頃にしてはいささか不景気な話だ。俺のお金を分けてやりたいところではあるが…」
「ううん、いいの。私はちゃんと考えてお金を使ってるから。あなたのお父さんは上の立場で色々大変だろうしそちらのことを気にしてあげて。」
「残念だが俺の父親は酒が酒飲み友達みたいなものだ。同僚との関係を仕事のみとして考え、かつその上で酒を家で少し煽っている。一番タチの悪い奴だ。酔うこともなく俺と語り合うこともなく…人として何が重要なのか…俺としてはいささか身に余ってしまう心持ちだ」
「そうなの…。私が何か出来ることない?イタチのために何かしてあげたいの。今日だったら午後からは時間が空いてるからイタチのために何か作ってあげたりとか。最近イタチ少し変だし。未知のウイルスの病気にかかったり歩いてる途中でいきなり高熱にうなされ出したり…本当にどうしたの?」
「今は大丈夫だ。そんなことより最近身の回りに変化は無いか?」
「え?何?例えばどんなこと?お金回りとか?」
「…いや。それならいい。俺としては…高熱にうなされながらもちゃんと撫子のことを考えていたこともある。どうしても撫子のことが気になってしまってな。余計な心配をさせてすまない。」
「そんなに私のことを心配してくれてたの…。ごめんね、私のことでそこまでイタチの頭を悩ませてしまって…。どうやって償いをすればいいのかしら…」
「お前は何も気にしなくていい。俺はただ撫子のせいにすることで自分の普段の任務の罪悪感を忘れようとしているだけだ。今も…ううぅ!ああ!フラッシュバックか!顔が誰かも分からない人見知りめ!関わりたくもない!手に余る!」
「落ち着いて!イタチ!ゆっくり深呼吸しましょう?ス〜、ハ〜…、ス〜、ハ〜…、大丈夫?落ち着いた?」
「ありがとう、撫子。いささか気分が楽になったようだ。………。俺は…」
「何?イタチ?」
「いや、何でもない。今日のところは帰らせてもらう。」
「そう?じゃあお仕事頑張ってね」
「あぁ。俺も頑張らせてもらう」
イタチは恋人であるうちは撫子に優しく手を振って自分の家へと歩き出した。
俺は撫子のことをどう思っているのだろうか……
イタチはふと思ってはいけないことを思ってしまった。暗部である自分がなすべきは人の暗殺。恋人のことを考えてしまってはうちはと木の葉の里の名が廃る。自分のせいで他の者たちに迷惑をかけるわけにはいかない。だがふと思ってしまう…
俺は撫子を殺せるのだろうか…?
イタチは5日後にうちは一族全員を抹殺するという極秘任務を抱えてしまっている。もちろん撫子にも秘密中の秘密だ。殺戮対象にはもちろん恋人の撫子も含まれている。両親は殺せるとして撫子は殺せるのか…?考えてはいけないことをどんどん考えてしまう。ある種のゲシュタルト崩壊にも似たくだらない思考のループはここ最近激しくなった。
撫子を見ていると妹のように思えて離れられなくなる衝動に駆られる。それを殺すなど…自分はホモセクシャルじゃないのか?、と思考実験にも似たことを考えて苦笑してしまう自分がとても儚い。
そんなことを考えているうちに家に着いた。
家では母親が別に食べたくもないのにどうでも良い料理をそこはかとなく作っている。若者らしく何年も生きていればこの行為のありがたみの良さも分かる気がしていたが極秘任務も関係なくどうでも良い。…撫子の手料理なら別だが。
「母さん、父さんは?」
「あぁ、おかえりなさい。父さんは一族の会議よ」
「分かった。」
イタチはそれだけ確認すると自室に入り横になった。
あと5日か…
それから目まぐるしく時は過ぎた。
撫子とはそれなりに蜜月の時を過ごした。たまに性交渉をしたり何気ない会話をしたり…俺みたいなやつを相手にこの女の子は何を考えているのだろう?、そう思いながらイタチは撫子と最後になる時を過ごした。その間だけイタチはたしかに極秘任務のことを全く忘れられた。
5日後の夜…
「今日…今からだな。」
イタチは撫子に渡した恋文を思い出しながら里からの書簡を火遁で燃やした。…そういえば元々撫子が俺のことを好きなのを俺は何となく分かっていたな、…それを分かっていながら恋文を渡すなど俺はクズだ、アイツを殺すのは俺の義務だろうな、願わくばうちは撫子の名の下に断罪されたいものだ…、そう独りごちながら苦笑するとイタチは目つきを変えちょうど部屋から見えた父親に似た酒飲みの酔っ払いの同胞を八つ裂きにした。
まず1人…
イタチはそれを頭の中で反芻するとその次は迷わずある家を目指した。
「フンフンフン♪」
鼻歌を歌っているショートヘアーの少女はお昼間に話した恋人との会話を思い出してはご機嫌のようだ。
「イタチがあんなにも私のことを…!キャー!もう!昨日も抱かれちゃった!絶対何か食べさせてあげよ!」
うちは撫子はそう言いながら翌日に恋人に渡す料理を作っている。その恋人はもちろんうちはイタチだ。
「…ここだったな」
イタチは撫子の家のベランダに着いていた。
ドッ!
2人目…
イタチは速やかに2人目の同胞であるうちは撫子を殺すと3人、4人…10人、20人とあっという間に同胞を殺し尽くしていった。
あと何人だ…?まだこんなに…?少し遅過ぎるな…
イタチはあらかたうちは一族を刈り終えたところで頭にうちは撫子の背中が蘇ってきた。
何故だ?何故俺はコイツを思い出す?何もおかしいところなど無かった。速やかに暗殺は成ったはずなのに。何故か思い…考えてしまう…
「何故撫子は後ろを振り向かなかったんだ?何故一言も言葉を発さなかった?」
イタチはやはり考えてしまう。
撫子は俺を今も欺き続けているんじゃないか?撫子は俺を騙している、それを考えた時イタチは初めて撫子と気持ちを共有できた気がした。
この5日間イタチは撫子と普通の会話をした。何気ない声を聞いた。いい雰囲気になり性交渉もした。その「何気なさ」を「違和感」として感じてしまう今。うちはイタチはうちは撫子に気を遣われてしまっていた?極秘任務を気取られていた?そう思わざるを得ない何かがうちはイタチの頭の中を支配する。
「うあああぁぁぁぁ…!撫子………!!」
言葉にならない言葉が頭の中で延々と乱立する感覚。それを感じながらもイタチは速やかに一族を殺していく。撫子が死んだ=撫子は全て分かっていた、そうなってしまった時イタチはこの世の人たちを全く考えないようにした。
そう考えた時、イタチは眼科に弟が走っている姿が見えた。