天国への階段
11月の冷たい雨が呼び起こした思い出は、Led Zeppelin の Stairway to Heaven や Rain Song も良いけれど 、ベトナム戦争の反戦歌としても知られる(ただし本人はその意図はないと否定したらしい) Creedence Clearwater Revival の Have You Ever Seen the Rain? を聴きながら読んでほしい。
Joan Jett 姐さんのこの曲のカバーもお薦め。
二昔前、ベトナム サイゴン*1に駐在していて、郊外の工場までLambretta*2で通っていたのですが、南国とはいえ夕方スコールの中を数十分走っていると結構体が冷えるのです。
*1 当時、既にホーチミン市と改称されて20年経っていましたが、サイゴンと言うほうが(今でも)一般的でした。 東洋のパリと呼ばれていた時代を偲ばせる洒落た感じがあるし。
*2 60年代のイタリア製スクーターをレストア・フルペイント、モッズ仕様にして確か$1,200だったか、当時はベトナムで古いVespaやLambretta、BMW(二輪)等を買い付けて自国へ出荷する日本人や欧米のブローカーがいたのです。
その日は、スコールの中走りながら、久しぶりに寒さを堪能しようなんて思いついて、テーブル席がいくつかと7、8人が精々のカウンターの小さなレストランバーに、ファサード横でタオル絞りながらシャツとズボン拭いてから入っていき、小太りで口髭、蝶タイのいかにもバーテン然とした初老のバーテンに「体の温まるホット・バタード・ラムか、アイリッシュ・コーヒーお願い」とオーダーしたところ、それならちょうどいいのがあるから任せろと。
昔、米兵に教わったカクテルだとか言いながら、大き目のオールドファッションドグラスにお湯を入れ、ライムの皮をらせん状に剥き(Horse's neck、なろう的には縦ロールと表現すべきか)、メジャーカップにダークラムを注ぎ火をつけると、バースプーンでグラスの上に掲げたライムの皮に少しづつゆっくりと垂らしていくのでした。炎を纏ったラムがすべてグラスに流れ落ちると、縦ロールをグラスに飾り入れ、ライムの実を絞って提供されたその味は、
当たり前ですが、(酒精が抜けて若干マイルドな味わいの)ごく普通のラムのお湯割り(ライム入り)でした。
ところでこのカクテルの名は?と問うと「Laddar to heaven」とのこと。 思わずStairway to Heavenだったら良かったのにとロック好きな自分は言いたかったんだ。 どちらにしても夕方早い時間で、他に客もなく、薄暗いカウンターを仄かに照らした光の階段にはお似合いかも。 カクテルなんて気障なのかダサいのか良くわからないネーミング多いし。
その後、日本に戻って、友だちのバーの手伝いしていたこともあるのだけれど、このカクテル、誰も知らないのです。 カクテルブックにも載ってない。
ちなみに先ほど検索したら、まだお店はありましたが、さすがにあのバーテンさんはいないだろうなあ。 梯子上って行ったかもなあ。