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ライオン転生  作者: 赤野用介@転生陰陽師7巻12/15発売
第1巻 ライオン転生

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07話 馬鹿ネコ6兄姉

 父ライオン達に挨拶した俺とリオは、メスライオン達の下に向かった。

 大人のメスライオンは6頭居て、木陰に集まり、グデンと寝転がっている。

 5頭は母ライオンと血縁関係があり、祖母世代もいる。

 だがメスライオンは15歳くらいまで出産できて、野生下で18歳までの生存記録があるので、出産後に3年の子育て期間を考えれば、生涯現役だ。


「ウニャーオッ」

「ウニャッ」


 子ライオンっぽく挨拶した俺達は、メスライオン達の集まりに突入していった。


「ガッォーッ」


 鳴き返したのは、俺を生んだ母ライオンである。

 呼ばれて向かう中、残る5頭のライオン達が、四方から俺達を舐めてきた。

 群れの子供は、皆の子供みたいなものである。

 だがメスライオン達の身体は、俺に比べてあまりにも大きい。

 動物園のライオンは、生後2ヵ月で8キログラム、3ヵ月で12キログラムになる。積極的にミルクを摂食した俺とリオの体重は、そのくらいのはずだ。

 そしてメスライオンの体重は、人間の成人男性の二倍もある。

 俺達とメスライオンとでは、新生児と成人男性くらいの体格差があるわけだ。

 それが一斉に構ってきたら、はたしてどうなるのか。


 ――どわぁ、ぬあぁ。


 俺とリオの身体は、舐められるだけで押し出され、左右にフラフラ揺れ動いた。

 俺は溜まらず、鳴き声を上げた。


「ウニャーオッ!」


 俺の抗議を理解できたのか、メスライオン達の大攻勢が弱まった。

 その隙に俺は駆けて、母ライオンの傍でドテンと寝転んだ。

 野生動物の奥義、降参のポーズである。

 すると母ライオンが顔を寄せてきて、俺を舐めた。

 流石に2ヵ月も舐めてきただけあり、母ライオンは手加減をよく分かっている。

 俺が善きに計らえとばかりに仰向けに転がっていると、リオは母ライオンの乳首に吸い付いて、ミルクを飲み始めた。


 ――大きさに、ちょっと差が出てきたからな。


 俺とギーア、リオとミーナは、目に見えて体格差が現れてきた。

 大きさは俺、リオ、ギーア、ミーナの順で、食事量の差が如実に現れている。

 成長期の栄養摂取は、身体の成長に直結する。

 戦いでは、身体の大きなほうが有利になる。


 オスライオンは、体重150から230キログラム。

 メスライオンは、体重120から180キログラム。

 280キログラムを超える個体が狩猟された記録も、複数が残っている。


 ――130でC-、190でC、280でC+かな。


 最強のメスライオンで、平均的なオスライオンに届くかどうかだ。

 リオは最強でも目指しているのか、母ライオンのミルクをゴクゴクと飲む。

 俺も負けじと、リオの隣に移動して、ミルクを飲み始めた。

 ゴクゴク、収納。ゴクゴク、収納。

 いざという時のための貯蓄は、とても大切である。


『ギーア、ミーナ?』

『そこに居る』


 リオの弟であるギーアと、俺の妹のミーナは、木陰で寝ていた。

 実際には兄や姉であるのかもしれないが、出生順まで分からないので、現段階の大きさで勝手に弟と妹とした。

 いずれリオよりもギーアが大きくなるが、それはライオンにとって一般的だ。


『寝るのも仕事だがな』

「ウニャウニャ」


 リオは、妹を気にせず、ミルクを飲み始めた。

 実際に気にしなくても良い程度には、母ライオンの食料事情は良好で、俺達は動物園くらいには安定してミルクを得られている。

 ギーアとミーナは、動物園の子ライオン程度。

 成長に意欲的な俺とリオは、より良い状態だ。

 群れに合流した後は、上の兄姉とミルクの争いになることもある。

 だが幸いなことに上の子ライオンは、哺乳期間が過ぎた1歳ほどと、独立が視野に入り始める2歳ほどで、ミルクの取り合いにもならなかった。


『兄姉達は?』


 俺が兄姉の所在も尋ねたところ、リオからの返事はなかった。

 リオのほうを見ると、どうやら眠気に襲われたらしく、スヤスヤと眠り始めた。

 そもそもライオンは夜行性で、昼間は木陰で寝ていることが多い。

 2012年6月、ペットのストレス軽減を目的とした動物愛護法の改正により、猫カフェの営業時間を夜8時までにする法案が通ったが、「猫は夜行性だ」と言われて、論破された環境省が「やっぱり夜10時まで認めます」と前言撤回したことがある。

 すなわちネコ科は、環境省が渋々と間違いを認めるくらいには、揺るぎなく夜行性である。


 ――寝る子は育つ。


 ゴロゴロと転がったリオを尻目に、俺はミルクを追加で補給した。

 そしてサバンナ……かどうかは分からないが、異世界の大地を歩き出す。

 ちなみにサバンナは地名ではなく、乾季と雨季がある熱帯長草草原地帯だ。

 ここは熱帯で乾季なので、あとは雨期があれば、サバンナである。

 そんなサバンナかもしれない大地を見渡すと、彼方に兄姉の姿が見えた。


『ライオンダッシュ!』


 偉そうに宣いつつ、俺はトコトコと駆け出した。

 オスライオンは、持久力が低い。

 それはオスライオンの身体が重いからでもあるが、心臓が体重の0.45パーセントに過ぎず、心肺持久力が低いからでもある。

 メスライオンは0.57パーセント、ハイエナは1パーセント。

 明らかに不利である。


 厚生労働省曰く、心肺持久力を高めるには、ジョギングなどの有酸素性運動が適している。

 心肺持久力を高めるトレーニングを行うと、肺や心臓の働きが強化されることで毛細血管が発達し、筋線維への血流量が多くなる。それによって酸素をとり込んで運搬する能力が高まり、長時間のエネルギー供給が可能となる。

 ようするに走れということだ。

 異世界転生時、幼少期のスタートダッシュが重要だと、読者の俺は学んだ。

 そんな知識に基づき、サバンナをトコトコと駆けて、兄姉達の下へと辿り着く。

 すると2歳と1歳の兄姉6頭が、皆で狩りごっこをしていた。


 ――狩りの獲物は何だ。


 兄姉の狩りごっこに参加して伏せた俺は、前方に黒い巨体を見出した。

 それは、たいそう立派な、オスのスイギュウであった。


 ――アッ、アッ、アホかーっ!


 俺は鳴き声を上げずに、馬鹿な兄姉の6頭を内心で罵倒した。

 父ライオン達が2頭で挑むなら、「今夜はスイギュウだね」と大喜びする。

 母ライオン達が6頭で挑むなら、「ママ達、頑張ってね」と安心して見送る。

 子ライオン6頭で挑むとなれば、「おい馬鹿止めろ」である。


 ライオンの体重は、1歳で60キログラムほど、2歳で100キログラムほど。

 ほかの肉食動物では、ブチハイエナが60キログラム、ジャガーが80キログラムほどになる。評価を付けるなら、1歳がDで、2歳がD+だろう。

 すると子ライオン6頭を合わせれば、戦力はスイギュウと同程度かもしれない。

 だが同程度では、半々の確率で負けるし、勝てても半数が死んでしまう。


 ――1回の食事で、群れが壊滅するわけだが。


 あまりにも無謀な馬鹿猫どもに、俺はどん引きである。

 どちらが勝つか賭けろと言われれば、俺はスイギュウが勝つほうに、嫌な臭いがするクロサイを賭けられる。

 なお払戻金は、同等のクロサイであれば、辞退したい。


 俺はソロソロと後退り、馬鹿猫どもから距離を取った。

 ちなみにスイギュウのほうは、ワケが分からず混乱していた。

 なにしろ道端で、小学生の男女が、成人男性に拳を構えてきたような状況だ。


「ブゥゥオオッ?」


 スイギュウは、「どうしたら良いの?」と鳴きながら、俺のほうを見てきた。

 俺はサッと目を逸らして、兄姉とは他人のフリをしたのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ベロンベロン舐められてゴロンゴロン転がる子猫大好き侍、大歓喜! [気になる点] ちょ…主人公、獣医?ライオン大好き博士ちゃん? 詳しすぎ!w [一言] 水牛さんに、アホの子ライオンのあとに…
[良い点] とまどうスイギュウ。 って、言葉が通じるんかーい。(w [気になる点] 投入したポイントと寿命の長さが釣り合っていないですよねぇ。辛い。解決策が望まれます。 [一言] なんとか大帝か あら…
[良い点] ライオン以外のコミュニケーションも広がっているようで何より 読者かもしれませんしね!
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