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ライオン転生  作者: 赤野用介@転生陰陽師7巻12/15発売
第2巻 炎翼虎と金狼

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60話 人化の宝玉

「レオン、リオ、可愛いっ!」


 獣人の軍勢を撃退した翌日、俺とリオは、ヨハナに私室で抱き抱えられていた。

 現在の俺達は、ライオンの身体ではなく、人化の宝玉を用いた人の姿である。

 年齢は、見栄を張って4歳くらいだろうか。

 10歳から11歳ほどのヨハナとは、大人と子供ほどの差がある。ヨハナにとっては、弟と妹の扱いなのだろう。


「グンター、これは一体どういうことだ」

「どうして3歳なの」


 金髪幼女と化したリオが、俺に続いて不満を訴えた。

 リオが話している言語は日本語で、グンターとは話が通じるので、リオも転生者で確定だろう。

 それに関しては予想していたので、今更である。

 ちなみに俺達が着ている服は、辺境伯から貰い受けた。

 金狼を討伐した報酬の一端である。


「お前ら、生後何歳だ」

「生後8ヵ月と10日ほどだ」


 若干曖昧なのは、正確な誕生日を知らないのと、カレンダーが無いからだ。

 リオの日本語が通じる以上、転生者が人類の暦を作っているはずだ。

 すると1ヵ月が31日ある月もあれば、2月のように28日しか無い月もある。閏年で、29日の年だってあるかもしれない。

 そのため俺は、大雑把に計算している。


「ライオンの1歳は、人間で何歳くらいになる?」

「5歳ほどだ」

「だったら、レオンが3歳から4歳くらいの姿なのは、年齢と合っているだろう」

「その発想はなかった」

「むしろ、その発想を持て」


 論破された俺は、呆然としたままヨハナに抱き抱えられた。

 今の俺は、生後8ヵ月を過ぎたライオンではなく、黒髪の4歳児である。

 俺が黒髪なのは、オスライオンのたてがみが、黒色になるからだろう。

 リオが金髪なのは、メスライオンの毛が黄褐色だからかもしれない。

 ちゃんと今世の身体を元にして、人化しているようである。

 10歳から11歳くらいのヨハナにとっては、小さな子供に過ぎないが。


「レオン、よしよし」


 ヨハナに頭を撫でられた俺は、溜息を吐いた。

 リオのほうも簡単に抱え上げられて、赤子扱いされている。


 ――元の体重は、一体どうなっているのだろうな


 首に掛けたペンダント型の人化の宝玉に触れた俺は、黄色に光る宝玉を眺め、首を傾げた。

 現在使用している宝玉は、俺が紅眼のダグラス、リオが金狼の娘イリーナから手に入れた物だ。

 金狼も宝玉を持っていたが、そちらも体重は軽かった。

 ヒッポグリフで運ばれる時には、体重が軽いと重宝しそうである。

 身体が大きかった金狼は、辺境伯領にヒッポグリフで移動するために、使ったのかもしれない。


「伝聞によると、人化の宝玉は、月の光で力を溜めるアイテムだそうだ」

「まるで狼男だな」


 狼の獣人らしい持ち物である。

 人間に変身するところが、正反対であるが。


「1ヵ月ほど力を溜めた宝玉で、3日ほど人化できるらしい」

「軍団長の宝玉は、輝きが強くて、大隊長はくすんでいる。違いは何だ?」

「宝玉に溜めている力の違いではないか。宝玉の性能差なのか、大隊長が使用した分が減ったのかは知らん」

「なるほどな」


 大隊長は最前線の港町を占拠していた。

 人に化けて情報を収集したり、領都に潜入したりと多用して、宝玉の力を消費していたのかもしれない。


「30日も力を溜めて、3日だけの変身だと、完全な人間生活は無理だな。年を取るのも早くて、村人に溶け込んで暮らすのは難しいだろう」


 俺は、リオに言い聞かせるように告げた。


「年を取るのが早いって、どういうこと?」

「ライオンと人間の寿命の違いだ」

「どれくらい違うの」

「ライオンは、人間の5倍も早く年を取る。俺達は、1年後に8歳、2年後に13歳、3年後に18歳。一緒に暮らしたら、人間側も大混乱だ」


 ヨハナがお姉ちゃんの立場を保てるのは1年後までだ。

 2年後には同い年、3年後には妹になってしまう。

 そこまでは良いとしても、10年後は20歳から21歳のヨハナに対して、俺達は53歳である。

 20年後には、俺達は死んでいるだろう。


「元から溜めていた力が、100年分有るとか、そういう可能性は無いの?」

「あるかもしれない。どれくらい充電できるか、分からないけど」


 100年分の力を溜めていたとすれば、変身期間は10年間。

 人間として10年過ごし、そこからライオン生活に戻るのは、つらい気がする。


「夜の間だけライオンに戻れば、使用時間を節約できないかな」

「夜に家族が尋ねてきたら、ライオンが寝ていてビックリするだろうな」

「レオン、意地悪を言ったら駄目だよ」


 俺がリオを論破していると、ヨハナが俺に注意した。

 俺には、リオに人間生活を諦めさせる目的があるのだが、それは説明できない。

 仕方がなく、プラス方向の提案に切り替える。


「気分転換で人間の街を歩くことは、出来るだろう。グンター、各年齢の衣服と、多少の金をもらいたい」

「構わないが、今夜まで待ってくれ。今は、辺境伯が忙しすぎる」


 グンターが窓の外に顔を向けたので、俺も釣られて外を眺めた。

 領都の空には、何羽もの伝書鳩が飛び交っている。

 王国に侵攻していた獣人帝国の軍団長と、大隊長2人を、同時に撃破したのだ。

 指揮官が居ないと機能しなくなる獣人の場合、壊滅に等しい影響がある。

 辺境伯夫妻は、各所への報告で筆記地獄の最中であろう。


「俺が人間に化けて、手紙を書いて精霊に届けてもらえば、グンターに用件を伝えられるかな。すまないが、ペンと、インクと、紙もくれ」

「それは俺にとっても都合が良いから構わないが、そもそもレオン、読み書きは出来るのか」

「要確認だな」


 グンターが日本語を使っているのなら、おそらく大丈夫だろう。

 俺達よりも先に転生して、日本語を普及させたり、人化の宝玉を残したりした先達には、心から感謝したい。


 ――神代と関係ないけど、辺境伯夫人のブローチ、国宝扱いになるかもなぁ。


 大活躍した上級精霊は、辺境伯夫人のブローチから生じたことになっている。

 神代のブローチが有る限り、獣人帝国は警戒して、容易に攻められない。

 だから王国は、ブローチに力が籠められていなくても、「力がありません」とは発表できない。

 物凄い宝石が嵌め込まれたブローチとして、国から大切に扱われるだろう。


「金狼を撃破した戦果なら、そこそこの金が欲しいと言っても、通りそうか?」

「通るだろうが、金を手に入れて、レオンは一体どうする気だ」

「豪邸でも買って、サバンナに置けば、リオが満足しないかと思って」


 俺の提案を聞いたリオは、ガックリと項垂れた。


「レオン、お前の提案は、気に入っていない様子に見えるが?」

「奇遇だな。俺も、そう思ったところだ」


 どうやら豪邸は、リオのお気に召さないらしい。

 提案を拒んだリオは、自らの要求を示した。


「狼の獣人を沢山倒して、宝玉を全部集めたい」

「いやいや、勘弁してくれ」


 金狼のような怪物と何度も戦うのは、御免蒙りたい。

 首を振った俺は、空間収納に服と宝玉を入れて、瞬時にライオンの姿に戻った。

 そしてペタンとしゃがんで、ヨハナにモフられる。


「レオン、あたしも」

『了解』


 リオは宝玉に蓄えられた力を、節約したかったのだろうか。

 俺はリオにも同じことをして、彼女もライオンの姿に戻した。

 ライオンの手で持ち運べないので、リオの宝玉も預かっている。


「人間の姿も良かったけど、ライオンの姿も良いね」

「ガォォッ」


 ヨハナがご満悦で撫でたのに対し、リオは不承不承に鳴き返した。

今話にて、第2巻が終了しました。


本作は、主人公がライオンですが、

カバーイラストや挿絵に人間を出すことも考えて、人化の宝玉を入れました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 人化の宝玉はやはり制限有りましたな。まぁ、獣人ではなく人間だから溶け込む事は出来るでしょうし、リオはたまに人里で買い物等(リフレッシュ)する為に使えばいいさw(豪邸がお気に召さなくて宝玉狩…
[良い点] 可愛い人のキャラで表紙を飾って読者を増やそうとする為に人化アイテム用意するとか作者天才すぎる 1巻はグンターとヨハナとライオンで2巻は人化した2人の子供とか表紙に釣られちゃう!(おい
[一言] ライオンから人になるっていうあり得ないことが可能になっている今、それに比べたら寿命を伸ばす方が簡単な気がする ライオン→人が不可逆ならそうではないかもしれませんが、時間制限つきかつ任意で元に…
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