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ライオン転生  作者: 赤野用介@転生陰陽師7巻12/15発売
第2巻 炎翼虎と金狼

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43話 弟妹誕生

 精霊と契約した俺達が群れに戻って、1週間が経った。

 俺達は生後7ヵ月になり、母違いの弟と妹も、生後1ヵ月になった頃だ。


 ――生後は、推定だけど。


 まだ合流は行われておらず、俺達は弟妹の姿を見ていない。

 最近リオは、ソワソワとしている。


『弟と妹、合流しないのかな』

『まだ少し早いんじゃないか』


 ライオンの新生児が群れに合流するのは、生後4週間から8週間後だ。

 その理由は、前世では主に2つが考えられていた。


『今合流しても、群れの移動に付いて来られないだろう』

『そっか。足が遅いから大変だよね』

『過酷すぎるからな。少し育ってからのほうが良い』


 1つ目は、群れの移動に新生児が付いていけないからだ。

 ライオンは、獲物を狩るために移動する。

 合流しても群れが移動すると、別々になってしまう。

 合流する意味がない上に、無駄に新生児の体力を奪う。


『それにギーアが俺と勝負するような感覚で遊ぶと、弟と妹が死んでしまう』

『それもあるかも』


 2つ目は、兄や姉が力加減を間違って、乳児を死なせることがあるからだ。

 事故は、大人達が狩りに行って保護者不在の間に起こることが多い。

 動物は、種の存続に不利な行動を取る集団が自然淘汰されており、合理的だ。

 早期の合流は、不合理なので有り得ないわけである。


 ――合流は、しばらくは無いな。


 いくつかの場合には、合流が早くなることもある。

 新生児の脅威となる兄弟が居なかったり、子供を生んだメスライオンが獲物を上手く狩れなかったりした時だ。

 俺達の群れには、半年早く生まれた俺達が居るので、合流はまだ先だろう。

 だが気になるので、契約した上級精霊のブレンダに、様子を見てもらっている。


『ブレンダ。俺達の弟妹は、どんな様子だ?』

『今日も元気一杯に、転がっているわよ』

『それは良かった。何しろ、将来の勧誘候補だからな』


 ハヤブサの姿をしたブレンダの使いは、弟3頭、妹5頭を確認している。

 俺やリオの時と同じように、2頭のメスライオンから、8頭が生まれたそうだ。

 父ライオンが同じで、母ライオンも近い血縁。加えて食生活や気候も同じなら、子供の数も同等になるのだろう。

 俺の独立時には、オスとメスを問わず、なるべく勧誘したい。

 そのため、元気に育ってほしいと思っている。


『リオ、妹5頭は元気だそうだ』

『そうなんだ。弟が3頭で、妹が5頭なのは、レオン的には良かったの?』

『そうだな。俺達の群れを参考にすると、このナワバリは、リオの母が居た頃は、メスライオン7頭で維持していただろう?』

『そうだね』


 俺達が所属する群れは、リオの母ライオンが死ぬ前までは7頭体制だった。

 7頭で確保していたナワバリは、なかなか豊かだ。

 ハイエナやナイルワニは存在するが、水が尽きない川があり、スイギュウなどの居なくならない草食動物も棲んでいる。

 メスライオン7頭が居れば、それなりのナワバリを確保して、維持できる。

 現在は6頭体制だが、アンポンタン3姉妹が居るので、9頭まで数を戻せる。


 9頭は、ナワバリの維持と狩りに必要な頭数を2頭も超える。

 リオの世代では、メスが飽和するので、追い出されるだろう。

 そのため俺は、遠慮なく勧誘できる次第だ。


『妹5頭を連れて行ける場合、リオとミーナを合せて、7頭で活動できる。俺達が育ったナワバリと同程度の土地を確保できるから、妹5頭は嬉しい』

『そっか。弟達は、連れて行くの?』

『俺のほかのオスがギーア1頭だと、そこそこ不安だ。俺達は精霊魔法で狩りが出来るから、獲物は狩れる。可能なら、3頭とも連れて行きたい』


 俺が不安を抱くのは、ギーアが典型的なオスライオンであるからだ。

 俺に戦いを挑み、従順ではないことが、将来の火種になりかねない。

 土と光魔法を使えて、火の上級精霊と契約した俺は、ギーアには負けない。

 だがギーアが喧嘩別れして出ていった時、群れにオスライオンが足りなくなる。


『どうして弟3頭が必要なの?』

『オスライオンは、遠吠えで他所のオスライオンを追い払ったり、ほかの肉食獣を追い散らしたり、メスの求めに応じたりと、群れでの役割がある』

『それで?』

『俺は、俺と父ライオンを同じくする妹達の相手は避ける。群れの維持には、リオの父ライオンの子供のオスも必要だ』

『他所のオスも入れるのは?』

『勧誘できるなら、入れても良いが』


 ライオンの場合、血縁関係のないオスが連合を組むのは、特異な話ではない。

 血縁関係のない放浪オス同士が、緩やかな連合を組むことは、よく知られる。

 その連合が、どこかの群れを支配すれば、血縁関係のないオスの連合が支配する群れの誕生だ。

 それは実際に起こっており、群れを持つ老いたオスライオンを追い出したり、オスライオンを失ったメスだけの群れに迎え入れられたりする。

 つまりオスライオンは、血縁関係がなくても、普通に協力関係を築ける。


 ――言語翻訳の祝福を持つ俺は、他所の放浪オスを勧誘する手が使える。


 だが、実際に勧誘が成功するのかは、試してみないと分からない。

 相手にハイエナレベルの知性しかないと、かなり大変なことになる。


『今のところ一番堅実なのは、ギーア以外も連れて行くことだ。そうすればギーアが出ていっても、群れを維持できる』


 弟達を連れて行った後に上手くいかなくても、フォローの手段はある。

 参考例は、オスライオン6頭で8つの群れを支配した、前世のマポゴ連合だ。

 複数の群れを乗っ取れば、色々と解決する。

 俺とリオが居る群れで上手く行かない弟を他所に派遣したり、他所から娘の相手をするオスを迎え入れたりすれば良い。


『頭数が欲しいから、全員勧誘したい。ダメなら、可能な範囲で構わない』

『だったら、弟妹を守ってあげないと。危ないスイギュウは、近くに居ないの?』


 俺達の時、リオの母と4頭が犠牲になっている。

 俺達を襲ったのは、群れに属していない大きなオスのスイギュウだった。

 スイギュウは、自分達を襲うライオンの子供を攻撃することがある。

 またスイギュウのオスは、群れから別れて、単独で行動することもある。

 俺達のナワバリでは、少なからぬスイギュウが生息している。


『ブレンダが、中級精霊の力を振るえるハヤブサ2羽を、守りに付けている』

『中級精霊って、どれくらい強いの?』

『前に見た中級精霊は、大人のオスライオン1頭分くらいの力は振っていた』


 ブレンダによれば、精霊が振るえる力は、級が上がるごとに8倍だそうだ。

 上級精霊のブレンダは、辺境伯領で見た火の中級精霊の8倍の力を振るえて、やる気も高い。

 やる気が高いのは、4回分の報酬で契約したからだ。


 ――中級精霊との契約4回分の魔力は、上級精霊との契約の半分だけど。


 俺が中級精霊の3回分を先払いして、ブレンダは上級精霊に昇格した。

 つまりブレンダは、上級に上がるまでに、契約者に3回の協力が必要だった。

 それが1回で済んだので、ブレンダにとっては、報酬が3倍になったわけだ。

 正確には中級の契約4回分だが、上級への昇級後の中級1回分は、8分の1の価値しか無い。

 おまけ程度だが、おまけが付けば普通は嬉しい。

 ブレンダのハヤブサは、中級精霊の力と、3倍以上のやる気を併せ持っている。

 しかも中級精霊の8倍の力を持つブレンダは、ハヤブサを8羽同時に出せる。


『2羽で、大丈夫?』


 リオの不安は、見た目がハヤブサ2羽だからだろう。

 だが俺は辺境伯領で、ハヤブサが獣人達を倒す活躍を見ている。


『余裕だろう。やる気の無い1羽ですら、オスライオン1頭分の力があって、時速100キロメートルで水平飛行するぞ』


 高速飛行ライオンが存在すれば、人類は覇権を握れなかったかもしれない。

 マサイ族なら、大勢で槍を投げて、墜落させて狩るかもしれないが。


『でも、スイギュウの群れが来たら?』

『ハヤブサ1羽は、ツバメ8羽に分裂できる。強さは8分の1だが、ブチハイエナ1頭分ほどだ。飛行速度は、変わらず時速100キロメートル』


 加えて精霊は、本体が精霊界に居るので、こちらは倒されても復活する。

 つまり敵への特攻が出来るわけだ。

 俺が解説したところ、リオはようやく安堵の表情を浮かべた。

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― 新着の感想 ―
マサイ族に対する信頼感(笑)
[良い点] 想像上のマサイ族がいつまでも強い(笑
[良い点] >加えて精霊は、本体が精霊界に居るので、こちらは倒されても復活する。 ゾンビアタック戦法が使える訳だ。 [一言] >ブレンダによれば、精霊が振るえる力は、級が上がるごとに8倍だそうだ。 と…
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